第36話 新たな噂
「そうだ、リオン。今から一緒に本でも読まない?そして、読み終わったらお互いに共有しましょ(小声)」
ミューをやっとこさ捕まえて話していると、ミューがこんな提案をしてきた。
「でも、リベルトと合流するまであと10分しかないよ。その短い時間で読めそうな本を探そうか(小声)」
ミューの提案は嬉しいが、残念なことにリベルトとの約束の時間まで10分しか残っていない。
俺が早速本を探そうと歩き出すと、ミューが引き止めてきた。
「別に、今読み切らなくても良いんじゃないの?本は2週間貸し出してもらえるらしいし、放課後も読めるような本を借りた方が良いと思うのだけれど(小声)」
確かに!
本を借りるという発想が頭から完全に抜け落ちていた。
前世では良く学校の図書館で本を借りて家で読んでいたが、こちらでも同じようなことができるとは。
貸した本が返ってこないとかで無理だと勝手に思っていたが、それは革命だな。
「じゃあ、適当に好きな本を選んで借りようか(小声)」
「もちろんそうするつもりよ。ほら、早く探しましょうよ。時間がないんでしょう?(小声)」
早く本を読みたいのか、ミューがこちらを急かしてくる。
「そうだね。じゃあ行こうか(小声)」
図書館の案内によると2階は小説が置かれているらしい。
そう言って、俺も少しウキウキしながら本を探し始めた。
◆◇◆◇◆◇
「おっ、あの本面白そうだな」
本棚を眺めていると、一つの本が俺の目を引いた。
そのタイトルは俺の興味を誘い、俺はそれに向かって手を伸ばした。
「「あっ」」
俺が手を伸ばすと、同じ本を取ろうとしていたのか、隣にいた人と手が当たってしまった。
「ごめん、手が当たっちゃって」
相手を確認するより先に、俺は謝った。
「いえ、全然。こちらもすいません・・・・・・って、リオン君じゃない。貴方、本とか読むのね」
相手の方を見ると、そこにはウェーブのかかった長い銀髪をしたロリがいた。
「なによ。失礼なこと考えてない?」
心の中が読めるのか?まずい
「何がまずいの?言ってみなさい」
何処かでみたようなやり取りだな。取り敢えず、話をずらそう
「リースこそ、俺のことをなんだと思ってるんだ?これでも入試次席なんだけど」
そっちも、ていうかそちらの方が先に、直接的に言ってきたんだ。こちらが心の中で思うくらい、別にいいだろう。
「次席次席って、私はミュレイちゃんに負けましたーって、誇りに思ってるわけ?いや、わざわざ覚えてるあたりほんとに自慢に思ってそうね。そんなものよりね、肩書きの方が大事なの。私、聖女よ?貴方より全然偉いのよ?」
くぉんのメスガキが。なんでこんなに煽り性能高いんだよ。ガラスのハートがバキバキになっちゃったじゃないか。
「折角美少女と本棚で手が当たって、ここからラブロマンスが始まるのかと思っていたらこれかよ。ヒロインより最近流行りの悪役令嬢の方が似合ってるね」
「あら、貴方婚約者がいる身でそんな事言ってもいいのかしら?それとも、貴方は世紀の大詐欺師で、私たちは騙されていたのかしら。これだと、噂も本当だったのかもね」
リースは、俺と同じ白金クラスに所属している自称聖女だ。
どうやら俺が王都に来た初日に出会った、教会にいた少女のようだが、あの態度は猫を被ったものでこちらが素の状態らしい。
彼女とは、今朝俺が話しかけた時にいざこざがあってずっとこの調子なのである。
「これじゃ、次席のリオンは三席のリベルトよりも魔法が弱いって噂も本当なのかもしれないわね」
俺がリベルトよりも弱い?何を言ってるんだ。昨日の俺達の撃ち合いの結果を知らないのか?
「ちょっと待って、それどういうことだよ。俺がリベルトよりも弱いって?何処からそんな噂が」
リースに確認すると、こんなことを言われた。
「何処から出てきたかは知らないですけど、2年生の先輩が言っていたらしいわよ。次席の魔法の威力は三席よりも低いって」
先輩が?どの先輩かは分からないが、十中八九俺とリベルトの撃ち合いを見ていたのだろう。
確かに、リベルトの魔法の威力は高かった。だが、リベルトものはその属性に特化した結果ついてきたもので、俺のは全体的に強化した結果だ。
そもそものやり方が違うのに、比較のしようがないだろう。
先ず、本当に先輩はそう言ったのか?言ったとしても、その後に何かしらの言葉が続いていたはずだ。
「先輩が本当に言ったのか?誰かの嘘じゃなくて」
再びリースに聞くと、意外な言葉が返ってきた。
「私の友達が聞いていたわよ?誰が言ったのか特定して、本人に聞いていたの。私はその場にいなかったけれど、確かに『そう言った』と言っていたらしいわ」
まじか。それだったら後者かな?ほんと噂からは悪意しか感じないな。
「でも、その後に『でも、五つの基礎属性を同じ威力で使っていたから次席の方が実力は上だ』って言っていたらしいわ」
なるほど。犯人は前半だけを切り抜いて、俺がリベルトより弱いと解釈したように言ったみたいだな。
「それは誰から聞いたんだ?」
少しでも情報を聞きざしたかったのでリースに聞くと、彼女は素直に答えた。
「男子よ。たしか、金2クラスだったかしら。自分でリオンの名前を口にするたび、顔を顰めていたわね。まあ気持ちはわかるわ」
一言余計だ。
しかし、かなり有益な情報を得られたのではなかろうか。犯人は金2クラスであることがほぼ確定。
それに、その男子は俺の名前を言うたびに苦い顔をしたのだから、そいつが犯人、もしくはそれに準ずるものであることは間違いないだろう。
「ありがとう。助かったよ」
「あら、素直じゃない。そう言うのは嫌いじゃないわよ」
別にリースに好かれてもどうでもいいんだよなぁ・・・と思いながら本を手に取りその場を去ろうとすると、人影が現れた。
「こら!貴方達、静かになさい!ここは図書館です。死後は慎みなさい!それに、そこの男子。今日だけで2度目ですよ!気を付けて!」
怒られてしまった。今回も同様に俺に非があるので口答えもせずに説教を受けた。
ただ、ちょうどいい機会だと思ったので相手を観察しながら説教を受けた。
「〜ですので、図書館で騒ぐことはやめて下さい。私はもう帰りますが、また騒がしくしたら来ますからね」
しばらくして、説教に満足したのかそれは消えていった。




