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魔界のイレギュラー~正体バレたら人生終わります!?  作者: 夢巡つむぎ
【第二章】イレギュラーな学園生活
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17/26

017. 飛行レース

学園の裏には、見渡す限りの雲海が広がっていた

ところどころには、鋭く尖った岩もなにかの障害物のように見える


こんなところでレースとか……え?

棄権とかってできますかね?


ムリムリムリ!

足場無い状態で、飛べないボクはどうすればいいの!?


ボクはとてつもなくテンパっているだが、思うことがもう一つ


自由だなー、このクラス


今から、飛行レースというものを行うらしいが、そんな雰囲気は一ミリも無い

ゼフィア君は緊張感のないまま、教室と同じようにぷかぷかと浮きながらゲームをしている


ゲーム機って持ち込んでいいのか!?

今、授業中じゃないの!?


シオン君とウルティアは離れたところでなにやら話している

というか、ふたりとも目が笑ってないよ、目が

どっちも優等生みたいだし、張り合うところはあるのかも?

シオン君は主席らしいけど、魔法の成績はウルティアが一番だって言ってたし

今はそっとしておこう

飛行レースのこととか、聞きたかったんだけどな

詳しそうだし


ユオ君は相変わらず近くの壁に寄りかかって寝てる

どこでも寝れるってある意味才能?

本当にどうでもいいって感じが見て取れる


というか、本当にみんな個が強すぎない?

自由人の集まりみたいな

あっ、だから”イレギュラー”なのかな


ボクもなかなか魔界にとって、人のことを言えないくらいにはイレギュラーだとは自認している

人間だし

魔力見えないらしいし

けど、他のクラスメイトよりはマシな気がしてきた


「お前ら、いい加減にしろ

 授業もまともに受けれんのか」


相変わらず不機嫌オーラを纏ったオル先生


うん、オル先生

なんとなくわかるよその気持ち

これから苦労しそうな予感しかしない

頑張って

多分もボクもその問題児に含まれてるけど


「はあ、まったく

 これから、飛行レースの説明をする

 いいか、一度しか言わんからな」


オル先生の話によると、この目の前に広がる雲海も学校の敷地らしく、周囲には結界が張ってあり、外には出られないらしい

飛行レースの会場は、この雲海一体

この広い空間のどこかにいるカプセルをこの場所に持って帰ってくる速さを競うレースらしい

当然、下に結界はなく足をつけることはできない


結界があるなら、そこを歩けばいけるんじゃねと思ったが、さすがにそんなズルは対策済みだった

いや、どうにかしてズルしないとゴールできないんですけど、ボク


そして、このルール説明でもう一つ問題が発生した

そう、ゴールの条件であるカプセルは”いる”のである

オル先生が、見本を持っていたのだが、なぜかカプセルのくせに羽がついていた

カプセルは、この広い空間を飛び回っているらしい

しかも、大きさは普通に片手に収まるほどで遠くにいたら目視は不可能


いや、悪魔は目がいいのかもしれないけどさ


ボクには、ムリ


「説明は以上だ

 これより、飛行レースを始める」


クラスメイト達が羽を広げて、スタートの用意をする


えっ!?

ちょっと待って、ちょっと待って!

早いって!


「それでは、始め!」


オル先生の合図でみんな一斉に飛び始める


って、速っ!

それだけの内容ならこの空間広すぎないとか思ってたんだけど

悪魔の常識分かんない


それにしても、どうしたものか

この際、順位とかはどうでもいい

どうにかしてゴールする方法を考えないとな


「お前もさっさと行け、特待生」


うぅぅ……

オル先生の視線が痛い


本人は優雅に座ってるし

何の椅子だろうと思っていたら、先生用だったのね


「ボク、飛ぶの苦手で――」


というか、そもそも飛べないんだってー!


「飛んでいただろう、初日」


「へ?」


いや、いつ?

羽が無いのに、どうやって

ボクのそっくりさんとか?


「はぁ……」


ため息つかれた!?

え、またボクなんかした?


「ネクスフィーの火球を避けていただろう」


あっ、そのこと

いやあれは、冷気を地面にぶつけた反動で――


そっか……


「冷気!」


足場が無いなら冷気で作っちゃえばいいんだ!

よし、物は試しで……


足元に渦巻く冷気を発生させると、ゆっくりとボクの体が浮かんだ


「できた!

 ありがと、オル先生!」


これで、第一関門はとりあえず突破かな

まだ、バランスとりづらいし、他の悪魔みたいに速くは移動できないけど、とりあえず落ちなければ問題なし!

