おまけの俺、この国の闇を知る
俺は続ける。
「敵国って言われてるファルドラだが……」
「実際に攻めてるのは、このエルディア王国の方だ」
一度、言葉を区切る。
「王女の言ってることは矛盾だらけだ」
「この国……完全におかしい」
『叔父さん……』
「やばいと思ったら、すぐに連れて逃げる」
「そのつもりでいてくれ」
少しの沈黙。
『逃げるって……獣人の国だっけ?』
「ああ、ファルドラだ」
「一応、つても作った」
「できればお前らが戦争に参加する前に連れて行きたいが……準備がいる」
「行ける目処が立ったら、すぐ連絡する」
『……わかった』
「無理はするなよ」
『りょーかい』
「今日はもう休め」
『叔父さん、おやすみなさい』
『修一さん、おやすみなさい』
「おう。おやすみ」
魔道具の光が消える。
静寂が戻る。
(……時間がないな)
俺は立ち上がり、窓の外の城を見下ろした。
(王族の裏……全部暴いてやる)
◆
翌朝。
早めに食事を済ませ、部屋を出る。
《遮断の外套》を発動。
(さて……情報屋としての本番だ)
廊下は静まり返っている。
衛兵の足音だけが響く。
だが――
誰も俺に気づかない。
(チートすぎるだろ、このスキル)
(ダルガス、マジで助かってる)
苦笑しながら、王女の部屋へ向かう。
衛兵が二人。
だが関係ない。
そのまま横を抜け、扉に耳を寄せる。
「勇者様たちの訓練は順調ですか?」
王女の声。
「はっ。勇者ソウタ様は素晴らしい力を」
「そう……」
一拍。
「では、あの“巻き込まれた男”は?」
(……俺だな)
「いつでも処分可能です」
「勇者様が旅立つ時に、排除しなさい」
(……確定か)
胸の奥が、冷える。
(この国、終わってるな)
勇者は利用される。
邪魔者は処分。
亜人は奴隷。
戦争は侵略。
王女の声が続く。
「勇者様たちには“邪神討伐”という名目で」
「獣人国を攻めてもらいます」
「勇者の力があれば、抵抗など容易いでしょう」
(……美琴たちを、戦争の道具にする気か)
怒りが、静かに燃える。
(絶対に逃がす)
(全員だ)
俺はその場を離れた。
◆
次に向かったのは訓練場。
《虚無視界》を発動。
壁の向こうが、ぼんやりと透ける。
(マジで見えるのかよ……)
中では――
颯太が剣を振っていた。
「ははっ! 俺、最強じゃね?」
(……ダメだこいつ)
美琴は黙々と剣を振る。
ひよりは回復魔法。
悠真は魔法陣を展開。
(ちゃんとやってるな……)
だが――
教官の声が響く。
「もっと強く!」
「邪神の信徒、獣人どもを叩き潰すために!」
(……完全に洗脳だな)
胸が痛む。
(こんな連中に任せてたまるか)
◆
城の裏手へ回る。
そこには――
捕らえられた獣人たち。
馬車に押し込められている。
「このガキ、売れるか?」
「珍しい種族だ、高く売れるぞ」
(……最悪だな)
リュミナの顔が浮かぶ。
(あいつも、こうなるところだったのか)
拳を握る。
(絶対に許さない)
◆
城を出る。
街のざわめき。
「また獣人の村が焼かれたらしい」
「勇者が来てから戦争が激しくなってる」
「邪神討伐って言ってるけど……本当は侵略じゃないの?」
(……気づいてるやつもいるのか)
王国は――
“正義”の仮面をかぶった侵略者だ。
勇者たちは、その武器。
(ふざけるなよ)
俺は拳を握りしめる。
(絶対に守る)
(全員、連れて逃げる)
(準備を急がないと――)
「……もう、迷う理由はない」




