第41話 デート
5限目の授業が終わり、解放されたと思っていると、何故かブライア先生が教室へやってきた。
「みなさん、授業が終わってもう終わりだと思っていたところすいませんが、今からHRを行います。席に着いてください」
HR・・・終礼みたいなものか?できれば、事前に言ってもらいたかったな。そうしたら、ぬか喜びせずに済んだのに。
幸い、授業が終わって数十秒しか立っていなかったので1人2人しか席を立っておらず、すぐにHRは始まった。
「すいません、放課の前にHRがあることを伝え忘れていました。すぐに終わるので、許してください」
なるほど、伝達ミスだったのか。すぐに終わるらしいので、俺は先生の話に耳を傾けた。
「連絡事項です。明日の時間割は1限目魔術理論、2限目杖術基礎、3限目は薬学基礎。4限目は天文学、5限目は体術です。4限目の天文学は最初の授業なのでレクリエーションですが、他の授業は教材が必要ですので、準備してください。最後に、このHRの時間は毎日このタイミングで行われて連絡事項などを伝えるので、お願いします」
明日の時間割と、準備する物が伝えられた。
1から3限目は今日授業を受けた教科だ。
4限目は天文学。名前から星を眺めたりするのだろうと予想が立てられるが、そこまででどんな授業か想像があまりつかない。逆に楽しみだな。
「これで、HRは終わりです。では、みなさんさようなら」
そう言って先生は教室から出て行った。
HRが終わり、今度こそ放課だ。俺はリベルトとミューをどこか遊びへ誘おうかと思い、席を立ちリベルトのところへ歩いた。
「やあリベルト。今日はもう放課になったけど、どこかに遊びに行かない?ミューも誘うつもりではあるんだけど」
俺はリベルトを遊びに誘った。最初の二言目まではリベルトは笑顔だったが、ミューを誘うつもりであることを伝えると、なぜか申し訳なさそうな顔をしてこう言った。
「ごめんよリオン君。実は、今日はこれから用事があるんだ。残念だけど、また今度誘ってよ。ミュレイ嬢と楽しんできてね」
途中から態度が変わったことに少し不信感を抱きながら、こう返事した。
「用事があるのなら仕方ないね。また今度誘うよ。ごめんね」
用事があって遊べないのなら、仕方がない。ミューだけ誘うことにするか。
リベルトには振られてしまったため、今度はミューを誘いにやってきた。
ミューは友達らしき女子と話していたのだが、俺が近くに来たタイミングで丁度話を終わって解散した。
ちょうど良いため、俺はそのタイミングを逃さずミューに話しかけた。
「ミュー、ちょっといいかな?」
俺が声をかけると、ミューはビクッと驚いたようなリアクションをして、こちらへ返事した。
「ど、どうしたの?リオン。ていうか、体術の授業であんなことして、よくもまあ平気に声をかけられるわね」
ミューからの目が冷たく感じる。
「いや、あれは仕方ないでしょ。先生に指示されて仕方なくやったんだよ俺も。ミューも、そうだったんだろ?」
そうだ、俺は悪くない。先生が、俺たちに指示して密着させたから起こった事故なんだ。
「だとしても、貴方から体に密着されたことに、私は胃が削られたわ。お詫びとして、何か奢りなさいよ」
お詫びって。別に、そんな事言わなくてもこっちから遊びに誘うんだから奢るつもりなんだけど。
「それなら、この前寄ったカフェに行く?あそこで何か食べながら話をしようよ」
俺の提案に、ミューは目を輝かせてテンションを上げた。
「いいじゃない!あそこのパスタとコーヒーはとても美味しかったからもう一度行きたいと思っていたのよ。そうしたら、早くいきましょ!」
物凄い食いつきの速さで俺の誘いに乗ったミューは、急に椅子を立ち上がり、俺に呼びかけた。
「いや、切り替え早すぎない?喜んで一緒に行ってくれるのは嬉しいけど、テンションが上がりすぎてギャップで風邪をひきそうだよ」
