第3話 聖女の目覚めと分断
Side:結花
白い光に包まれた。
「え……?」
目を開けると、そこは見知らぬ森だった。
「何、ここ?」
恐怖でしかなかった。
あの神様とかいう人に突然呼び出されるし、
急に異世界に飛ばすとか訳が分からない。
「どうしてこんなことに……。
これからどうしたらいいの?」
周囲を見渡してみる。
クラスメイトたちは全員いるっぽい。
でも、知らない顔の人もいる。
……いや、違う。
知らないはずなのに、どこかで見たことがあるような気がする。
でも、そんなことを考えてる余裕なんてなかった。
「蓮、これからどう……す……」
蓮がいない。
蓮が……あの門を通るまで腕を強く掴んでたのに。
いつの間にいなくなった?
「れ……ん……?」
れん……どこにいるの?
「どうしたの?ゆいちゃん?」
クラスメイトであり親友の佐々木凛こと凛ちゃんが近くに来た。
「凛ちゃん……れんが……れんがいないの……」
「蓮君?あぁ~、ゆいちゃんの旦那さんね!
……って、そういえば見かけないね?」
「さっきまで、私が腕を掴んでたの。
それなのに蓮がいなくて……」
本当にどうしよう……。
蓮がいないと私……生きる意味が……ない。
蓮がいないと私……。
小さい頃からずっと一緒だった。
公園で遊んだり、家でゲームをしたり、嬉しいことも悲しいことも、いつも蓮が隣にいてくれた。
高校最後の日に、勇気を出して思いを伝えようって決めてた。
大人になっても、一緒に笑って、一緒に生きていきたい。
そう信じてたのに──。
「なんで……?」
その時──。
「やぁ、さっきぶりだね。」
あの神とかいう存在がまたやってきた。
「ねぇ!れんをどこにやったの!」
「れん?あぁ~あの子ね。
あの子は先に違うとこに転移させたよ。」
は?意味が分からない。
私とれんを遠ざけるなんて。
──ゆるせない。
なんで私たちを勝手にこんな世界に連れてきたの?
なんで蓮と私を引き離したの?
なんで、そんな平然と話せるの?
「ちょっとゆいちゃん、落ち着いて!」
「ん?……あっ……」
周囲を見渡すと、クラスのみんなが怯えてる。
私の怒りがみんなに伝わっちゃったんだと思う。
「……こほん。で!蓮はどこにやったのかな?」
「ゆいちゃんまだ滲み出てるよ……」
「まぁ、すぐ会えると思うよ」
なんか確証がない言い方をする。
曖昧な言い方をしてくる。
──いらつく!!
「こんなことを話している時間はない。僕も忙しいからね。
とりあえず安心してほしい。
君たちの中には、とあるゲームのキャラになっている人がいるよね?
その子たちは、ゲームで積み重ねてきた経験をそのまま使える。
だから、少なくとも戦う力がまったくないってわけじゃないよ。」
「あれ、この姿……アナセルの?」
「えっ!?ほんとだ!」
「いつの間に装備なんか着てたんだ?」
「お、おい!これ俺が昔使ってたキャラじゃないか!?」
クラスのあちこちから驚きの声が上がる。
落ち着いた時、ようやく私も気付いた。
確かに、鉄の鎧みたいな装備を着てる人が数人だけどいる。
「でも、そのまま転移した子たちは戦えない……よね?」
なんでそこで他人事みたいに言ってんの?
「まぁそんなところかな。
さて、それじゃあ──どーん!」
空中に花火のような魔法みたいなものが私たちに降りかかった。
「きれい……!」
「すごい!、花火みたい!」
「すごいきれいだな!」
みんな緊張や不安が少し溶けたみたい。
よかった。
「さ、君たちどんな加護を授かったかな?」
頭の中から声が聞こえる。
目を閉じて集中して聞いてみる。
「ゆいか……ゆいか!」
私の名前を呼んでる……!
目を開いた時、私は綺麗な夕焼けに麦畑、そして教会が建つ場所に立っていた。
「やっと呼びかけに来てくれた!」
「えっ、え!なんですかいきなり!」
いきなり教会の制服のような恰好をした人が抱き着いてきた。
「あなたは私の、”聖女の加護”を授かっています。」
「私が聖女?どういうことですか?」
聖女って何?どういうことなんだろう?
「今は詳しくは話せないの。
だからまずは力をつけて!」
すごい頑張って!ってポーズをしてる。
思わずかわいいって思ってしまった。
こんな状況なのに、不思議と安心している自分がいた。
初めてあったはずなのに、どこか懐かしいような。
そんな不思議な感覚だった。
急に視界が揺らぐ。
「あ、あれ?視界が……」
視界が白く染まっていく。
「そろそろ時間のようね……。
結花ちゃんまた会いましょう!」
その声を最後に、私の意識は闇の中へ沈んでいった。
「ゆいちゃ……ゆいちゃん!!」
「結花ちゃん!!」
「んむぅ……ここは?」
「大丈夫?さっき急に倒れたんだよ?」
「それ、本当?」
もしかしてあの聖女?に呼びかけられたからかな?
夢みたいに感じたけど、違う。あれは夢なんかじゃない。
まるで本当にあの世界に行っていたみたいだった。
夕焼けの景色も、吹き抜ける風も、麦の匂いも、確かに感じていた。
あの人は本当に”存在する人”なのかもしれない。
「力をつける……か」
「どうしたの?」
「えっ、何でもないよ」
私は小さく首を振った。
またあの人に会えれば、この聖女?の力とこの世界のことについて知れるかも!
蓮を探すカギになるかもしれない!
力をつける……。どうやればいいか分からないけど、頑張ってみよう!
その時だった──。
「きゃぁぁぁぁぁ!」
「え、なに!?」
叫び声が聞こえた。
「あ、あれって……」
「モンスター?」
あんな奴がいるんだ……。
怖い……。今の私には対抗するなんてできない。
逃げたい。
でも、どこへ?
この森なんて何も知らない……。
足が震えて動かない。
「おい、お前ら転生組がどうにかしろよ!!!」
「はぁ!?まだ転生したてでどうやればいいのかわかんねぇよ!?」
ゲームキャラに転生した人たちも恐怖に侵されている。
「どうすればいいの……?」
ガサッ。
後ろの茂みから何か気配を感じた。
「「あっ─」」
目が合っちゃった。
あれ?女の子……?
初めて見る顔のはずなのに、なんでだろう。
その子を見た瞬間、張り詰めていた心が少しだけ軽くなった気がした。
なんだか、すごく安心する。
まるで、ずっと一緒にいた誰かがそばにいてくれるような。
どうしてだろう。
どこかで会ったことがあるような──。
でも、そんなこと考える余裕なんてない。
私はまたモンスターの方に視線を向けた。
すると──。
「おい!!モンスターが向かってきたぞ!!!」
やばい……。
モンスターがこっちに来る。
嫌……。
だれか……助けて……。
その時だった──。
「えっ……?」
さっき、茂みの中に隠れてた女の子が飛び出した。
「な、なんで……!?」
その小さな背中が、迫ってくるモンスターたちに突っ込んでいく。
「だめ……!」
思わず声が漏れる。
だってあの子一人しかいないのに──。




