第38話 腕相撲大会
先生が指示を出すと、俺達は男女別に分かれて集団を作り、男子は円を組むように並んだ。
「なあ、皆んな。誰が代表だといいと思う?」
全員が並び終わると、一人の赤髪の男子が話を切り出した。
「よくわかんないし、面倒だから次席のリオンで良くない?」
「腕相撲で優勝した人を代表にしようよ」
「投票で決めたらどうかな?」
話を切り出した瞬間を皮切りに、沢山の意見が波のように溢れ出した。
それはいい案だったり、何も考えていないことが丸わかりな愚案だったりで玉石混交していた。
「ごめん、僕の言い方が悪かったよ。一人づつ教えてくれない?」
一度に20人近くの人数の発する言葉を聞き分けて、それぞれにリアクションをするなんて、聖徳太子にも無理だろう。それを味合わされた赤髪の男子は、早々に音を上げて聞き方を変えた。
「じゃあ、僕から言ってもいいかな?僕は、投票で代表を決めたらいいと思うよ。どうだろう?」
誰から言い出すか、と言う地獄のような雰囲気のなか、いい意味で空気の読めない勇者が現れて自分の意見を言った。
その案は平凡of平凡。10人から聞いたら7人は同じ返しをしてくるような内容だった。
「よし、今の意見を採用するか、多数決をとろう。賛成の人は手を挙げて」
彼の意見を採用するか多数決を取ると、12人が賛成を示した。
これでいいんじゃないかと思ったが、この後にもっといい案が出るかも、ということで保留にし、何も出なかった時は彼の意見を使うことになって次へ進んだ。
「じゃあ、彼から時計回りに教えてもらおうかな。次、いい?」
赤髪男子が司会を務めるようで、彼は次の人に話を聞きはじめた。
しばらく話を聞いたが、なかなかいい案が出てこない。何番煎じかもわからなくなるような同じ意見から、そもそも思考を放棄したものまで。
最初の意見を採用することになるのかな・・・・・・と思いながら、俺の隣にいる人の意見を聞いた。
「俺は、腕相撲で一番を決めたらどうかなと思う。簡単に決められるし、どうかな?」
腕相撲か・・・腕相撲・・・めっちゃいい案じゃないか!こんな意見はまだ出ていなかったので、革新的だ。
「そしたら、多数決をとるよ。みんな手をあげて」
赤髪男子が多数決をとった。
勿論俺は賛成ということで手を挙げた。俺が周りを見渡すと、パッと見で過半数を超えている。この案が採用されそうな気がするな。
「ひぃふぅみぃよぉ・・・・・・16か。さっきの投票する意見を超えたね。どうする?まだ、あと3人喋ってないけどこれでいい?」
そういえば、俺とリベルト、そして青髪の男子がまだだったな。
「俺は、今の意見に賛成だよ。同じような案を出すつもりだったし、それにそこまで拘りは無い。リベルトはどう?」
質問に応えて、今度は俺がリベルトに聞いた。リベルトの意見は俺も知らないからな。聞いておかないと。
「僕も大丈夫だよ。考えていることはあったけど、今の意見の方がいいね」
青髪の男子にも話を振ったが、こちらも異論は無いらしい。
と言うことで、早速腕相撲大会の開始だ。
「よし、じゃあ適当に二人組を作って、腕相撲をして。それで、勝った人は他の勝った人とまた腕相撲をして、一番を決めよう」
そういうことになったので、俺は近くにいた男子の一人と適当に選んでペアを組んだ。
「じゃあ、一回戦。3、2、1、スタート!」
互いの手を握り、合図と同時に俺は相手の手を握る自分の手に力を入れた。
魔力操作に気合いを入れて身体強化を最大限に活用する。さあ、いざ勝負と思って相手の腕を倒そうとすると、多少の抵抗こそあれどスルスルと相手の腕が倒れていった。
その調子で腕を倒していくと、勝つ事ができた。
接戦でもう少し時間がかかるかと思っていたのに、少し残念だ。
どうやら俺が一番最初に勝ったようで、数秒後くらい経ってから、ちらほらと勝った人が出始めた。
「よし、一回戦終わったね?じゃあ、次二回戦に行こう。2人1組を作って〜」
2人1組・・・うっ、頭が。なんて、前世では友達がいたのでこれにトラウマなんてない。
リベルトは無事勝ったようで後で戦えるのを楽しみにしながらペアを組んだ。
「3、2、1、スタート!」
合図でまた腕相撲を始めた。さっきと同じムーブをかましてまたもや勝利。
三回線、四回戦と順調に勝ち進んでいき、遂に決勝戦。
お互いあからさまに戦うことを避けていたことにより、最後に残っていたのは俺とリベルトだ。
「やあリオン君、やっぱり君も最後まで残っていたか。ここで勝った方が男子の代表になる。それもあるけど、昨日の借り、今から返させてもらうよ」
リベルトはとても気合十分なようだ。勿論俺もやる気に満ちており、早く腕相撲をしたい気分だ。
俺たちは互いの右手を握り、位置についた。
4回も繰り返してもはやルーティンと化した作業を行い、準備万端。
「双方、準備は大丈夫?」
赤髪が確認をして俺とリベルトは頷き、赤髪はカウントダウンを始めた。
「始めるよ・・・3、2、1、スタート!」
その合図と同時に自分の握る拳に力を込めて、体重をかけた。
リベルトの力も強く中々押し切ることは難しいが、身体強化による馬力は俺の方が高い。
身体強化の差によって少しずつ押していき、ついに倒し切ることに成功した。
「よしっ!勝ったぞ!」
リベルトに腕相撲で勝つ事ができた。苦戦はしなかったが、接戦であったと言えるのではなかろうか。
俺が勝ったのを確認すると、赤髪はすぐに先生に代表が決まったことを伝えた。
「そうか、男子の代表も決まったのだな。女子はもうとっくに決まっているからでは代表のリオン君とミュレイ君は前に出てくれ」
女子の代表はミュレイだったのか。不思議では無いが、どのように決めたのか少し気になるな。あとで聞いてみようか。
そうして、俺とミューは前に出た。




