おまけの俺、異形の勇者の正体を暴く
Side:悠真
修一さんが影から飛び出し──
《神威の滅剣》で、右腕三本を一瞬で切り落とした。
(……すごい)
息を呑む。
(でも……滅剣は“神の力”を断つ剣のはず。
物理そのものは斬れない)
なのに、腕は確かに落ちている。
(……つまり)
視線を勇者へ向ける。
(この身体そのものが“神力で構成されている”ってことか)
直後──
勇者の右肩が蠢いた。
肉が歪み、うねり、
新しい腕が一本だけ生えてくる。
だが──
女性の顔のついた手も、
盾を持った腕も、戻らない。
(……消えた)
一気に理解が進む。
(右側の“火属性”と“盾役”は完全に削れた……!)
戦況が、変わる。
「美琴さん!」
思わず声を張る。
「火属性は消えました!
左の水だけ注意してください!」
「了解!」
美琴さんの動きが軽くなる。
明らかに、余裕が戻っていた。
さらに──
右胸にあった“近衛騎士の顔”も消えている。
(盾も消えた……!)
(……右側は通る!)
迷わない。
僕は勇者の右側へ回り込む。
「《ストーンランス》!」
四本の石槍を放つ。
だが──
三本は、新しく生えた腕の聖剣で叩き落とされる。
(まだ防ぐか……!)
だが、一本。
それが──
ドッ!!
勇者の胴に突き刺さった。
(……通った!)
今まで完全に防がれていたのに。
確実に、削れている。
「……いける!」
胸の奥が熱くなる。
(修一さんが道を開いた)
なら──
(ここからは、僕たちの仕事だ)
魔力をさらに練り上げる。
(僕だって──この戦いを終わらせる力になれる!)
「……やるぞ」
Side:ひより
……すごい。
本当に、すごい。
修一さんが動いただけで、
あれだけ絶望的だった戦況が、
一気にひっくり返った。
(……でも)
それだけじゃない。
勇者の動きが鈍り、
美琴ちゃんの負担も減っている。
私にも、ようやく周りを見る余裕ができてきた。
その時──
「ひよりおねえちゃん!」
リュミナちゃんの声。
振り向くと、
ダルガスさんと一緒にこちらへ来ている。
ダルガスさんが、光の膜に閉じ込められた腕を軽くつついた。
「これ、俺が処理する。
解除してくれ」
オフィーリアさんが、落ち着いた声で応じる。
「ええ。今、解きますわ」
魔術が解かれる。
ダルガスさんが腕を持ち上げる。
「……さて」
静かに呟く。
「神力、抜くぞ」
腕が淡く光る。
その光が、吸い上げられていく。
じわじわと。
慎重に。
やがて──
強く発光した瞬間。
光が消えた。
そこにあったのは──
「……え?」
言葉を失う。
そこには、
一人の女性が横たわっていた。
人間。
完全に、人間の姿。
(……うそ……)
ダルガスさんが小さくため息をつく。
「……やっぱりか」
手をかざす。
光が女性を包み、
すぐに柔らかな衣服へと変わる。
「とりあえず、これでいいだろ」
リュミナちゃんが駆け寄る。
「腕の中に……人がいた……」
その声が、震えていた。
「……大丈夫かな」
私も膝をついて、そっと様子を見る。
呼吸はある。
脈もある。
「……大丈夫。生きてる」
ほっと息を吐く。
「気を失ってるだけみたい」
オフィーリアさんが静かに言う。
「その方々は保護なさい。
戦場の中心に置いておくのは危険ですわ」
「うん!」
リュミナちゃんが両手を広げる。
「おっきかべ!」
透明な防壁が展開される。
私もすぐに重ねる。
「《ホーリーシールド》!」
その横で──
ダルガスさんが、もう一本の腕を持ち上げた。
「こっちは……男か」
同じように神力を吸い上げる。
そして──
光が消えたあと、
そこに現れたのは、
一人の男性だった。
(……やっぱり……)
胸がざわつく。
(これ……全部……人を材料に……)
ダルガスさんが軽く布をかける。
「……最低だな」
その一言が、すべてだった。
私は、ぎゅっと拳を握る。
(こんなの……絶対に許せない)
視線を戦場へ戻す。
(この戦い、絶対に終わらせる)




