おまけの俺、黒衣の神官を撃破する
Side:悠真
異形の勇者が、ゆっくりと腕を持ち上げる。
上の二本の腕に──
巨大な聖剣が顕現した。
(……大きい)
神谷が使っていたものより、明らかに一回り以上。
さらに──
下の二本の腕には、近衛が使っていた盾が現れる。
(……完全に“合成体”だ)
勇者というより──兵器。
(これが……勇者計画の最終形態……?)
だが、見ている暇はない。
「《ホーリープロテクション》──そして《祝福》!」
ひよりさんの声が響く。
光が、美琴さんを包み込む。
同時に──
僕の魔法盾が、美琴さんへと転写される。
(防御強化……完了)
「《ウィンドムーブ》!」
全体の機動力を底上げする。
美琴さんはすでに盾を構え、
《ホーリーシールド》を発動待機で維持していた。
(準備は整った……来る!)
次の瞬間。
巨大な聖剣が、白光を纏って振り下ろされる。
「っ……!」
美琴さんが受ける。
衝突の瞬間──
《ホーリーシールド》が展開。
ドォンッ!!
衝撃が空気を震わせる。
「ぐぅ……っ!」
防いでいる。
だが、完全ではない。
(……貫通してる)
「《ヒール》!」
ひよりさんの回復が即座に飛ぶ。
(今のうちに──!)
僕は横へ回り込む。
「《ファイヤーランス》!」
四本の火槍を放つ。
だが──
左手の掌の“女性の顔”が口を開いた。
「《ウォーターシールド》」
水の盾が展開され、すべて弾かれる。
(……魔術を使う!?)
ひよりさんも息を呑む。
「手の女性が……魔術師?」
「……いや、違う」
僕は即座に分析する。
「属性ごとに役割がある!」
すぐに切り替える。
「《ストーンランス》──四連!」
今度は右手の女性が反応した。
「《ファイヤーシールド》」
だが──
一発だけ、貫通。
勇者の胴へ直撃する。
(……通る!)
「右が火属性、左が水属性!
土で抜けます!」
その間も──
美琴さんは前線を維持していた。
巨大な聖剣を受け、
いなし、
かわし続ける。
だが──
攻撃は通らない。
下腕の盾が、すべてを防いでいる。
(……押し切れない)
完全な膠着。
(このままだと……ジリ貧だ)
その時だった。
「……三対一で拮抗、ですか」
黒衣の神官ヴェルナスが、前に出る。
嫌な予感が走る。
「では──私も参りましょう」
(っ……速い!)
一瞬で距離を詰める。
標的は──
「ひよりさん!!」
「えっ──!」
間に合わない。
「聖結界──!」
詠唱が間に合う前に、
ヴェルナスの手が届く。
「遅いです」
その瞬間──
「かたいかべー!」
ひよりさんの影から、リュミナが飛び出した。
透明な壁が展開される。
ガンッ!!
ヴェルナスの攻撃を、完全に弾いた。
(助かった……!)
さらに──
「《神威の滅剣》」
影から、修一さん。
一閃。
ヴェルナスの右腕が、宙を舞った。
「ぐっ……!」
「せいいき!」
リュミナの声。
神官の周囲に“聖域結界”が展開される。
閉じ込めた。
ヴェルナスが、初めて動揺する。
「な……なんだと……!?」
指を震わせ、リュミナを指す。
「お前か……すべての元凶は……!」
修一さんは、冷静だった。
「ダルガス、出番だ」
「ようやくか」
胸元から、黒い影が現れる。
ダルガス。
ヴェルナスの顔色が変わる。
「な……お前は……!」
ダルガスは笑う。
「力、戻ったぞ。……じゃあ、いただくな」
切り落とされた腕に触れる。
──溶ける。
吸われる。
「や、やめろ……!」
叫びは、続かない。
頭から、順に崩れていく。
ドロドロと。
すべてが、ダルガスへと吸収されていく。
やがて──
完全に消えた。
「……ふぅ」
ダルガスが肩を回す。
「こっちは終わりだ」
その視線が、異形の勇者へ向く。
「シュウイチ」
短く言う。
「手を落とせ。そこから崩れる」
「了解」
さらに続ける。
「神力、分けるぞ」
光が、修一さんへ流れ込む。
空気が変わる。
(……強い)
一段、上がった。
修一さんが前へ出る。
「さあ──やるぞ」
美琴さんが構え直す。
ひよりさんが魔力を練る。
リュミナちゃんが頷く。
僕も、魔力を最大まで引き上げる。
「了解!」
声が重なる。
(ここからが──本当の反撃だ!)




