第53話 弾幕はパワー!
必要の部屋を作ってから3日が経った。やはり、誰にも邪魔されずに切磋琢磨し合える場所があるのは良いな。
それぞれが自分を磨くために訓練をしている中、俺は、これまで寮の自室で行っていた日課をこちらで済ませるようにし始めた。
部屋の中だとあまり強い魔法を打つことができず、効率よく魔力を消費することも難しい。かと言って簡単な魔法を繰り返すだけでは、魔力の質を上げるのも効率がとても悪い。
そんな状況下にいたわけだが、必要の部屋を作ったことによって気兼ねなく魔法を打てるようになった。
「もっとだ。もっと早く撃てる。魔法陣を思い浮かべる時間すら惜しい」
修行の一環として、俺は魔法の早撃ちを始めた。これは、タイパよく魔力を消費出来ることだけでなく、戦いの際に相手より先に魔法を打てるようになるので鍛えている。
現状だと、まだ1秒に1回魔法を発動できる程度なので、将来的には毎秒2回以上は撃てるようになりたい。
また、複数の魔法を同時に発動する時も、発動にかける時間を減らせるように取り組んでいる。
いくら魔法で包囲したとしても、その前に対策されては元も子もない。なので、早く撃てるようになるのは必須なのだ。俺は毎日の努力のおかげで魔力量が他と桁違い(ミューとは同じくらい)なので、そこさえ解決すれば弾幕を張れるようになるはずなのだ。
どうしてそこまで弾幕にこだわるのかって?
魔法を大量に撃てば、相手は相手は防御にかなりのリソースを割いてこちらが圧倒的に有利になる。そうすれば隙が生まれて、火力を増した魔法を防御されずに当てられると言うわけだ。
あと、どう弾幕はパワーだから。弾幕こそパワー。力こそパワー!某白黒魔法使いもそう言ってるしな。
「リオン、貴方凄いわね。一体これは、幾つの魔法を同時に展開してるの?それに、展開速度も、発動間隔も短いわ。どれだけ繰り返し練習したらそこまでになるのよ。執念を感じるわ」
俺が訓練に励んでいると、ミューがそれを観にきて、感想を言った。
「いやー、それほどでも?以前、父上が魔法を本気で使うところを一度だけ見たことがあってね。今の俺とは比べ物にならないほどの数の魔法を同時に展開して、凄い速さで撃っていたんだ。それと比べたら、俺はまだまだだよ。数も、魔法の強さも、何もかもが劣ってる。俺の夢は世界最強なんだ。父上を超えられなくて、世界最強なんて目指せないよ」
ミューの言葉に、俺はそう返した。すると、ミューは目を見開いてこう言う。
「貴方、世界最強なんて目指してたのね。それなら、私を超えないと世界最強にはなれないわよ。確かに、私は魔法の速射や同時に撃てる数では劣ってるかもしれないわ。でもね、私には火力がある。貴方には真似ができるかしら。いくら攻撃を当てたとしても、それが通らなければ意味がないもの。そんな魔法で大丈夫なの?」
「大丈夫だ、」問題ない
確かに、最低限の火力は必要だよな。火力がなかったら、防御の高い相手だと少ししかダメージを与えられないし、毎ターンに回復とかしてきたら絶望ものだ。
お前のことだぞ、ブリ◯ュラス。こちらが攻撃したら毎ターン防御を上げてきて、たべのこしなんて持ってたら発狂ものだ。対策してない時に限って相手の構築に入ってボコボコにされるから、軽くトラウマだし。
《閑話休題《話がそれた》》、火力は必要だが、こちらも全く対策していないわけではない。
「ミューの言う通り、火力は大事だ。だけど、俺には手札が大量にある。弱点のない敵なんていない。それに合わせた手段をとれば、十分に火力は出ると思わないか?」
火には水、水には雷、雷には土、土には火。属性には相性があり、鎧や防御もその全てに完璧に対応するなんてことも不可能だ。
必ず、どこかを立てれば他のところが立たなくなる。
手札の数というアドバンテージがあるのだから、それを最大限活用した戦法を取れば良い。無理に火力を上げようとしてコントロールを怠る方がダメだと思う。
その考えをミューに伝えると、彼女は納得したような顔をしてこちらを向いた。
「リオン、しっかり考えてるじゃない。意外だったわ。あなたのことだから、てっきり数こそ力とかバカなこと考えてるのかと思ってたのに、見直したわ」
なんで俺の考えていたことを、完全にではないけど当ててくるんだよ。今適当に考えて喋ったのがバレそうでヒヤヒヤするじゃないか。
即興で喋ったからどこかで矛盾してボロが出るのが不安だったけど、そんなことなくて安心したー。
「リオン君達、凄いね。そんなことまで考えてるんだ。僕なんて一生懸命一つの魔法を磨き続けているというのに、レベルが違うよ」
俺がホッとしていると、少し離れたところからアレンが羨望の眼差しを向けてこちらに声をかけた。
「ちょっと、アレン君。リオンを煽てないでちょうだい。全く、すぐに調子に乗るんだから」
ちょ、ミュー酷くない?人の心とか無いの?あまりにも言葉の刺し傷が深すぎて危うく致命傷になるところだったんだけど。
「どうせ、今のも即興ででっち上げた言い訳なんでしょ。いつから一緒にいると思ってるのよ。あなたの馬鹿正直な考えなんて簡単に読めるわ」
不味い、考えてることがわかるのか?
「あら、何が不味いのかしら。言ってみなさい、リオン」
怖いって。もはや読心術の域に入ってるよ。こうも簡単に心を読まれたらプライバシーさん行方不明になっちゃうよ。
「リオン君、申し訳ないんだけど、僕でもリオン君が考えてることなんとなくは分かるよ?だって、リオン君めっちゃ顔に出るんだもん。まあでも、細かくはわからないから、ミュレイさんには負けるね」
え、そんなに?俺のプライバシーとか最初からいなかったの?
「リオン、あんたの考えてること、わかりやすすぎるのよ。思考が単純なのもそうだけど、顔に出てるから7割程度なら読み取れるわ」
リースまで参戦して俺を揶揄ってくる。くっ、リベルトはどうなんだ?
一縷の望みをかけてリベルトへ視線を向けると、拍子の抜けたような顔をして意外なことを言った。
「えっ、そうだったかい?入学してきてから、毎日のようにリオン君と喋って顔も見てきたけど、全く気づかなかったよ。言うほど分かりやすいかな?」
リベルトは鈍感だったのか。かなり察しの良さそうな雰囲気を纏っているが、かなり意外だな。
俺以外の3人が、それは無いだろとでも言いたげな視線でリベルトを見ている。
「な、なんだい?何かおかしいことを言ったかな?」
「「「それは無い」」」
3人は声をそろえてリベルトを否定した。流石にリベルトが可哀想だろ、これは。
「まあ、これは俺がわかりやすすぎるってことで終わりにしよう。これ以上はリベルトが惨めだからな」
俺がそう言って締めて、また修行を再開した。




