空に浮かぶ学園
「それじゃあ、ハクレちゃん。
行こっか~!」
「は、はい!」
あの後。
制服、教科書、カバン、その他学園生活に必要なものが、次々と運び込まれた。
しかも全部高そう。
一体いつ準備したの!?
「いいですか、ハクレ様?」
アンさんがじっとこちらを見る。
「く・れ・ぐ・れ・も!
妙な真似はしないでくださいね?」
「大丈夫大丈夫~!
なんたって僕がついてるからね~」
ディウムさんが笑う。
アンさんは少しだけディウムさんを睨んで――諦めたようにため息をついた。
いいなぁ、この二人。なんだかんだ仲が良くて……
「それでは、お気をつけて」
「あ、はい!
いってきます……?」
で、いいのかな?
正直、まだ実感がない。
ディウムさんの方を見ると、
ものすごい笑顔でうなずいていた。
ボクはアンさんの方へ向き直った。
「いってきます!」
……ん?
ボクは玄関先にあるものを見た。
豪華すぎる馬車。
これ絶対目立つやつだよね!?
「ほらほら~、ハクレちゃん」
ディウムさんが馬車の中から手を振る。
いつの間に!?
ついさっきまで隣にいたのに。
「ふかふかだよ~。
あ、あと僕のことは”おじいちゃん”って呼んでね♪」
「えぇっ!?」
急すぎる!
「早くしないと遅れちゃうよ~」
ボクは馬車へ乗り込んだ。
……でも。
初めての学校。
ちょっとだけ楽しみかも。
◇
馬車は、優雅に森の中を進んでいった。
……が。
やっぱり魔界、怖い!
最初に「帰りたくない」なんて言ったボク、
何考えてたの!?
いや、確かに帰りたくはなかったけど!
窓の外を見れば、
トラックみたいな大きな鳥が飛んでるし、
植物は喋ってるし、
なんなら動いてる。
怖い怖い怖い!
でも、不思議と悪魔の姿はあまり見かけない。
「ハクレちゃん、見えてきたよ~」
ディウムさんの声に顔を上げる。
そして。
「――え」
森を抜けた先。
そこには、”空に浮かぶ島”があった。
「な、な、何これぇぇぇ⁉」
島のほとんどを埋め尽くす巨大な建物。
お城みたいな校舎。
その周囲を飛び回る影。
島の下には、雲。
「浮いてる!
島が浮いてる!!」
「こういうのはね~、魔界じゃ普通なんだよ~」
「普通!?」
「ちなみに、ハクレちゃんには羽がないから、気をつけてね~」
「ひっ!」
さらっと怖いこと言わないで!?
ってことは、
あの飛んでるの全部悪魔!?
感動が一瞬で吹き飛んだ。
「あれが、今日からハクレちゃんが通う学園――」
ディウムさんが楽しそうに笑う。
「デモンズアカデミアだよ~」
馬車が校門前で止まる。
扉が開いた瞬間。
ざわっ――。
周囲の視線が、一気に集まった。
「ねぇ、あれ、理事長じゃない?」
「ほんとだ。隣の子、誰?」
「え、理事長に子供っていたっけ?」
ひぃぃぃ……!
視線が痛い!
「それじゃあ、記念写真撮ろ~!」
「あ、はい……」
……ディウムさん。
もしかして、
こういう注目、慣れてる?
というか。
なんだかんだで、
ディウムさんが一番楽しんでない?




