第11話 死が残した傷跡
森を抜けて村へ戻る道中。
蓮は何度も足を止めていた。
アイリス「大丈夫?」
蓮「……平気、だ」
そう答えた直後だった。
頭の奥に、激しい痛みが走る。
蓮「ぐっ……!」
膝をつき、地面に手をつく。
その瞬間――
目の前に、見覚えのない景色が広がった。
燃え盛る城。
叫び声。
剣を振るう男。
そして、血だらけになりながら笑う青年。
『まだ……終われない』
『あと一回だけだ』
『あと一回死ねば……みんなを守れる』
蓮「……誰だ」
その青年が振り返る。
しかし顔だけが黒く塗り潰され、何も見えない。
次の瞬間。
視界は元に戻っていた。
アイリス「蓮!」
蓮は肩で息をしながら立ち上がる。
蓮「今……誰かの記憶を見た」
アイリス「記憶?」
蓮「俺のじゃない。知らない景色だった」
アイリスは黙り込む。
塔で聞いた言葉が頭をよぎっていた。
『死と引き換えに積み上げた記録』
アイリス「……塔のせいかもしれない」
蓮「塔?」
アイリス「死を繰り返した人の記録が、あんたの中に流れ込んでる可能性がある」
蓮「そんなこと……」
アイリス「分からない。でも、あんたの顔色が悪すぎる」
蓮は拳を握る。
死ねば強くなる。
その代わりに、何かが少しずつ自分の中へ入り込んできている。
そんな嫌な感覚が消えなかった。
そのときだった。
村の鐘が激しく鳴り響く。
カン、カン、カン――!
アイリス「警鐘!?」
村の入口から男が走ってくる。
村人「魔物だ!! 西門から大量に来るぞ!!」
一瞬で村の空気が変わる。
大人たちは武器を持ち、子どもたちは家の中へ避難していく。
蓮「数は!」
村人「三十……いや、それ以上だ!」
アイリス「そんな数、この村じゃ止められない……!」
ゼクスも広場へ姿を現した。
ゼクス「蓮!」
蓮「分かってる!」
短剣を握る。
だが頭の奥では、さっきの青年の声が何度も響いていた。
『あと一回だけ』
『あと一回死ねば』
蓮「……違う」
小さく首を振る。
蓮「俺は……俺だ」
その言葉で記憶は静かになった。
アイリスはそんな蓮を見て、小さく息を吐く。
アイリス「戻ってきたね」
蓮「ああ。今回は――」
短剣を構える。
蓮「死なずに守る」
西門の向こうでは、大地を揺らしながら黒い影の群れが迫っていた。
その先頭には、一体だけ異様に巨大な魔物。
真っ赤な瞳が、真っ直ぐ蓮だけを見つめている。
まるで――最初から蓮を狙っていたかのように。
第11話を読んでくれてありがとう。
今回は、蓮に初めて"死の記憶"の影響が現れ始めました。
強くなる代わりに積み重なっていくものは、本当に力だけなのか。
そして最後に現れた巨大な魔物は、偶然この村へ来たわけではありません。
次回、第12話。
村を守るための総力戦が始まります。
蓮は"死なずに守る"と決意しました。
その覚悟が、本当に試される戦いになります。
ぜひ続きも読んでいただけると嬉しいです。




