孫が欲しかっただけらしい
「おいし~!」
テーブルいっぱいに並んだ料理を、ボクは夢中で頬張っていた。
見たこともない料理ばっかりなのに、全部めちゃくちゃ美味しい。
というか、このスープ、なんでちょっと光ってるの!?
ボクはあの後、そのまま悪魔さんの家へ連れて来られた。
まぁ、原因は途中で鳴ったボクのお腹なんだけど。
そして連れて来られた先は――想像以上だった。
お城!?
ってくらい大きな屋敷。
しかも今、豪華すぎる晩ご飯をご馳走になっている。
……やっぱり食欲には勝てないね!
「いや~、君は本当に美味しそうに食べるねぇ~。
おかわりいる?
普通、人間は魔界の料理を食べると魔力酔いをおこすんだけどねぇ~」
「え……」
そうだった。
ここ、魔界だった。
そしてボク、人間だった。
つまり――食料側。
ご飯に夢中ですっかり忘れてた……。
「あ、あの!
ご飯ありがとうございました!
こんなに美味しいもの、初めて食べました!」
「いいのいいの~。
困ったことがあったら何でも言ってねぇ~」
――ダンッ!
突然、大きな音が響いた。
びくっと肩を震わせる。
見ると、猫耳のメイドさんがテーブルに手をつき、悪魔さん――ディウムさんを睨んでいた。
「ディウム様。
先ほどは食事を優先させましたが、そろそろ説明してください」
めちゃくちゃ怒ってる。
「なぜ仕事帰りに迷い子を連れて帰ってくるのですか。
普通なら人間界へ帰しますよね?」
「え~、いいじゃな~い」
ディウムさんはのんびり笑う。
「この子、僕の家族になりたいって言ってたし~」
「言ってません!」
思わず叫んでしまった。
「帰りたくないとは言いましたけど!
家族になりたいとは一言も!」
「似たようなものだよ~」
違うと思う。
「そういう問題ではありません!
そもそも、どうやって人間を匿うおつもりですか!?
正体がバレれば大問題ですよ!
普通なら絶対に許されないんです!」
「そこはアンがどうにかしてくれるでしょ~」
丸投げ!?
「はぁぁぁ……」
アンさんが深いため息をつく。
……なんか、このやり取り慣れてるなこの人。 いや悪魔か。
アンさんは気を取り直したように、こちらへ向き直った。
「初めまして。
私はアンと申します。
貴方のお名前は?」
「あ、えっと……ハクレです」
「では、ハクレ様」
様付け!?
「ここは魔界です。
そして貴方は人間。
もし正体が知られれば、命の保証はありません」
真剣な声だった。
さっきまでの空気が、一気に冷える。
「……それでも、ここで生きていきますか?」
うっ。
その言葉は、思ったより重かった。
しかもアンさん、すごい”帰ったほうがいいですよ”オーラ出してる。
「ちょっとアン~。
ハクレちゃんが怖がってるじゃない~」
するとディウムさんが、楽しそうに口を挟む。
「そ・れ・に!
ようやく僕にも”孫”ができるんだよ!?」
「……はい?」
「これでやっと孫自慢ができる~!」
その場が静まり返る。
アンさんが、こめかみを押さえた。
「……ディウム様、まさかとは思いますが
この子を連れ帰った理由って……」
「孫欲しかったから!」
即答だった。
……あれ?
もしかしてボク、すごい軽い理由で人生決まった?
「それじゃあ、これからよろしくねぇ~、ハクレちゃ~ん」
ディウムさんが満面の笑みでそう言った。
「ディウム様、そもそも学園に通わせるおつもりですか?」
「あ、バレた?
だ~いじょうぶ!
書類は僕の方でやっておくから♪」
……いや、待って。
ボク、本当に魔界で暮らすの?




