第42話 犯人
俺たちがパスタを食べ終えると、すぐにコーヒーが運ばれてきた。
「失礼します、こちらご注文のコーヒーです。それでは、ごゆるりとお楽しみください」
店員さんは、丁寧にコーヒーを置いてその横にミルクと砂糖を置いた。
この世界の食文化は、やはり日本に似通っている。せ
前世でよく見た料理が金さえ出せば至る所で食べることができて、その味もほぼ前世で食べたものが再現されている。
一体、どうしてここまで料理が広まっているのだろう。
前世のどこかで聞いた話だが、食事を楽しむ文化は日本で発展して、中世ヨーロッパの食事は豪華に、贅沢なものを追求していたらしい。
中世ヨーロッパに似ているこの世界で、こんな食事が広まったのには、やはり過去に俺と同じような転生者がいたのだろうか。
そうだとしたら、色々納得がいく。
どのくらい昔かは知らないが、おそらく昔の転生者が知識チートと俺TUEEEをしたんだろう。じゃないとじゃないとここまで文化が似るわけない。
そんな事を考えながらコーヒーを啜っていると、ミューが話しかけてきた。
「リオン、例の噂についてなんだけど、私が1人で調べてみて犯人が分かったの」
なんだと?噂を流した犯人がわかったのか。
「ほんとに!?早く教えてよ。一体誰なの?」
早く犯人を知りたくて、俺はミューに早く教えるよう急かした。
「まあ、そんなに焦らないで。そいつがこの場にいるわけでもないし、貴方に抜け駆けされたくないもの」
ミューは、俺を宥めるように言った。
ミューもそいつの被害者で、朝に制裁を与えたいとか言っていたな。それなら、俺がここで焦る必要は全くないのか。
「まず、私は昼休憩の時に貴方やリベルトから考えを聞いて、それを参考に聞き込みをしてみたの。白金クラスの女子で、金2クラスに知り合いがいる子を聞いて回って、見つけたわ。その後、その子に紹介してもらって、金2クラスに条件に合う男子がいるかを聞いてみたの。私はその時、話を聞くために金2クラスへ足を運んでいたのだけれど、答えを聞く前に、ネタバラシを喰らっちゃったの」
ネタバラシ?いったい何があったんだ。
「犯人の男子が私のところへズカズカと歩いてきて、気味の悪い笑みを浮かべながら、『おやおや、ミュレイちゃんじゃないか。俺に会いたかったんだね。リオンから逃げてきたんだろう?』って私に喋りかけてきたの。咄嗟に、『喋りかけんなゴミが。魔法で骨まで残らないように焼き尽くしてやろうか』と暴言を吐いちゃってね。相手は豆鉄砲喰らった鳩みたいな顔をしていたわ」
いや、涼しい顔してなんで暴言を吐いてるんだ。ミューって、本気でキレたらこんなこと言うんだな。怒らせないようにしないと。
「その後すぐ、失言したことに気づいて、私は前言撤回したの。でも、それがあいつを調子に乗らせたのかこんなことまで言ってきたの。『い、今のはあのクソリオンに対して言ったんだよね。君の婚約者は僕であるべきなんだから、あいつは苦しめてやらないと気が治らないよ』だなんて、私とリオンのことを舐め腐ってるとしか思えないわ」
うぉ、少しというか、かなりキモいな。ミューから聞いたそいつの言動を分析した限り、動機はミューと婚約したくて・・・とかだろうな。
「挙げ句の果てには、私の身体中を舐め回すように見て、『俺好みの体に育ててあげないとね』なんて言うものだから、あまりのキモさに、顔面に魔法を投げて、教室へ逃げ帰っちゃったの。途中で帰っちゃった物だから、申し訳なくて彼女には謝ったのだけれど、あれは生理的に無理だったわ」
変態って本当にいるんだな。俺の持ちいる語彙を総動員したとしても、それを形容することは不可能だ。
最も強い言葉で非難する。
「で、その時は名前を聞きそびれちゃったからあいつの名前を聞いたんだけど、デブリ・ピッグというらしいわ。侯爵家の長男で、かなり甘やかされているそうよ」
デブリ・ピッグか。豚のような、いや完全にこの名前は豚だな。
「もう少し詳しく話を聞いてみたら、至る所で嘘の噂を吹聴しているらしいの。リオンは俺からミュレイを奪ったーとか、彼女に釣り合うのは俺しかいないってね。そんなわけないじゃない。少なくとも、あいつが私に釣り合うことなんてあり得ないけどね」
かなり好き勝手しているみたいだな。そのデブリって奴のせいでかなり迷惑をかけられているんだ。何発か殴っても許されるんじゃないか?
「調べてくれてありがとうね、ミュー。お疲れ様。そんなキモい奴に絡まれて、残念だったね。やっぱりそういう奴は一度痛い目を見ないとわからないだろうし、一発殴ってやろう」
俺は、ミューを労うために、頭を撫でた。労ってもらえて嬉しかったのかミューは満面の笑みを浮かべて、とても機嫌が良くなった。
うんうん、喜んでもらえてよかった。
「そうね、リオン。決行は明日の昼休憩の時間。リベルトと、私が有志を2人ほど募っているから、奴をとっちめましょ」
仕事が早いな。昼に俺がリベルトと話していたことを汲んで、準備までしてくれたのか。
「ありがとう、そこまでしてくれてるんだね。借りが一個増えちゃったよ」
「それなら、もう一つ私に奢ってくれないかしら。パンケーキを食べたいわ」
この恩がパンケーキで返せるのなら、喜んで奢ろう。
「店員さん、すいません。パンケーキを一つお願いします」
丁度近くに店員が通りかかったため、俺はパンケーキを注文した。
「パンケーキを、追加注文ですね。了解です、しばらくお待ちください」
店員さんは快く注文を聞き入れ、それを伝えに行った。