あとは、どうやってカプセルを捕まえるかだけだね!



――――――――――――――――――――――――――――――



ハクレより先にスタートしていた、生徒たちはオルフェリウス先生から離れるため、勢いよくスタートしたはいいが、それぞれまた自由に飛行していた


ただ二人、シオン・レビアルとウルティア・ネクスフィーを除いて


「あら、私(わたくし)のペースについてこられるなんて、なかなかやりますわね」


「よく言うよ、まだ本気ではないんだろう」


二人は、他の生徒からも離れた場所で止まる

その間には、一触即発の緊張感が漂っていた


「ふふふ、さすが

 主席の座を取ったまでのことはありますわね」


シオン・レビアル

突出した才能があるわけではないが、全てを器用にこなす万能者

事前テストでも、全ての種目で上位に入り、総合ランキングで一位を獲得した


正直、ここまでやるとは思いませんでしたわ


「随分と余裕だな」


「ええ、

 こんなレース、私(わたくし)にとっては、簡単すぎますもの

 それは、そちらも同じでは?」


どうやら、随分と目の敵にされているようですわね


このレースでは、魔法の使用が制限されていない

つまり、相手を魔法で妨害することも可能


「やたらと、私(わたくし)に突っかかってくる理由は何ですの?

 貴方みたいな優秀な悪魔なら、私(わたくし)に構わずさっさと終わらせてしまえばいいでしょう?」


「わざわざ聞かなくても、君はもう気づいているんじゃないのか」


やはり、それが目的ですのね


「では、この決闘で負けた方は相手に一位を譲る

 そういうことでよろしいわね?」


ハクレとの決闘同様、ウルティアの周りに数個の火球が浮かび上がる


ネクスフィー家は、炎の魔法が得意な一族である

その理由は、能力(アビリティ)である


悪魔には、一人ずつ得意魔術というものが存在する

それが、能力(アビリティ)だ

能力(アビリティ)は、どちらかの両親のものを受けつぐ


入学したての一年生は、まだ魔法の授業を受けていないので、魔法が許可されていても使えない場合が多い

しかし、能力(アビリティ)は別だ

幼いころから使える唯一の魔法なのである


ウルティア・ネクスフィーの能力(アビリティ)は、不滅業火(インフェルノ)

使用者の魔力が尽きるか、解除するまで絶対に消えない炎を生み出す魔法


初日の決闘でハクレが直感的に消えないと感じていたことは、間違いではなかった

あの場面で、炎を消そうとしても、炎は消えることなくハクレに襲い掛かっていただろう


ウルティアがハクレの実力を認めたのも、あの一瞬で不滅業火(インフェルノ)の特性を見抜いたことも少なからず影響している


「ちなみに、ですけれど

 事前テスト、魔術成績は私(わたくし)の方が上ですわよ」


シオンは、それでも狼狽える素振りは見せなかった


「知っている

 だが、あのテストは、能力(アビリティ)によって成績の差が大きくでる

 君のような攻撃系の能力(アビリティ)の方が成績が上なのは、当然だろう」


どこまでも余裕そうですわね、シオン・レビアル

まるで、勝利を確信しているような


シオンは、試すように笑みをこぼした


「信じられないなら、その火球を僕にぶつけてみればいい

 君は僕に勝てないからね」


「分かりました

 では、そうさせてもらいますわね」


火球が段々とシオンに迫る

しかし、彼は全く動こうとしなかった


「!?

 どういうことですの?」


火球は避ける間もなくシオンにあたった

はずだった


しかし、火球が彼に当たった瞬間、火球が跡形もなく消え去った

火球をくらったはずのシオンは、何事もなかったかのようにそこに佇んでいた


「理解してくれたかな

 これが僕の能力(アビリティ)、強制解除(キャンセル)

 僕が触れた魔術は強制的に打ち消すことができる

 君がどれだけ優れた魔術の使い手でも、僕が君に負けることは無い」


なるほど、そういうことですの


「分かりましたわ、今回は貴方に勝利を譲りましょう」


「随分と潔いんだな」


「今回の目的は貴方に勝つことではありませんもの

 それでは、私(わたくし)は失礼いたしますわ」


ウルティアは、シオンの元を離れる


残されたシオンは、しばらくの間、ウルティアが飛び去っていた方向を見ていた


「たった一度の敗北が、あそこまで悪魔を変えるのか

 ハクレ・ピオナム

 やはり、僕は君を認めない」


シオンは、一息つくと、ウルティアとは逆方向に飛んでいった

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