おまけの俺、巫女との約束を交わす
勇者召喚騒ぎの元凶は──
ひとまず片がついた。
だが。
(……さすがに「はい終わり」とはいかないよな)
やることは、まだ山ほどある。
俺は軽く息を吐いてから口を開いた。
「俺たちも一度アジトに戻るか。
少し休んでから城に向かおう」
悠真が頷く。
「そうですね。その方がいいと思います」
「悠真くんは先に城へ行ってもいいぞ。
その方が落ち着くだろ?」
そう言うと──
「シュウイチ、意地悪言っちゃダメ」
すぐにリュミナが口を挟んできた。
「でもユウマ、気になるなら……いってらっしゃーい」
「リュミナちゃんまで……」
悠真が困ったように笑う。
美琴が肩をすくめた。
「でも気になるんでしょ?
こっちは私たちでやるから、行ってきなよ」
ひよりもくすっと笑う。
「イリアさん、落ち込んでるでしょうしね。がんばって」
悠真は少しだけ顔を赤くして、
「ありがとう。僕、行ってくる!」
と駆け出していった。
その背中を見送りながら、思わず呟く。
「……元気だな」
すると、美琴がじとっとした目でこちらを見る。
「お・じ・さ・ん。
戦力一人減らしたんだから、その分働いてよ?」
「ぐっ……」
ひよりも苦笑する。
「神谷くんを放置するわけにもいきませんしね……」
その時だった。
「──あー、その子ならいいわよ」
聞き慣れた声が降ってきた。
「ルミナス様!」
リュミナがぱっと振り向く。
「いいって……放っておいてもいいってことですか?」
「うん」
ルミナス様はあっさり頷いた。
「その子はこっちで預かるわ。
どうせ元の世界に返すし、記憶も消す予定だから」
そう言いながら、リュミナの頭を優しく撫でる。
そして──
耳元で、何かをそっと囁いた。
次の瞬間。
リュミナの表情が、ぱっと明るくなる。
そして、まっすぐ俺を見る。
(……ああ、“あの話”か)
軽く手招きすると、
リュミナは勢いよく胸に飛び込んできた。
「シュウイチ、ありがとう!」
「無理して大きくならなくていいからな。
俺はちゃんと待つ」
「うん!」
力強い返事。
ルミナス様は、その様子を優しく見守っていた。
……その手で神谷の頭をわし掴みにしていなければ、もっと絵になったが。
「じゃあ、これは回収しておくわね」
そう言って、
神谷を片手でぶら下げたまま、
光の粒となって消えていった。
(……神様の扱いって、あれでいいのか?)
思わずため息が出る。
「……とりあえず、アジトに戻るか」
「はーい、撤収!」
美琴が声を上げると、
皆がぞろぞろと歩き出した。
でも──
どこか、みんなの表情は明るい。
「これで、シュウイチと一緒に街に行っても大丈夫だね」
リュミナが嬉しそうに見上げてくる。
「ああ。この前の菓子、今度は一緒に買いに行こう」
「うん!」
すると、美琴が口を尖らせた。
「ちょっと、おじさん。
リュミナちゃんだけずるい」
ひよりも笑いながら続く。
「私も一緒に行きたいです」
「……じゃあ、みんなで行くか」
「やったー!」
リュミナが嬉しそうに手を上げる。
「リュミナも、お姉ちゃんたちと一緒がいい!」
「とりあえず今日は休憩だな。もう夜だし」
そう言って歩きながら──
ふと思い出した。
「あ、そうだ。美琴、ひよりちゃん」
二人が振り向く。
「帰る方法、わかったぞ」
「「えっ?」」
同時に目を見開く。
「ルミナス様から教えてもらった。
元の世界に戻れる」
一瞬の沈黙。
そして──
「お・じ・さ・ん……」
美琴が低い声で言った。
「そんな大事なこと、ついでで言わないでくれる?」
「す、すまん」
ひよりも心配そうに言う。
「修一さん……帰るなら、リュミナちゃんは……?」
「問題ない」
軽く答える。
「影移動の応用で、地球にも来られるようになった。
行き来ができる」
「……え?」
「だから──」
隣のリュミナの頭を軽く撫でる。
「これからも一緒だ」
リュミナが、少し照れながら言った。
「シュウイチ、私が大人になるまで待ってくれるって言ってくれたの」
そして──
くねくねと照れ始める。
(……かわいいな)
とりあえず、もう一度撫でておく。
「そうなんだ〜」
美琴がニヤニヤしながら言う。
「叔父さん、責任取るんだね。がんばれ〜」
「細かい話はアジトに戻ってからだな」
「そうだね」
笑い声が重なる。
戦いは終わり、
日常が、少しずつ戻ってきていた。




