18話 魔獣狩り。
それから僕は勉学、剣、魔法の訓練を日替わりで続けていってこの邸にきて半年が経った。
剣の腕も成長しており騎士団員との手合わせでの勝率も上がってきていた。
魔法の方はバネッサさんの無茶苦茶な教えにも関わらず日々成長していっているのを感じる。
体内に流れる魔力量も増えていって使える魔法も増えた。
今は発動時無駄に放出してしまっている魔力を調整する訓練をしている。
そして先日、シグルスさんより魔獣狩りに行かないかと申し出を受けた。
正直とても怖い。
だけど、シグルスさんは僕が実践をしても問題ないと判断してくれた結果だろう。
それが何よりも嬉しくて僕はすぐに承諾した。
そして当日。
「リリックお前は魔法使うなよ。剣だけで戦え」
「はい?!」
またもやシグルスさんの無茶苦茶な要求が飛び出された。
魔法ならまだしも、剣だけで魔獣を倒せる自信はない。
不安がる僕を見てシグルスさんは「大丈夫だ。」と頭にポンと手を置いて続けて「今日狩りに行くのは国境近くの森で大量発生したホーンラビットだ。お前が倒したレッドベアより格下だが数が多い。仲間さえ呼ばれなければ楽に勝てるさ」と爽やかに言った。
なんだか嫌なフラグが立ったが、今日はシグルスさんもついてきてくれるので問題ないだろう。
「リリックはこれを使え」
そう言うとシグルスさんは僕に短めの剣をくれた。
「こっ、こ、これは!聖剣エクスカリバー?!」
「違う。普通の子供用の剣だ。」
がくりと肩を落とした僕とシグルスさんと騎士団3名は森へ向かった。
「まだ不安ですかい?リリック様」
僕はシグルスさんの馬に乗せて貰い森の中まで向かい、魔獣の目撃現場付近で降りて魔獣の捜索をしていた際クリスが後ろから話しかけてきたのだ。
クリスは平民だが剣の腕が一流で実力派主義のモルガナイトではそれなりの地位を得ている。
「そりゃ、不安ですよ。魔法なしに魔獣と戦うなんて初めてなんですから」
そう言うとクリスはヘラヘラと笑い「リリック様はお強いので大丈夫ですよ」と言ってきたが、僕はこのクリスに一度も勝てたことがないので少しイラッとした。
ガサッ…ガサ…
クリスに揶揄われていると少し先で茂みが揺れていた。
僕は息を潜め戦闘体制をとった。
ガサガサッ…『…キュイ?』
茂みから現れたのは白い毛皮に赤い瞳、そして一本の角が生えたウサギ、ホーンラビットだ。
ごくりと生唾を飲みシグルスさんに言われた言葉を思い出していた。
(「ホーンラビットはすばしっこいが鋭い爪に注意すれば大した怪我はおわんはずだ、今回大量発生してるようだから仲間を呼ばれないようにすぐ喉を潰せ首を落とすんだ」)
「首を落とせってめちゃくちゃ簡単に言ってくれるよな…」
ボソリと本音を漏らし剣を強く握りしめ魔獣の死角から飛び込んだ。
ダッ… ‼︎ シュッ…!
体勢を低くし下から剣を振り上げるが、やはり耳のいい魔獣。
僕の初手の足跡を聞いて難なく躱わされてしまった。
すると体勢を変えた魔獣は木の幹を踏み台にして僕の方へ飛びかかってきたのだ。
(まずいッ!)
キンッ!
立てられた爪を剣で弾くと爪の強度を物語るかのように金属音が鳴り響く。
爪を弾かれた魔獣はまた木に着地し、僕を格下だと判断したのだろう。
仲間を呼ばず今度はあたりの木を飛び回り僕を囲い込んだ。
(落ち着け…ゆっくり見ればクリスの剣より遅い)
気持ちを落ち着かせ魔獣の動きを冷静に見ていた。
その姿が魔獣にとっては隙に思えたのだろう、魔獣は大きく僕に飛び込んできた。
ズサッ…‼︎ ブシッ…!!
飛び込んできた魔獣に剣を向け、剣は魔獣の腹を突き抜けた。
「ふぅ…なんとか一匹倒せたな…これなら余裕そう」
先ほどまでの不安から一気に解放され心に余裕が現れていた。
ドサリと刺さっている魔獣を地面に落としたとき、
『キ…キュ…』
(?!まだ生きてる!やばいッ‼︎)
〈『キュィィィィィ!!!!!!』〉
思ったよりも簡単に倒せて油断していたのだ。
ホーンラビットは最後の力で仲間を呼んだ。
(ああ、しっかりフラグ回収しちゃったよ…)
「馬鹿やろう!あれほど喉をつぶせた言っただろう!」
後ろで見ていたシグルスさんが駆け寄ってきた。
「すっすみません!!!」
完全にやらかした。
強くなったと調子に乗るのは僕の悪いくせだ。
「まあ、ホーンラビットの群れなら余裕っしょ」
一緒にきた団員のカセルとマシュは腕のストレッチをして剣を握る。
「いや〜今日は出番なしかなって思ってたんすけど、リリック様のおかげで楽しめそうです」
クリスはニヤニヤとしながら肩を回した。
(いや?!戦う気なの?!)
「ここで退いたら街に被害が出るぞ」
心の声を読んだかのようにシグルスが発した。
「構えろ。やるぞ。狩り尽くせ!多少怪我するかもしれんが、死ぬなよリリック!」
恐ろしい事をサラッと言いシグルスさんはホーンラビットの群れに飛び込んだ。
オドオドする僕を放って他の団員たちも群れに飛び込んでいった。
シュパッ…!ズサっ、ドスッ!!
次々に現れるホーンラビットを4人はあっさりと一撃で倒していく。
「ああ、もう!やるしかない!!!」
「魔獣狩りじゃぁぁぁああああ!!!!」
そう叫んで僕もホーンラビットの群れに飛び込んでいった。
狩って。狩って。狩り尽くした。
もう何匹殺ったかわからない。
息は上がり、爪によって腕にも怪我を負っている。
痛いし怖い。
だけど最初よりも体は軽く動く、体力を消費せずに剣を最短でどのルートで振ればいいのかが分かってきた。
「はぁっ…はっ…はぁっ…」
体は返り血で汚れ魔獣の死体はグロテスクだ。
だけどそんなの気にしている暇はない。
集中力を限界まで高め意識を張り巡らす。
「殺らなきゃら殺られる。」
「リリックッ!そいつが最後だ!!」
背後からシグルスさんの声が聞こえ斜め後ろ方角から一匹こちらへ向かって走ってくる感覚が視界で情報を拾わなくても分かる。
シュパッ…!ブシャ…‼︎
そして僕は目で魔獣を捉えることなく飛びこんで来た魔獣の首を斬り落とした。
後になって気づいたが、僕はこの極限の状況下で魔力探知を習得していたのだ。




