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魔界のイレギュラー~正体バレたら人生終わります!?  作者: 夢巡つむぎ
【第一章】正体バレたら即終了!? なのに初日からやらかしました
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11/26

011. 異質な存在

コンコンコン


「失礼します」


あれ?誰もいない?


「遅い」


あ……


「ただでさえ、お前のせいで時間が押しているんだ

 さっさとしろ」


終わった……

ボクを待っていたのは、あの時の怖い先生だった。

めっちゃ睨まれてるし!

後で覚えておけよって、こういうことだったんだ……


「あ、あの〜

 魔力測定って何をすれば……」


先生はすっと机の上に置いてある水晶玉を指さす。


「それに触れ」


「それだけでいいんですか?」


「ああ

 お前の魔力は欠片も見えん

 さっきの魔術も魔具か何かの類だろう」


怖いんですけど!?

口元は笑ってるけど、目が笑ってないって!

早くしろオーラが痛い。

水晶玉に触るって言っても魔力量を測るわけだから魔力を流したほうがいいのかな?

っていうか、魔力が見えないのってなんでだろう?

意識してるわけじゃないんだけどな


ボクは水晶玉に触れる。


その瞬間。

水晶玉が眩しくて目が開けられないくらい光りはじめた。


え?

ちょっと、なになに何?


「ん?」


光が収まったかと思ったら、また変なことが起こっていた。


「これは……一体……」


先生も首を傾げて、言葉を失っている。


それも当然

ボクが触っていた水晶玉のような魔力測定器が粉々に割れていたのである。


「あの〜、これって……?」


「ありえん」


ですよね~


「測定水晶が破壊されるなど聞いたことがない

 それにあの輝き……」


先生がギロッとボクのことを睨む。


「貴様、また何か仕込んだのか」


「いやいやいや、そんなことないですよ!

 ボク自身もびっくりしてますし!」


疑わしそうな目でボクを見下ろす。


「ハクレちゃ~ん

 なんかさっきすっごい光があふれたけど

 大丈夫だった~?」


「お、おじいちゃん!?」


勢いよくドアを開いて入ってきた。


「あれ?」


おじいちゃんも粉々に砕けた測定水晶に気付いたらしい。


「あ~、なるほどね~

 耐えられなかったんだ~」


「耐えられないって何に?」


「もうずうっと使ってからね~

 この水晶

 そろそろ変えちゃってもいいでしょ」


やっぱりノリが軽い!


「ならば理事長、この生徒の記録はどうするんですか」


この先生、おじいちゃんのこと嫌いなんだろうな。

さっきより不機嫌度合いが増してる。


というか、ボクが嫌われてるのっておじいちゃんも関係してるんじゃ……

そんなことはないか


「もう、オル先生は細かいな~

 僕のハクレちゃんだよ?

 記録なしでも大丈夫、大丈夫」


いや、どういう理論!?


「それに~

 明日もあるしね~」


明日もまだ何かあるの!?


「はぁ、分かりました」


「あ、あとそれの片付けもよろしく~」


「……」


悪魔社会にも上下関係ってあるんだ。

ボクはおじいちゃんに連れられて廊下に向かう。


「あ、あの!」


ボクは部屋を出る直前でオル先生の方を振り返る。


「ありがとうございました」


オル先生はふいっとそっぽを向いてしまった。


やっぱ嫌われすぎじゃない!?


部屋を出て、おじいちゃんと二人きりになった。


「あ、そうだ」


「ん~、どうしたの~?」


「入学式でボクが読んだアレ

 いったい何だったの?

 まだ解読されてないとか言ってたけど、ボク普通に読めちゃったよ」


「あ~、あれはね、魔界の言葉じゃ読み方が全然わかんないんだよね~

 ちなみに、僕もあの本は読めないよ~」


「じゃあ、なんでボクに渡したんですか!?」


「あ~、それはね~」


窓から風が入ってくる。


「ハクレちゃんなら、読めると思ったから」


ボクなら読める?

でも、魔界の言葉じゃない?

ってことは……


「あの本ってもしかして、人間の言葉で書かれてたってこと?」


いや、でもなんで人間の言葉で書かれた本が魔界にあるわけ!?

しかも、魔法の呪文の!?

人間界にそんなものが存在してたらボクだってあんなに苦労しなかったじゃん!


