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魔界のイレギュラー~正体バレたら人生終わります!?  作者: 夢巡つむぎ
【第二章】イレギュラーな学園生活
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18/26

018. 能力《アビリティ》

ダメだこれ

全然捕まえられる気がしない


さっきから何度もカプセルを捕まえようとしているのだが、一向に捕まる気配がない


そもそも、カプセルの逃げるスピードが速すぎる

悪魔なら普通に追いつけるのかもしれないが、足元に発生させた冷気で浮いているに近い状態のハクレには到底追いつけないスピードだった


「あのカプセル、自我でも持っているんじゃないか?

 さっきから、あとちょっとのところで逃げられるし」


誤魔化して飛べるようになったとはいえ、カプセルを捕まえられなきゃ意味ないし


「どーしよー」


もういっそ、どっか狭い場所に閉じ込められたらいいのに


「……閉じ込める、ねぇ」


言うのは、簡単なのになぁ


そもそも、近づけてはいるのだから、逃げられなきゃいい話で――


「どっかに行き止まりとか無いのかなぁ」


はは、見渡す限りの雲海のこの場所でそんなのあるわけないか


いや、待てよ


「無いなら、自分で作ればいいじゃん」


こうやって、冷気を使っていいってことは、魔術も使っていいんでしょ?

だったら、逃げ道を凍らせちゃえばいいんじゃね


「よし!

 そうと決まれば、さっき逃げられたカプセルをもう一回探しますか

 確かあっちの方に逃げていったよね」


さっき、ギリギリのところで逃げられたカプセルが逃げた方向へ進んでいくと、ふわふわと円を描きながら優雅に飛んでいるカプセルを発見した


あれ、魔道具らしいんだけど、完全になんかの生物じゃん

どうやったら、あんなの作れるわけ?


カプセルが逃げださないようにゆっくりと距離をつめる


探すときはこのそこらへんにある岩、すっごく邪魔なんだけど、近づくときは、隠れられるから丁度いいんだよね


冷気で岩を動かし、身を潜めながらひっそりと近づいていく


これ以上は、厳しいかな


カプセルとの距離が数メートルになったところで、ハクレは止まった


こっからは、スピード勝負


ハクレが勢いよく岩の影から飛び出ると、ハクレのいる反対方向にカプセルが逃げ始めた


「予想通り!」


これまでのトライ&エラーでこのことを予測していたハクレは、カプセルがそのまま真っ直ぐ進めないように小さな氷の壁を作り出した

カプセルは、一瞬止まった後、壁がないところへ方向転換する

けれど、方向転換した先にも、次々に氷の壁を作っていく

ハクレは、氷の壁を作りながら、カプセルとの距離を詰めていく


そして、カプセルの逃げ場が無くなったところで、ハクレがカプセルを捕まえた


「やったー!

 カプセルゲットー

 後は、ゴールするだけ」


カプセルは、捕まった後は逃げ出さないようになっているのか、動くことは無かった


「へぇ、やるじゃん、特待生」


ようやく、カプセルを捕まえてテンションが上がっているハクレに声を掛けてきたのは、セオドア・バルトスバだった

赤いメッシュが入った黒い短髪が風に揺れて、少し離れたところからハクレを見下ろしていた


「ええっと、セオドア君、だったよね

 教室入った時にナイフ投げて遊んでた」


あの時は、落ち着いてる子だなぁ、って思ってたけど、今はなんだろう

すごく楽しそう?


「えっ、俺の名前覚えてくれたんだ

 じゃあ、それについてもお礼を言っておくね」


それについて、も?

”も”って何?

ボク他に何かしたっけ


考えこむハクレを見て、セオドアはカプセルをハクレに見せた


「こーれ、なんだと思う?」


「へ?」


ハクレは、自分の手元を見る


「あ!

 ボクのカプセル!

 え?

 いつの間に!?」


「あっはははは

 いいリアクションだね

 自分で捕まえるよりも楽そうだったから、盗っちゃった」


セオドアは、ハクレに向かって満面の笑みを浮かべた

まるで、いたずらが成功した子供みたいに


「いいや、面白かったし、教えてあげるよ

 どうやって盗ったか」


セオドアはカプセルを放った

そのカプセルは、ハクレとセオドアの間で丁度止まった

そして、セオドアが手を引くと、またセオドアの手元に戻っていった


まるで見えない糸でつながっているかのように


「俺の能力(アビリティ)、幻糸(クリアスレッド)は、透明な糸を自由自在に操れる魔術

 俺が君に話しかけたと同時にカプセルに糸を巻きつけたってわけ」


「へ~、すごい器用だね」


セオドアの挑発的な態度とは裏腹に、ハクレはけろっと笑って返事をした

この反応に、セオドアは驚きを隠せなかった


「え?

