第32話 授業
クラスメイト達と話したりしていると、教室の扉がガラガラと音を立てて開いた。
突然のことに全員がそこに注目し、教室は一瞬にして静かになった。
そこには、一人の女性が立っていて教室の中を見渡していた。
その女性は、俺たちの着ている制服とはまた違った服装をしていて、片手にはファイルのようなもの、そしてその腰には棒のようなものが刺さっていた。
「あら、ついさっきまで楽しそうな声が聞こえていたのに、静かになりましたね。それでは、皆さん席についてください、HRを始めますよ。席は、それぞれ好きな場所に座って構いませんから」
その掛け声で、俺たちは蜘蛛の子を散らすように教室の中で散らばった。
仲のいい相手と隣の席に座ったり、それぞれ座りたい席を決める為、交渉したりしながら全員が大人しく座るまで、10分ほど経った。
「はい、皆さんが大人しくなるまで10分かかりました。なんて、時代遅れなことは言いませんよ。皆喧嘩せずに席を決められたようで、安心しました。時間がかかるかも、と思って早めに教室に来て良かったです。丁度、HRを始める予定の時間になりましたし」
その先生?は前世でいう一昔前の教師みたいなことを言ったかと思うと、すぐにそれを否定した。
「みなさん、初めまして。私はユーリ・ブライアと言います。貴方達白金クラスの面倒を見る為、担任教師となりました。よろしくお願いします」
やっぱり。さっき教室に入ってきてHRを始めると言った段階で少し察したが、この人が俺たちの担任なのか。
ブライア先生は、その口調や物腰は穏やかなものの、その瞳の奥には確かな気迫が宿っている。
このクラスの民度が良いのか、それとも先生の言葉がそうさせたのか、俺を含むクラスメイト達は皆話を聞く態度をすぐに整えた。
「先ず、今日のこれからの予定を伝えますね。HRを終えた後、10分の準備を挟んで1限目の授業が行われます。教科は杖術基礎、内容は簡単なレクリエーションなので、特に準備する必要はありません。そして、また10分の準備を挟んで2限目の授業、薬学基礎が行われます。これも同様に授業はレクリエーションが行われるので、必要な物はありません。どれも、学校が始まって最初の日なのでほぼ全ての授業の内容がレクリエーションになります。ですから、準備の時間はクラスメイトと仲を深める良い時間になりますよ」
今日の授業はレクリエーションなのか。教材を準備する手間が省けるからいいな。
「3限目は魔術理論、教科担当は私です。3限目が終わると、昼休憩の時間になります。お昼ごはんを食べたり、友達と喋ってたりする時間で、1時間ほどあります。」
昼休みは3限目の後なのか。1時間は、前世と比べると少し長いな。
「その後は4限目です。教科は体術で、他の教科は教室で授業が行われるのですが、この教科は他と違い、訓練棟で行われます。集合場所は訓練棟の2階、体術用アリーナで行われます。場所がわからない人は、そこに貼られている校内地図を見るか、昨日配られたパンフレットから確認するといいですよ」
体術用アリーナとやらの場所はわからないが、訓練棟なら昨日使ったので場所がわかる。
昨日、待ち時間中に訓練棟の中の地図が貼られていたのを見たので、訓練棟に行った後確認した方がいいかもな。
「5限目は魔道具理論の授業があります。教室で行われるので、10分の間に移動するのは大変だと思いますが、気を付けてください」
1日5時間授業しかないのか。
カリキュラムどころか学ぶことが全く違うので比較するべきではないのかもしれないが、短くて嬉しいな。
「これでHRは終わりです。少し早めに終わりましたが、13分後の9:20から授業が始まるので、それまでには席についておくようにしてくださいね」
そうして、HRは終わった。
特に挨拶などもしないで先生は教室を去り、俺たちは先ほどの騒がしさを取り戻した。
そして、しばらくすると今度は男性の教師が教室へやってきた。
その先生は初老の、この世界では珍しい茶髪で、さらにはところどころに白髪が混ざっていた。
「では、皆さん席についてください。もうそろそろ授業を始めますよ」
授業の始まる5分前になるとその先生は俺たちに着席するよう促した。
それを聞いてクラスメイトたちは続々と自分の席に座りはじめ、授業の始まる1分前には、既に全員着席し終わり授業がいつ始まってもいい状態になっていた。
「皆さん、素晴らしいですね。さっきHRをしていたクラスでは指示をしても中々従ってくれなくて、困ったんですよ。叱ろうにも、言い過ぎたらこちらが怒られるので、たしなめる程度しか出来なかったんですよ」
どうやら、さっきまでHRをしていたクラスでは生徒が中々いうことを聞かなかったようだ。
叱ろうにも、言葉づかいに気を配らないと先生が悪者になってしまうので、なかなか叱れず全員が座るまでかなりの時間を要したらしい。
3分くらい先生の愚痴を聞いて、授業が始まった。
「皆さん、杖というものを知っていますか?」
授業は、先生の問いかけから始まった。
「杖とは、我々が魔法を使う時に、快適に使う為補助してくれる道具です。この杖術の授業では、この杖の使い方について皆さんに教えていきます」
先生は、説明をしながら何本か杖を取り出して、俺たちに見せながら説明してくれた。
「杖がどのように私達の魔法を補助してくれるのか、貴方達はまだ知らないでしょう。これを今から簡単に説明する為に、先ずは杖はどのように使うものかというのを簡単に教えましょう」
先生は説明のために持っていた杖を教卓に置き、腰に刺していた杖を抜いた。
「杖は、このように使います」
そう言うと、先生は杖を振り、魔法陣を展開した。
「実は、杖を使うために振る必要はありません。しかし、皆さんに実演して見せるときは、わざと杖を振って杖を使っていることを分かりやすくするので、理解しておいてください」
杖を振る必要はないのか。
いろんな魔法を使う作品では、杖をブンブン振り回して使っているイメージがあったから、少し意外だな。
「まあ、よく杖を振って魔法を使いたいと言う人も出てくるので、したい人はどうぞ、止めませんよ」
そう言って先生は魔法を発動した。さっき見えた魔法陣から、おそらく注ぐ魔力量によって威力が変化する類の魔法のようだ。
「今、私が使ったのは込められた魔力の量で威力が左右される魔法です。これをようく見て、どのくらいの魔力量で、このくらいの威力になったのか、覚えていてください。それでは、この魔法を消して杖を使わなかった状態で魔法を使います」
そう言うと先生は杖をまた腰に差した。
先生が杖を使わないで魔法を使うと、その魔法の威力は目に見えて減衰した。
注がれている魔力の量は先程とほとんど変わらず、なんなら微妙に多いくらいだ。
杖の性能に驚いていると、先生は魔法を消して話し始めた。
「どうでしたか?杖を使った時と使わなかった時の違いに、驚いたでしょう。この授業では、杖の扱い方などを教えて聞くので、よろしくお願いします」
その後は色々先生に質問したりで、時間を潰して授業を終えた。




