おまけの俺、すべてに決着をつける
右腕を刈ったことで、美琴の動きは明らかに安定した。
戦いの天秤は──
完全に、こちらへ傾いている。
さらに、ダルガスの働きで
“取り込まれた人間を救い出せる”
それが分かったのも大きい。
(……あとは左だ)
視線を勇者へ向ける。
(あれを落とせば、ほぼ終わる)
だが──
勇者も黙ってはいない。
動きが荒れ、暴れ、
左手から水の刃を乱射してくる。
「っ……!」
地面が抉れ、
水しぶきが頬をかすめる。
(近づかせる気はない、か)
その時──
「けんに、かみのかご〜!」
リュミナの声。
次の瞬間、
美琴の剣が眩い光を帯びた。
「ありがと……これなら!」
美琴が踏み込む。
光を纏った一撃が、
勇者の盾へ叩き込まれた。
バキィッ!!
鈍い音とともに、盾が砕ける。
勇者の意識が、美琴へ集中する。
(今だ)
影へ沈む。
次の瞬間には──
勇者の左肩。
「──《神威の滅剣》!」
一閃。
ズバァッ!!
左側の三本の腕が、まとめて地面へと落ちた。
「ガァァァァッ!!」
勇者が咆哮を上げる。
そのまま大きく跳び、
聖域の外へ逃れようとする。
(逃がすか──!)
だが、その瞬間。
「いいや。そこまでだ」
頭上から、静かな声。
見上げる。
そこにいたのは──
ルミナス様だった。
神域の上に手を触れ、
軽く押さえつける。
次の瞬間、
神域が虹色に輝いた。
空間そのものが、縛る。
勇者の動きが──止まる。
「……っ!? ガ……ッ!」
見えない糸に絡め取られたように、
勇者がもがく。
ルミナス様が、淡々と告げる。
「やっと捕まえたよ──カイト」
その名に、
勇者の身体がビクリと震えた。
(……カイト)
(これが、“勇者神”の正体……!)
空気が変わる。
完全に、戦いは終局へ向かっていた。
「ルミナス様……ここまで干渉できるんですか?」
思わず問いかける。
ルミナス様は肩をすくめた。
「ダルガスが神力を回収してくれたからね。
この世界にも干渉できるようになっただけさ」
軽く言うが──
規格外だ。
そして、こちらを見て言った。
「修一。これ、解体して」
「……勇者を、ですか?」
「うん。中身取り出したいから」
軽い。
軽すぎる。
「リュミナ、固めて」
「は〜い! かたまれー!」
光が走る。
異形の勇者が、石像のように硬直した。
完全停止。
ルミナス様が満足げに頷く。
「いいね。上達してる」
そして俺を見る。
「さあ、やって」
「……了解です」
(……もう、やるしかないな)
滅剣を構える。
その瞬間──
「ダルガス、腕の処理終わったらこっちね」
「いや、そっちはルミナス様でいいでしょ」
「……使えないなぁ」
(軽いな、この人たち……)
思わず遠い目になる。
「修一、細かく切って。取り出しやすいように」
「はいはい……」
(考えるのはあとだ)
刃を振るう。
神力で構成された身体を、
細かく切り分けていく。
その中から──
人が現れる。
次々と。
「お、これは颯太か」
ルミナス様が一人を持ち上げる。
光を纏わせ、
簡易的な衣服を生成する。
「とりあえずこれでいいでしょ」
そして──
勇者の胸部から、
黒い塊を引き抜いた。
「これが“核”」
もう一つ。
「こっちがカイト本体」
それを掴み、
軽く振り返る。
「これで任務完了だね」
そして、俺たちを見渡した。
「修一、それにみんな」
一瞬だけ、声音が柔らぐ。
「よくやった」
その一言に、
すべてが報われた気がした。
「これは主神様に届けてくる。
褒美は期待してていいよ」
そう言い残し、
虹色の光をまとって空へと消えた。
──静寂。
戦いは、終わった。
地面には残骸。
救い出された人々。
そして、静かな森。
(……終わったのか)
滅剣を消し、
深く息を吐く。
その空気を破ったのは──
リュミナだった。
「シュウイチ……これ、終わったってことでいいんだよね?」
その言葉に、
胸の奥が一気に軽くなる。
「ああ」
自然と、笑みがこぼれる。
「俺たちの勝ちだ」
拳を握る。
「……勝ったんだ」
その言葉をきっかけに、
仲間たちが顔を見合わせ──
次の瞬間。
「「「おおおおおおお!!!」」」
歓声が、森に響き渡った。