ミューがとても積極的なので、早速俺達はカフェに向かった。
◆◇◆◇◆◇
「すいません、パスタとコーヒーを二つお願いします」
俺たちはカフェにやってきた。
適当に2人で座れそうな席を探して席に着くと、俺は早速料理を注文した。
「パスタとコーヒーを二つずつですね。コーヒーは食後で大丈夫ですか?」
店員さんは注文を復唱して確認すると、コーヒーを食後に持ってくるか聞いてきた。
丁度いいな。食後の方がミューとゆったり話したりもできる。
「はい、お願いします」
「了解いたしました。では、しばらくお待ちください」
肯定の意を込めて返すと、店員さんは了解と言って、その場を去っていった。
「ねえリオン。今更だけど、本当に奢られていいの?冗談で言ったつもりだったんだけど、嫌なら私も払うわよ?」
食事を待っていると、ミューがそんな事を聞いてきた。
「大丈夫だよ。僕から誘ったんだし、ミューに言われなくても奢るつもりだったから、気にしないで奢られてよ」
冗談だということは分かっていたが、俺にもプライドがある。金に余裕があるのなら、割り勘ではなく奢りたいのだ。
「そう、それならこれ以上ゴネても仕方ないわね。大人しく奢られるわ」
そうされてくれ。
そういえば、今日から授業が始まったな。何に興味が湧いたか聞いてみよう。
「ミュー、今日から授業が始まったけど、どれが一番興味を引かれた?」
俺が話題を出すと、ミューはそれに食いついた。
「そうね、今日あった授業の中からだと、魔術理論と杖術かしらね。魔術理論は、やっぱり魔法のレパートリーが一気に増えそうだから楽しみだわ。今日の授業だけでも、気になることが出てきたもの。杖術は、魔力の効率を上げて、魔法の威力を上げてくれることが、気になるわ。極めれば、さらに私の火力が上がりそうだもの。授業は一言一句聞き漏らせそうにないわね」
なるほど、杖術と魔術理論か。
「ミューらしいね。俺も、この二つが興味を引いたよ。魔術理論はミューと同じような理由だけど、杖術は少し違うね。俺は、色んな属性の魔力変換効率を上げてさらに色んなことができるようになりそうだから、杖術が気になってるんだ」
互いに、考え方が近くて面白いな。
俺たちは、さらにそこから今日の授業について話し出した。
「失礼します、ご注文のパスタです」
しばらくそういって話していると、ついに料理が届いた。店員さんは、そう言って俺とミューの前にパスタを置いた。
これを見るのは2度目だが、やっぱり美味しそうだな。
「「いただきます」」
料理が届いて、俺たちは早速パスタを食べ始めた。
このカフェのパスタは、ソースの味が濃すぎず薄すぎず、丁度良い。しかも、麺はとてももっちりとしてて最高だ。
こんなにも料理が美味しいというのに、このカフェは以外にも客が少ない。
50席ほどあるうち、埋まっているのは10ほど。その顔触れは前回来た時とあまり変わっていない。
「もしかしたら、俺たちは隠れた名店を見つけ当てたのかもね。全然隠れていないけど」
俺はパスタを食べながらミューに言った。
すると、ミューは口に含んでいた麺を飲み込んで反応した。
「そうかもね。私も、ここのお客さんが少ないのは不思議に思っていたのよ。隠れた名店なら、納得ね。けれど、ここは大通りに面したカフェよ?どうして少ないのかしら」
「さあ?王都の七不思議の一つに数えられてもおかしくはなさそうかもね」
本当に、どうして人が少ないのだろう。こんなに美味しいのに。
「ななふしぎ?それはよく分からないけど、言いたいことは伝わるわ。人が多かったら席に座れなかったかもしれないのだし、ここを見つけられて運が良かったわね」
その通りだ。
雑談しながら食べ進め、パスタを食べ終わるとすぐにコーヒーが届いた。




