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魔界のイレギュラー~正体バレたら人生終わります!?  作者: 夢巡つむぎ
【第一章】正体バレたら即終了!? なのに初日からやらかしました
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010. 入学式

絶対怒られる。


ボクは他の新入生について行きながら、ずっとそんなことを考えていた。


だって。


「後で覚えておけ」


だよ!?


怖すぎるでしょ!


周りの悪魔も全員固まってたし!


ボクが半泣き状態で歩いていると、目の前に巨大な建物が見えてきた。


「うわぁ……」


思わず声が漏れる。


そこは、巨大な円形ホールだった。


中は、多くの新入生で賑わっていた。


ボクは隅っこの席に腰掛ける。


その時。


「粛せよ」


低い声が響く。


それだけで、ざわついていた新入生たちがピタリと黙った。


さっきの先生だ。


先生はホール全体を見渡した後、淡々と告げる。


「これより、デモンズアカデミア入学式を開始する」


その直後。


「やっほ~、みんなおっはよ~!!」


軽っ!


めちゃくちゃ軽いんだけど!?


ステージに現れたのは――


「ハクレちゃ~ん!ちゃんと見えてる~?」


ぶんぶん手を振ってる。


やめて!?


めっちゃ恥ずかしいから!!


視線が一斉にボクへ集まる。


ボクは思わず肩をすくめた。


「え~、新入生のみんな~!

 入学おめでとう!」


おじいちゃんは満面の笑みで話し始める。


「今年も優秀な子がいっぱい入ってくれて嬉しいよ~。

 でもね~」


ちらっ。


こっちを見た。


まさか……


「今年は特に!

 僕の孫が最っ高にかわいいんだよね~!」


やっぱりぃぃぃぃ!?


孫自慢したいって言ってましたもんね!


「すっごく素直でね~

 ご飯もいっぱい食べてね~

 ほら、みんなも見たでしょ孫の魔法

 おじいちゃん、感動しちゃった~

 あ、これが僕の孫ね」


壇上で校門の前で撮った写真のポスターを広げる。


やめて!?


個人情報!!


静まり返っていたホールがまたざわざわし始める。


「そろそろ時間だね~

 みんな、学園ライフ楽しんでね~」


終わった!?


八割くらい孫自慢しかしてなくない!?


ってか、ポスターおきっぱにしないで!?


「では、続いて、新入生代表の言葉――」


あ、さっきおじいちゃんを呼びに来てた先生だ。


結構話しかけやすそうな雰囲気なんだよな


え、こっちみた


「特待生、ハクレ・ピオナム」


「……へ?」


しーん。


え?


今なんて?


「前へどうぞ」


すごくにこやかに訳分かんないこと言ってる。


「え、いや、あの……」


なんで!?


すると、おじいちゃんが舞台袖からニコニコしながら小さく手を振っていた。


その手には、カメラが。


仕組んだな、あの孫バカ理事長!!


ボクは、空気に促されるままステージに上がる。


ポスターの横に一冊の本と小さなメモが置いてある。


『ハクレちゃんへ

  困ったときはこの本を読んでね♪

          おじいちゃんより』


え?


この本を読めってこと?


このためにポスター置いて行ったわけ?


ボクは、その本を開く。


「おい、あれ……」

「まさか、”原典”!?」

「まだ解読されてないんじゃ……」


え。


何それ。


なんか図鑑みたいに分厚いんだけど


本とかあんまり読んだことないんだよね


えーい、もうどうにでもなれ!


とりあえず、はじめのページを読めばいっか


「未来へ進む者たちよ

 我が心のゆくままに道を切り開け

 この出会いに祝福を――

 光雨(ルミナリア)」


瞬間。


無数の黄金の光が、ホール全体へ優しく降り始めた。


きらきら。


ふわり。


「綺麗……」


黄金の光は、新入生たちの肩へ、髪へ、手へと優しく降り積もる。


暖かい。


「これは……」

「祝福の魔法……?」

「ありえない……」


生徒だけでなく教師陣もざわめいている。


ボク、また何かやっちゃった?


「いや~、さすがだね~、キミ」


これまで司会をしていたあのにこやかな笑顔の先生が近づいてくる。


「これまで、解読されてなかった原典をあっさり読んじゃうなんてね

 さっすが、理事長のお孫さん」


……え?


「よし!これで入学式は終わり。解散、解散~」


ちょっと待って、ちょっと待って!?


ボク、ふつ~に読めちゃいましたが!?


どういうこと!?


おじいちゃんが舞台袖でにっこりしてる。


後で、ちゃんと聞いとかないと。


そして。


一人の少年が、ボクのことを真っ直ぐ見ていた。


オリーヴブラウンの髪。


鋭い透き通った緑の瞳。


その少年は、小さく目を細めた。


もう目立ちたくないしさっさと退散しよ――


「ねぇねぇ!」

「さっきの魔術何!?」

「ネクスフィーに勝ったってマジ?」


「へ?」


気づけば。


ものすごい数の新入生に囲まれていた。


「どうやって解読したの?」

「理事長の孫って本当だったんだね!」

「飛び入りってガチ!?」


「え、えっと……」


質問が多い!


全然追いつかないんだけど!


「おい」


一瞬で周囲が静まり返る。


そこには、一人の新入生が立っていた。


「質問は後にしろ

 時間が惜しいんだ」


綺麗な緑色の瞳が真っ直ぐこちらを見ている。


「ついてこい」


「あ、はい」


彼はそれだけ言って歩き出す。


ボクも慌てて後を追った。


廊下はとても静かだった。


さっきまであんなに騒がしかったのに、不思議なくらい。


気まずい。


何か話した方がいいかな。


「さっきは、ありがとう」


「お前を助けた覚えはない」


会話終了!?


え、どうしよう。


でも、このまま無言も気まずい。


「あ、えっと……

 キミ、ボクのこと見てたよね、さっき」


少し前を歩いていた彼が立ち止まって振り返る。


「ここだ」


「へ?」


「事前テストをパスしているだろう

 お前の魔力測定を行う

 俺はその案内役だ」


「あ、そういうこと」


「……」


「……」


再び、沈黙


だから、気まずいって!


「本来」


静寂を破ったのは、彼の方だった。


「新入生代表の言葉を言うのは俺だった」


その瞳はとても真っ直ぐだった。


「え……」


つまり。


ボクが大役横取りしちゃってた!?


「あっ、ごめん!」


「謝る必要はない」


声はすごく冷静だった。


でも。


空気が冷たい。


「あれは、完全に理事長の身内贔屓だ」


うん、そうだね。


あれには、ボクもびっくりしたよ


「俺は、シオン・レビアル」


何度見てもきれいな瞳。


なんて場違いに思う。


「一つ言っておく」


シオン君がボクに近づく。


「俺は、お前を認めない」


「……え?」


シオン君が鋭くボクを睨む。


「突然現れて、全部持って行ったお前を」


その声には、怒りというより――。


強い対抗心が滲んでいた。


そう言って、シオン君は踵を返す。


その背中を見送りながら、ボクはポツリと呟いた。


「……なんか、嫌われちゃった?」


まぁ、そりゃそうだよね。

努力して代表になったのに、台無しにされちゃったんだもん。


申し訳ないなぁ……

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