おまけの俺、通信魔道具を手に入れる
「今回の情報は以上だ」
一息ついてから、思い出す。
「ああ、そうだ。勇者の訓練の件だけど――勇者本人はサボり気味らしい」
「これ、いるか?」
ライルが軽く笑う。
「つまり、実戦投入はまだ先ってことだな」
「外に出る時に観察する余裕もある……悪くない情報だ」
「金になるか?」
「なるな」
即答だった。
「報酬は……一万エルでどうだ?」
「一万エル?」
「庶民なら一か月は暮らせる額だ」
(……結構でかいな)
「まあ、ありがたくもらっておく」
ライルがもう一つ、小さな道具を差し出してくる。
「これも渡しておく」
「これは?」
「遠距離で会話できる魔道具だ」
「ファルドラじゃ一般的だが、この国じゃ珍しい」
「一つは俺たちと繋がる用」
「もう一つは自由に使え」
「姪に渡しておけば、離れても連絡が取れる」
(……便利すぎるだろ)
「助かる。城に戻ったら試してみる」
「おう」
ライルがニヤリと笑う。
「リュミナちゃん、あとで渡してやるから、シュウイチ“おじさん”と話してみな」
リュミナがすぐに反応する。
「ありがとう。でもシュウイチはおじさんじゃないよ」
少し頬を膨らませて、ライルをにらむ。
(……そこ気にするのか)
思わず笑ってしまう。
「じゃあ、俺は戻る」
そう言った瞬間――
リュミナの表情が、少しだけ曇った。
俺は魔道具を軽く掲げる。
「あとでこれ、試すぞ」
「……うん♪」
少しだけ元気を取り戻したように頷く。
(これ、毎日話さないと拗ねそうだな……)
「リュミナのこと、頼むな」
ライルに声をかける。
「任せろ」
短く、力強い返事。
軽く拳を合わせ、アジトを後にした。
◆
自室に戻る。
さっそく魔道具を起動する。
「シュウイチだ。聞こえるか?」
少しの間のあと――
弾んだ声が返ってきた。
「うん! ちゃんと聞こえてるよ!」
(すげえな、これ……)
「これなら、アジトに行けない日も話せるな」
「うん……」
少しだけ声が柔らかくなる。
「シュウイチの声が聞こえると、安心する」
(……やばいなこれ)
「頼られるのは悪くないな」
軽く笑う。
「でも、行ける時はちゃんと顔出すからな」
「むー」
少し拗ねた声。
「子供扱いしないでよ」
「してないしてない」
「……でも可愛いのは事実だろ?」
「もー……!」
向こうで膨れているのが目に浮かぶ。
「悪い悪い」
少しだけ優しく言う。
「でも本当に、そう思ってる」
「……もう、知らない」
(完全に照れてるな)
「今度会ったら、ちゃんと頭撫でさせろよ」
「……ほんと?」
「ああ」
「約束だからね?」
「じゃあ、指切りするか」
「うん、指切り!」
しばらく、他愛のない会話が続く。
やがて――
「今日はこの辺で切るな」
「美琴にもこれ渡してくる」
「えー……もう終わり?」
少し寂しそうな声。
「また明日話せるだろ?」
「……うん」
「約束する」
「……わかった」
少し元気を取り戻す。
「おやすみ、リュミナ」
「おやすみ、シュウイチ」
「また明日、絶対だよ」
「ああ、絶対だ」
魔道具を切る。
静かな部屋。
(……やっぱり)
直接会って、頭を撫でてやりたい。
そんなことを思いながら、俺はゆっくりと息を吐いた。




