第十二話 恋の遠征
「雨だな…」
「そうだね…」
季節は6月。暑くなってきた中の梅雨。湿気がやばすぎる。
「今日に限って傘置いてきちゃったんだよね…」
「私もです…」
「マジか…ってお前!いつからいた!?」
「いや、結構前からいましたよ?もしかして、私が身長低いから気づかなかったとか言わないですよね?」
「淡路くん〔先輩〕!傘入れてくれない〔ませんか〕??」
めんどくさいがこいつら置いて帰るわけにもいかないよな。
「分かったから、お前ら家遠いんだから早く準備しろ!」
登場人物
淡路涼平
高校3年生。モテはするが、告白に応じるかはまた別の話。ここ最近柑理といる時間が多く、クラスメイトからは噂されているらしい。
下館柑理
高校3年生。涼平に恋心を抱いており、過去に何度も振られているが諦めが悪くチャンスがあっては告白している。
相生凌香
高校2年生。優等生で面倒見がいい反面、恋について入れ知恵されたせいで恋に興味を持ってしまったという面もある。最近は謎に涼平達とよくいる。
糸崎舞
高校3年生。涼平達とは別クラスだが、彼氏と同じクラスになった喜びを胸に秘めている。
淡路由寿
高校2年生で凌香のクラスメイト。兄同様に頭が良く頼り甲斐のある部分も多いが、恋については厳しい。
ザァァァ…
ゴロゴロゴロゴロ…
雨が強くなり、雷まで鳴り出した。
「まずは下館の家に行ってそのあとお前の家だ。それでいいか?」
「大丈夫です!」
下館がトイレに行っている間にあらかじめルートを決めておいた。1番の問題は俺が帰って来れるかどうかだ。
「ごめんお待たせ!じゃあ行こうか!」
簡単に説明すると、高校から駅までが20分くらい。そこから下館の最寄駅までが30分かかり、駅からは10分くらい。下館を送って問題はここからだ。相生の家はここから1時間半以上かかるのだ。
「雨入ってきてないか?」
「大丈夫ですよ!」
「大丈夫!」
なんて窮屈な傘なのだろうか。恐らく傘側は3人入るのは想定していないだろう。待て…これクラスとか学年のやつに見られたらまずくないか?
(昨日淡路くんが女の子と〜)
(しかも2人いたんだよねぇ)
気まず…まぁ、落ち着いて考えろ。この時間、もう生徒もほとんど下校したであろう時間。もうさすがに…
「あれ、淡路くん。こんな時間にどうしたの?」
なんでよりにもよってこいつなんだよ。
「おう、俺は少し予習をして帰ってたからな…」
…ん?こいつ俺との会話でこんな優しい口調だったか?
「そこの2人は…下館さんと2年生の相生さん?」
バレた。なんとかして隠そうと俺の体で隠してたけど、こいつらのオーラが強かったみたいだ。
「なんで、3人で傘入ってるの?」
「これにはちゃんと理由があってだな。」
俺は誤解を防ぐために正直に話した。
「なるほどね。というか、学校に風紀委員が管理してる貸出の傘あるんだけど。」
「それを先に言ってくれ…って相生、お前知ってただろ?」
「…まぁ、私たちはこれで帰るのでありがとうございましたぁ。」
こいつ忘れてたな。ていうか…
「お前、あれで去ったらもっと誤解されるだろ?せっかく俺が誤魔化したのに…」
起きてしまったことは仕方がない。次気をつければいい。
「とりあえず駅に向かうぞ。」
〜〜〜〜
「…は?」
今度は駅の連絡通路のところで
「お兄ちゃん?と凌香!?これはどういうこと…?」
こいつガチで引いてるな。そう、妹と会ってしまった。今日に限ってタイミングが悪すぎるだろ。
「これには理由があってだな…」
これをまさか2回言う日が来るなんて思わなかったが、妹にしっかりと説明した。妹だったら理解するだろと思っていた。
「なるほど、三角か…」
「お前は口閉じろ。」
俺は咄嗟に妹の口を押さえた。
「後で話してやるから。」
そうして俺たちはやっと駅のホームに着くことができた。もう学校出て1時間も経っている。
「一本前さっき行っちゃったのか…で次は…1時間後か…」
「まあのんびり行こうよ!」
お前らのせいでもあるだろ!と突っ込みたい気持ちを抑えて約1時間ホームで雑談しながら電車を待った。
その後やっと電車に乗ることができ、下館の最寄りに着いたくらいには雨が止んでいた。
「お前、雨止んだしここから1人でも大丈夫だろ?」
「うん!遠いのにありがとう!」
下館と別れ、相生にも1人で帰れと伝える。
「お前もここから1人で…ん?」
ポツポツとまた雨が降ってきた。
「家までお願いします!」
「分かったよ。」
ここからまた電車を乗り、途中で乗り換え。ここからは本数も少なくなるが…
「えっと次は…もう来るみたいだな。」
今度はすぐに列車がきて乗り込む。一両の小さな列車だ。俺らはボックスシートに向かい合わせで座る。
「お前、いつもこんなに遠くから来てるのか?」
「いえ、まだここから1時間かかりますよ?」
「マジか…」
そんな会話をしつつ、列車が動き出す。俺たちしか車内にはいない静かな空間。山奥へと列車は入っていく。
「ところで、先輩は【好きな人】はいるんですか?」
急に重い質問してくるなこいつ。
「俺、恋愛にトラウマがあってな恋について無関心になってしまったんだ。その時は俺には味方がいなかったんだ。だから、恋って…」
俺が言葉を詰まらせていると相生が
「私はいつでも先輩の味方です。たとえ周りが敵になっても、好きな人を取られても、私はずっと先輩を応援してますから。」
「相生…ありがとな。」
〜〜〜〜
「やっと着きましたね。先輩。」
「そうだな。」
俺はこいつの言葉に心を動かされた。俺にも味方はいるんだと思わせてくれたから、だから俺は…
【本日の当駅からの列車は全て終了しました。】
「…え?」
「…先輩、うちの親に車出してもらいましょうか…?」
俺の終電がなくなったこの気持ちを雨が表している気がした。
(あのあと柑理は…)
「あれ、なんか降ってきた?」
ザァァァァァ…
「待って!待って!家まで10分かかるんだけど!」
(その後風邪をひいたらしい…)
十四話へ続く
旭野です!第十二話をお読みいただきありがとうございました!梅雨になり、まさかの三人で傘に入るというシチュエーションが出ましたね。それで久々の登場人物も!
実は当作品、とある地域を舞台のモデルとして書いてます。その地域についてはまたいつか話せる時が来たら話します。
それではまた第十三話でお会いしましょう!!




