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第12話 守りたいもの

村中に警鐘が鳴り響く。


鐘の音は止まることなく、人々の表情から余裕を奪っていった。


ゼクス「全員、防壁へ向かえ! 子どもと老人は地下避難所へ!」


村人たちは慌ただしく動き始める。


蓮も短剣を握り締め、西門へと走った。


門の上へ登ると、思わず息をのむ。


蓮「……なんだよ、あの数」


森の奥から黒い影が次々と姿を現していた。


狼型の魔物。


角を生やした猪。


巨大な蜘蛛。


そして、その群れの中央には、一際大きな魔物がゆっくりと歩いている。


アイリス「スタンピード……」


蓮「スタンピード?」


アイリス「魔物が群れで襲ってくる現象。この規模なんて何年ぶりか分からない」


ゼクスが門の上へ姿を現す。


ゼクス「村の防壁だけでは十分も持たん」


蓮「十分……」


ゼクス「その間に避難を終わらせる。それまで何としても時間を稼ぐ」


蓮は巨大な魔物を見る。


あいつさえ倒せば終わる。


そんな甘い相手には見えなかった。


門の外で大地が震える。


魔物たちが一斉に走り始めた。


アイリス「来る!」


無数の矢が空を舞う。


何体もの魔物が倒れる。


それでも群れは止まらない。


蓮「くそっ!」


門を飛び越え、外へ飛び出した。


アイリス「蓮!」


蓮「門の前で食い止める!」


狼型の魔物が飛びかかる。


蓮は身をひねり、短剣で喉を斬り裂いた。


続けて二体。


三体。


以前なら考えられない動きだった。


それでも数が多すぎる。


肩を爪で裂かれる。


背中を牙がかすめる。


蓮「まだだ!」


その時だった。


巨大な魔物が咆哮する。


耳をつんざく轟音。


周囲の魔物たちが一斉に蓮へ向きを変えた。


アイリス「まずい!」


蓮「俺を狙ってる……?」


巨大な魔物は蓮だけを見ていた。


まるで最初から標的が決まっていたように。


蓮(なんで俺なんだ……)


次の瞬間。


頭の中で、また声が響いた。


『逃げろ』


蓮「……!」


あの記憶の青年の声だった。


『今は勝てない』


『死ぬぞ』


蓮は思わず頭を押さえる。


アイリス「蓮!!」


巨大な魔物が跳んだ。


避けきれない。


そう思った瞬間。


一人の兵士が蓮を突き飛ばした。


ドゴォッ!!


兵士の身体が巨大な爪で吹き飛ばされる。


蓮「……っ!」


兵士「に、逃げろ……!」


血を吐きながら倒れる兵士。


蓮は目を見開いた。


自分じゃない。


誰かが、自分の代わりに傷ついた。


蓮「なんでだよ……!」


兵士「お前は……希望なんだ……」


その言葉を最後に、兵士は動かなくなった。


蓮の身体が震える。


怒りか。


悲しみか。


それとも――


巨大な魔物が再び咆哮した。


その赤い瞳は、なおも蓮だけを見つめ続けている。


蓮「……絶対に」


短剣を握る手に力が入る。


蓮「絶対に、お前だけは倒す」


その瞬間。


巨大な魔物の額に、見覚えのない黒い紋章が浮かび上がった。


塔で見た赤い球体と、どこか似た禍々しい紋章だった。


蓮「……あれは、一体何なんだ」


戦場の空気が、一変する。


まるで、この戦いそのものが誰かに仕組まれていたかのように。

第12話を読んでくれてありがとう。


今回は、蓮が「誰かを守る」という戦いの厳しさを突きつけられる回でした。


自分が傷つくことよりも、自分の代わりに誰かが命を落とすことの方が、蓮には重くのしかかります。


そして最後に現れた、巨大な魔物の額に刻まれた黒い紋章。


それは偶然ではありません。


次回、第13話では、蓮が初めて"勝つためではなく、生き残るための選択"を迫られます。


ぜひ続きも読んでいただけると嬉しいです。

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