 いいの?

 君がとったカプセル横取りしちゃって」


「えっ、うん

 だって、取り返そうにもボクの魔術じゃ難しいだろうし

 取り返せたとしても、また盗られそうだし

 だったら、もう一個、同じ方法でカプセル捕まえに行った方がいいかな~、って

 別に君と戦いたいわけじゃないし」


「ふ~ん、やっぱ面白いね、君

 じゃ、このカプセルは俺が貰っていくね」


セオドアは、その場から飛び去ろうとしたが、一度止まってハクレの方を振り返った


「君、って呼ぶのもなんだし、呼び捨てで呼んでもいいかな」


「あ、全然いいよ

 これから、よろしくね、セオドア君」


セオドアは、不敵な笑みを浮かべるとそのまま飛んで行ってしまった


やっぱ速いな、悪魔は


なんて、ハクレは呑気に思うのだった


『随分と呑気な娘じゃのう』


「わっ!

 ユキ、びっくりした~」


セオドアの姿が見えなくなると、どこからともなくティエンフーのユキが現れた


本当にどこから出てきたんだ


『其方(そなた)、カプセルが盗られたことには平然と対応しおって、妾(わらわ)が現れるのには、驚くとは

 失礼な娘じゃ』


「ごめんって~

 急に出てくるんだもん

 使い魔って、どこでも出てこれるんだね」


『いや、妾(わらわ)が例外じゃ』


「……ユキ、なんか

 昨日より、小っちゃくなった?」


神々しさが溢れ出ていたユキは、マスコットのようなかわいさがにじみでる大きさになっていた


「めっちゃ可愛い~!」


つやつやの毛並みもふわっふわになっていて、ハクレは思わずユキをなでた

その手は、ユキの尻尾によって振り払われてしまった


『昨日の姿では、目立つであろう

 こちらの姿の方が何かと都合が良かろう』


確かに、昨日の大きさじゃ

連れ歩くにも大変だもんね


「ところで、何で出てきてくれたの?」


昨日も、あれから、姿は見せてなかったし、このタイミングでいきなりってことは、何か理由があるよね


ユキは、呆れたようにため息をつきながら、言った


『其方(そなた)、能力(アビリティ)について、よく分かっておらんじゃろう』


「え、うん、分かんない!」


さっき、セオドア君が能力(アビリティ)が幻糸(クリアスレッド)だ、って言ってたけど、そもそもなんじゃそりゃだったんだよね

そういうのが、あるんだ~

くらいにしか、認識してなかったんだよね


『能力(アビリティ)は、悪魔の得意魔術じゃ

 其方(そなた)でいう、氷魔術じゃな』


「なるほど」


確かに

というか、ボクの場合、氷系の魔術以外使ったことないんだけど


それに、ボクの氷魔法にも名前があったほうが良いってことかな


っていうか、この知識

魔界では、常識なのでは


「もしかして、ユキって気づいてる?」


ボクが人間だってこと


喋るし、姿も変えられるし、魔王様の使い魔だったらしいし


『当然じゃ』


やっぱりぃ!?


え、もしかして……


『別に、其方(そなた)を喰おうとは思わぬ』


なら、良かったー


あの大きい姿だったら、一口で食べれそうだったもんね

ユキが優しくて安心、安心


『そうじゃな、其方(そなた)の能力(アビリティ)は、氷創(アイスメーカー)

 とでも、言っておけばよいじゃろう』


「アイス、メーカー」


なんかカッコいい


「ありがとう、ユキ!」


勢いで抱きしめそうになったが、ひらりとかわされてしまった


あのふわふわの毛、いつかモフモフしてみたい


『それは、そうと

 これから、どうするのじゃ』


「どうするって、もう一回カプセルを探して――」


『すでに其方(そなた)以外は、もうゴールしておるぞ』


えっ、じゃあこの広い空間から残り一個を探さなきゃいけないってこと?

ちょー大変じゃん!?


「ねぇ、ユキ

 能力(アビリティ)なら、大々的に使っても問題は無いよね?」


そんな骨が折れるようなこと、もうやってたまるか

一発で終わらせられる方法、思いついたし、それでやっちゃお

もう、ボクしかいないんだしね

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