「まぁ、僕は人間界の言葉なんて見たことないから~

 本当のとこは分かんないけどね~」


おいおい……


「あ、そうだ

 まだ下校まで時間もあるし、好きに校内を見て回っていいよ

 学校、初めてなんでしょ?」


え……


「いいの!!?」


「もっちろ~ん

 帰り道は分かる?」


「うん」


というか、屋敷の屋根がちらっと見えてるから迷わないと思う……

って、迷って魔界に来た人間に言われても信憑性ないか


「それじゃあ、楽しんできな~」


「は~い!」



――――――――――――――――――――



ハクレちゃんが廊下を元気に走っていき、角を曲がって姿が見えなくなったところで僕、ディウム・ピオナムは一息ついた。


原典の解読。

水晶の破壊。

それに加えて入学式前のあの魔術。

あの子を見てからずっと覚えていた違和感。


あの子は魔力に耐性があるとは思っていた。

魔界に漂っている魔力にも食べ物に含まれている魔力にも反応しない。

人間であれば魔力が”無い”と僕らも認識できる。

でも、あの子は”無い”のではない、”見えない”のだ

あれほど完璧に膨大な魔力を抑え込むとは。


「これからが楽しみだ

 ハクレちゃん」


意図せず口からこぼれ出た声は、誰もいない廊下の影に消えていった



――――――――――――――――



いや~、来た時に見えた通り本当に広い学校だな~


入学式をやったホール。

大きな教会みたいな建物。

高層ビルみたいな校舎。


歩いてみて分かったけど、島全体が学園の敷地内になってるんだよな


つまり、めちゃめちゃ広い


そして――


「また、迷った……」


さっき、おじいちゃんに自信満々に帰れるって言ったのに?

敷地内が想像よりも広すぎて帰るどころの話じゃない!


「ここ、さっきも通ったような……」


さっきから同じようなところをぐるぐる回っていた


校舎の中で迷子になったから、外に出て一安心

かと思いきや、外も広すぎてもう無理


どっちに行けば校門ですか?


「とりあえず、休憩しよ」


ボクは目についたベンチに座る


「はぁ……

 楽しいなぁ」


人間界にいた頃、こんな風にゆっくりと休める時間があっただろうか


ボクは人間だ

ここは魔界でボクは異質な存在


でも……


ボクは……


人間界でも異質な存在だった



――――――――――――――――――――――――――



ボクが生まれたのは、真夏日だった


地球温暖化で年々、気温が上昇する中

ボクが生まれた瞬間、

辺りは、


雪景色に包まれた。


数年たっても、歴史的な異常気象としてニュースに取り上げられるほどだった。


だから、両親はボクに白霊(ハクレ)という名前を付けた。


この名前に込められた意味、

それは、


”白い化け物”


雪のように真っ白な髪。

満月のように輝く黄金の瞳。


日本人離れした容姿がそのことをさらに引き立てた


人間界にボクの居場所なんてなかった



――――――――――――――――――――――――――



「あーもう!

 こんな暗い考えは無し無し!

 今を大事に生きる

 それがボクの生き方なんだから」


人間だろうが、ディウムさんは受け入れてくれた


なら、このチャンスを逃す他ない


「とりあえず……

 帰り道ってどっち?」


ボクの思考は結局振り出しに戻った。


「……うるさい」


「へ?」


真横から、消え入りそうなほど気だるげな声がした。


見ると、ボクが座っているベンチの反対側で、一人の少年が寝そべっていた。


学園の制服の上から黒いパーカーを羽織り、フードを深く被っている。

顔はほとんど見えない。


少年は面倒くさそうに上半身を起こすと、ボリボリと頭を掻いた。


その拍子に、フードの隙間から彼の顔が少しだけ覗く。


――あ。


ボクの心臓が、ドクンと跳ねた。


黒い髪の隙間から見えた彼の瞳は、吸い込まれるような、真っ赤な色をしていた。

何事にも無関心で、冷え切っていて、まるで世界を拒絶しているかのような――。


同じだ。


人間界で”化け物”と呼ばれ、誰とも目を合わせようとしなかったあの子と。


胸の奥が、ぎゅっと締め付けられる。


「……何」


少年はボクの視線に気づくと、死んだ魚のような目で、じっとボクを見つめ返してきた。


ボクは、この無気力そうな彼から目を離すことができなかった。


この少年――ユオとの出会いが、ボクの魔界での運命を大きく動かしていくことになるなんて、この時のボクは思っていなかった。

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