第52話 完成!
「えーっと、こことここを繋げたらこうなって・・・・」
早速、俺たちは空き教室に篭って必要の部屋を作るための魔法陣を組み始めた。
「ちょっと、ここ魔力の無駄よ。これだけで済むわ」
俺が書く魔法陣に、ミューが改善案を出したりしながら、作業を進めている。
「お、そうだな。ありがと」
確かに、この要素に置き換えれば魔力消費も魔法陣に書き込む数も減らせる。
俺とミューが描いているのは魔法陣のメインである部屋の存在を認知によって切り替える機構だ。こちらは難易度が高いので成績トップ2で試行錯誤しながら行なっている。
そして、残りの3人には魔力を魔石から補充するための機構を描いてもらっている。こちらは、既にある魔道具の陣を利用すれば簡単にできるはずなので、俺たちは完成したものを確認するだけだ。
「リオンくーん、この部分は完成したよ!」
おっ、アレン達に任せていた部分はもう完成したようだ。そうしたら、一旦こちらの作業は中断して確認と添削でもしようかな。
「ここは、魔力が逆流する危険があるからこれを追加して弁の代わりを作ったら良いよ。この陣の上に置かれている魔石から魔力を補充する陣の考えはいいね!魔道具は大抵魔石を入れるところが付いてるから、それを考えなくて良くなるのは楽だよ。ただ、このままだと効率が悪いからここの要素を抜くだけで補充効率が1.3倍。確かにこれはあったら良いかもだけど、この魔法陣には必要ないかな」
アレン達に任せていた部分の確認と修正はこれで完了。後は、こちらの仕事を終えるだけだ。
「ここの、認知されていない時の状態はどうする?外見だけ取り繕うか、それとも完全に壁に偽装するか」
俺が部屋を隠すための部分をどうするか聞くと、ミューは悩みながらこう言った。
「そうねぇ、やっぱり完璧を目指すなら外見だけでは無く完全に偽装する必要があるけれど技術力的に私たちにはできないし、外見だけだともし触られた時に勘付かれる危険性があるわ」
うむむ、どちらを取るべきか。楽を取って見た目だけ変えるか、実現できるかもわからない理論値を取るか、どうしよう。
「ここは、間をとって覆って隠してみるのはどうだ?」
ん?適当なことを言ったつもりだったが、我ながら名案を思いついてしまったかもしれない。
「何処が間かはよくわからないけれど、良い考えね。それを採用しましょう。壁の材質はたしか漆喰で加工したレンガよね?それなら、土属性魔法で十分に再現できるはずよ」
それからの作業はあっという間だった。作業が詰まっている壁だったものが一瞬にして崩れ去ったのだから、崩壊したダムのように勢いよく作業は進んでいった。
◆◇◆◇◆◇
「最後に、こことここを繋げれば・・・・・・できた!」
認知によって部屋の存在を隠す機構と、魔石から魔力を補充する機構を接続して、遂に目的だった魔法陣を完成させることができた。
俺達の持てる知識をフル稼働して作成した自信作だ。アレン特製の防御魔法や、リースの強化魔法が組み込まれており、リベルトは機構の作成に尽力してくれた。
時計を見てみると、なんと4時間も経っていた。これ以上長居するのは難しそうだな。早く帰ろう。
「これで、やっとスタートラインよ。さあ、これから対策を進めましょう!と、言いたいところだけれど、もうこんな時間ね。今日は上がってまた明日にしましょう」
ミューがそう言うと、ついさっきまで感じていなかった疲れがドッと俺を襲ってきた。
「疲れたなー。今日は解散!また明日の放課後、ここに集合な」
俺が解散を宣言して、それぞれが寮の部屋に戻り始めた。男子の中で、俺とリベルトは同じ部屋で暮らしているため、二人で雑談でもしながら帰り始める。
「いやー、あの時は終わったかと思ったよ」
「ねぇリオン君、一つ気になったんだけど良いかな?」
くだらないことを喋りながら歩いていると、リベルトが突然何かを思い出したかのように尋ねてきた。
「どうした?なんでも聞いてくれよ。気になることでもあったの?」
「HRが終わって、僕らが話していた時、リオン君は『必要の部屋』と言う言葉を突然出してきたけれど、あれはどこからきたんだい?アレン君の喋ってたことから、出てくること自体は自然だけど、どうしてその名前なのか気になったんだ」
な、なるほど・・・・?どうやって説明しようか。ここで前世をカミングアウトしても良いんだけど、そうした場合、まともに取り合ってくれるとは思えないな。
最悪、頭がとち狂ったとでも思われる危険性すらある。適当なことを言って誤魔化しとこう。
「なんて本かは忘れたけど、とある小説に『必要の部屋』が出てきたんだよね。部屋がある廊下で、心の中で強くその部屋を必要とした時にしか現れないっていう仕組みで、そこから引用したんだ。なんて名前の本だっけな。面白かったからリベルトにもお勧めしたかったんだけど」
完全に嘘をつくのは忍びないので、本当のことをいくらか混ぜて説明した。嘘の一部に真実を入れると信じられやすいって聞いたことがあるし、これで疑ったりはしないだろう。
「ふーん、そんな本があったんだね。もし名前を思い出したら、真っ先に教えてよ」
リベルトのために思い出すことはもう無いだろうが、表面上は取り繕わないと。
「うん、頑張って思い出してみるよ。それで、さっきの話の続きなんだけどさ・・・・・・」
この話は終わりにして、俺は中断していた話題の続きを喋り始めた。
あまり友人に嘘をつくことはしたくなかったが、いつか伝えるつもりだから、その時は許してくれ。




