人間だとバレたら食べられるそうです
「君は、どうやってここに来たのかな?」
「え~っと……迷子?」
目の前の男性――一見すると、優しそうなおじいちゃん。
だけど、どこか底知れない雰囲気を纏っている悪魔が、大きく目を見開いた。
……そりゃそうだよね。
悪魔の世界に、人間の迷子。
ボク、自分でも方向音痴だとは思ってたけど、まさか魔界まで迷い込むとは思わなかった。
「そうか……。
それじゃあ、ついてきなさい」
「え?」
「元の世界に帰してあげる」
……まぁ、当然だよね。
ここは悪魔の世界”魔界”。
そしてボクは人間。
どう考えても場違いだ。
――だけど。
「あの!」
「ん?」
「ここで生きていくことって、できますか?」
悪魔のおじいちゃんが、ぽかんとした顔をした。
「あ、いや……。
ボク、元の世界に戻っても行くあてがないというか……あんまり帰りたくないというか……」
自分で言ってて悲しくなってきた。
「お願いします!
ボクをここに置いてください!」
勢いよく頭を下げる。
……待って。
沈黙、つらい。
一瞬だったのか、本当に長かったのかわからない静寂を破ったのは――
「アッハハハハハ!」
ものすごく楽しそうな笑い声だった。
「いやぁ、面白い!
君みたいな子は初めてだよ!」
え、そんな笑う?
ボク、変なこと言った?
「これまでたくさんの人間を見てきたけどねぇ。
みーんな『帰してください!』って泣くんだよ?」
「はぁ……」
「だって、人間は悪魔にとって”ご馳走”だからね」
……ん?
「不正取引で人間を連れてくる悪魔もいるくらいには人気だよ?」
サラッと怖いこと言った!?
え、なにここ。
地獄? いや魔界か。
「だからねぇ。
『帰さないでください!』なんて頼む子、君が初めて!」
キラキラした笑顔が怖い。
ものすごく怖い。
「つまり……」
「君、ここで人間だってバレたら、一口でパクリだよ♪」
語尾軽っ!?
え、待って。
つまりここで暮らすって――命懸けってこと!?
「いや~、嬉しいなぁ。
魔界に興味を持ってくれる人間がいるなんて」
いや、持ってない持ってない!
……ちょっとしか!
「それじゃ、帰ろっか」
「え?」
悪魔がボクに手を差し出す。
あぁ、なんだ。
散々脅しておいて、ちゃんと帰してくれるんだ。
「僕の家に!」
……あれ?
”僕の家”って、魔界にあるよね?
――終わった。




