おまけの俺、王女を救い出す
黒衣の神官──ヴェルナス。
そして、アリア。
二人の姿が、視界に入る。
近衛たちはすでに儀式に取り込まれ、
アリアの周囲には、護る者がいない。
(……今しかない)
ヴェルナスの意識は、完全に“勇者の変化”へ向いている。
こちらには──まだ気づいていない。
「リュミナ」
短く呼ぶ。
「アリアを救う。今が好機だ」
リュミナは一瞬だけ息を呑み──
それでも、強く頷いた。
「……うん。やろう」
「俺が“切る”。
リュミナは受け止めろ」
「任せて」
その一言で、迷いは消えた。
「──行くぞ」
俺たちは、同時に影へ沈む。
音もなく。
気配もなく。
次の瞬間──
アリアの背後。
足元に落ちる影から、滑り出る。
(……捉えた)
《虚無視界》を展開。
世界が変わる。
アリアの頭上から──
王城の奥へと伸びる“光の糸”。
あれが、呪いの核。
(あれを断てば──戻る)
ためらいは、ない。
「──《神威の滅剣》」
刃が、静かに顕現する。
空気が歪む。
そのまま、一閃。
ズンッ──
重い。
まるで、何か“巨大なもの”を断ち切るような手応え。
(……っ、持っていかれる……!)
魔力ではない。
もっと根源的な“力”を削られる感覚。
だが──
「切るッ!」
気合で押し切る。
刃が、光の糸を断ち切った。
──パキン。
世界に、ひびが入るような音。
その瞬間。
「──っ!」
アリアの身体が揺れた。
力を失ったように、その場に崩れ落ちる。
「王女様!」
リュミナが即座に飛び込む。
その身体を、しっかりと受け止めた。
「……捕まえた!」
俺はすぐに滅剣を解除。
一瞬でも遅れれば、持っていかれる。
(……間に合った)
だが──まだ終わりじゃない。
「戻るぞ!」
リュミナとアリアを抱え込むようにして、再び影へ沈む。
滑り込むように、闇へ。
(……よし、離脱は成功だ)
だが、安心するには早い。
影の中から、外を覗く。
そこでは──
光が、なお膨れ上がっていた。
(……あれは)
もはや“強化”ではない。
何かが、生まれようとしている。
ドォンッ──!!
地面が揺れる。
空気が震える。
光の中心から──
“それ”が、ゆっくりと姿を現し始めた。
(……次は、あれを相手にするのか)
小さく息を吐く。
「……やるしかないな」




