第1話 白い世界の先で
何だろう?この空間。不思議だ。
どこを見渡しても真っ白な世界が広がっている。
地面も空も境界が曖昧で、興味深い。
その中でも唯一目を引くのは、そびえ立つ巨大な門だった。
さっそく異世界転移が始まったって感じ。
「みんなは……?」
周囲を見渡してみる。
奇妙な感覚だ。なぜか、クラスメイトたちは誰一人として動いていなかった。
まるで時間が止まったかのように固まっている。
「動けるのは、俺だけなのか?」
どう考えても異常事態だ。
そんなことを考えていると――
「へぇ~、君が」
突然、頭の中に声が響いた。
「は!? 誰だ!」
慌てて周囲を見渡す。
何だ何だ急に。誰が語り掛けてきたんだ?
しかし、周りのクラスメイト以外の人物は見当たらない。
「先に君だけに伝えておくね」
「ありがとう」
「は? どういうことだ?」
問い返してみたが、返事はない。ということは聞こえていないのか?
ありがとう?なんでそんなことを言うんだ?訳が分からない。
そもそも聞こうとしていないのか?分からない。分からないことだらけだ。
直後、時が止まっていたように見えたクラスメイト達が動き出す。
「な、なんだここ!?」
「おいおい、夢じゃないよな?」
「ねぇ、本当に大丈夫なの?」
不安と混乱が広がる。
その状況の中、俺たちの前に光が集まりだした。
光は人の形を作り、一人の青年が姿を現す。
なんかよく見ると神々しいというよりは、雰囲気が軽そうな人だ。
「やぁ、初めまして」
青年は笑顔で手を振ってくる。
「僕は君たちが言うところの神さ」
その言葉にクラス中がざわついた。
神?本当に実在してたんだ。
――ていうか思ったより気軽な感じ。
「今から君たちには、僕の作った世界へ飛んでもらうよ」
神は楽しそうに話を続ける。
「君たちも憧れてる人いたんじゃない?剣と魔法の世界に」
本当に異世界に行くのか?
ゲームや小説でしか見たことがない世界。
普通ならクラスメイト達のように戸惑と思う。
だが――
正直、ワクワクしている自分がいる。
「今詳しく説明したところで、多分誰も理解できないだろう?
まぁでも一つだけ忠告するなら……油断しないことさ」
油断しないことか。
つまりは俺たちが行く世界は危険で、戦いがあり、命のやり取りが頻繁に存在する世界ってことか。
「ますますゲームみたいな世界だな」
おっと、考え込んでいたら思わず呟いてしまった。
「蓮!? なんでそんなに落ち着いていられるの!?」
隣で結花が驚いた声を上げる。
「だって異世界いけるってことだろ?
退屈しない世界だと思うし、正直楽しみ」
「なんで!?異世界だよ?危険な世界なんだよ!?」
「もう後戻りはできないんだろうし、楽しまないと損でしょ?」
「もう、バカ……信じらんない………」
結花はあきれたようにため息を吐いた。
「じゃあ行こうか」
神がそう告げる。
すると、周りから鐘が鳴り最初から見えていた巨大な門がゆっくりと開いた。
クラスメイトたちは戸惑いながらも門へと向かう。
その時だった。
「君にはギフトを渡してあるからね」
神が俺に向かって言った。
「は?」
思わず顔を上げる。
「ギフトってなんだよ!神様、教えてくれよ!」
だが神は答えない。
次の瞬間、体が強い力で引っ張られた。
「ちょ――――」
抵抗する暇もなく、俺の体は門の中へと吸い込まれていった。
「ん……ここは?」
たしかあの大扉に吸い込まれた後、意識を失ったんだっけ?
少し記憶が曖昧だ。
クラスのみんなや今の状況が気になる。
目を開けてみる。
「……ここは、森?」
夢だったのか?
あの白い世界も妙にリアルだったし、もともとは学校にいた。
なら本当に異世界へと来てしまったのか。
「ここがいせか…い……か?」
ん?
俺の声、こんなに高かったっけ?
ていうか女の子の声してたよな?
「……えっと?」
嫌な予感がした。
自分自身の体の異変について調べるため、体を観察してみる。
「髪が…長いんだけど……」
体の異変を確かめるためにも、視線を下に向けてみる。
「胸が、ある……それに、男の大事な部分が……無くなって………」
次々と自分の身に起こった異変が分かってくる。
「………」
思考が停止した。
「なんで……なんで………なんで女になってるのぉぉぉぉぉぉぉ!」
なんで!?どうして!?なんで女の子に!?
驚きが心の中にも響いている。(うるさい)
え~と、まずは落ち着こう。状況整理しなきゃ。
この女の姿にしたのは誰かっていう疑問の答えは・・あの神か。
「いつか、覚えてなよ……」
神への恨みが膨張しつつ、泣き目で放った言葉だった。
「うぅ、どうしよう……この体で生きていかなきゃいけないのかな?」
………ん?
あれ?私こんな弱気な性格だっけ?
ていうか一人称私になってない?
口調まで、女の子らしくなろうとしてるのかな?
気のせいじゃ……ないか。
「ちょっと頭冷やしたいな……あの池のとこまで行こ……」
近くに大きな池がある。そこで心を落ち着かせよう。
ちょっとどんな顔なのか……気になるし……。
大きな池の近くまでやってきた。
「えっと、この顔……どこかで?」
水面に近づいた。
何か見たことある顔だ。誰だっけ?
顔に見覚えがあるんだよね~。なんでだろう……。
こんなアニメのキャラのような見た目は忘れるわけないのに。
「まぁ、いいか……休憩しよ~」
そのまま地面に寝転んだ。
「この顔、うちのアニスちゃんに似てたな~」
現実に来たらこのぐらい美人で可愛いんだろうな~。
って、あれ?アニスに似てる?
体を起こして、もう一度顔を水面に近づけてみる。
「ん?………んぇ!?」
思わず変な声が出てしまった。
「本当にやってくれたねぇ!あの神様は!!!」
怒りが溢れそうになった。
だがここにはあの神と名乗る青年はいないしどうもすることはできない。
「もうどうしようもないんだし、次の行動に移そうかな!」
今考えても仕方ない……か……。
それよりもやることがあるし!
「さ、何から手を付けようかな」
今ある問題を整理してみよう。
一つ目は自分の体のこと。
女の子になったことはちょっと思うところはあるけれど、この子はもとはゲームにいた。
この体は、あのゲームに存在してた頃の力はあるのか。
2つ目はクラスのみんなのこと。
あの白い世界にあった巨大な門に一緒のタイミングで入ったはず。
なのに私だけ離れた位置で意識を失ってた。
もしかしたらあの神が私だけ違う位置に飛ばしたのかも……?
考え出したとしてもここにいても変わらないよね。
「そろそろ行動に移そうかな!
クラスのみんながどこに飛ばされてるのか気になるし!」
大きな池を中心に周囲の探索を始めた。




