13話 お前を鍛えてやろう。
モルガナイト辺境伯邸にきた僕は到着後わずか数分で眠ってしまっていた。
驚きの適応能力だ。
使用人に起こされ目を覚ました僕は夕食の前に来賓室へと招かれた。
これからこの邸宅の主人に会うらしい。
緊張から胸の脈拍が大きくなる。
当たり前だが原作には出てこない。
どんな人なのか全く想像できないが、国境を守る城塞都市なのだからきっとかなり怖い人なんだろう。
「失礼致します。」
深呼吸をして扉を叩き中へ入る。
部屋の中にいたのは、ルイーザさんと同じ銀髪で長身の彫刻像のような目鼻立ちの良い男性だ。
リリックの父と年齢はそんなに変わらないはずなのに若々しくてそれでいて、クッッッソイケメンだ。
僻みも出てこないほどのイケメンだ。
その顔面偏差値高男は僕の前にやってきて見下ろす。
僕は見上げて目を細めた、
(なんてこった、イケメンすぎてすごく眩しい。眩しすぎて顔が見えない。後光が差してる気がする)
それは後光ではなく部屋の明かりだった。
「よぉ、せっかちな坊主。俺がここの主人シグルス・モルガナイトだ。早速だが色々と聞かせてもらおうじゃないか。まあとりあえず座れや」
想像していたよりフランクな彼を近くで見ると服の上からでもわかるほど筋肉が発達していた。
「ルイーザからある程度話は聞いたが、曖昧なところが多すぎるのでな。お前の話を聞いてから決めようと思う。」
対面に座り彼は真剣な表情で話し始めた。
「お前は急いで実家を出たそうだな。お前くらいの年の子なら親元を離れるのを拒むだろう。それに魔法適正も魔獣討伐も実家に知られたくないそうだがなぜだ?」
直感的にここで嘘をついたり、誤魔化しても意味がないと悟った僕は「信じてもらえるかわかりませんが、…」と母に虐待を受けている事、証拠は消されてないことを正直に話した。
すると辺境伯閣下の顔つきが鋭くなり、いつからだ?頻度は?と続けて質問された。
閣下の質問に全て正直に答えていた。
「何か理由があってのことなのか?」
「いえ、おそらくストレス発散だと思います。」
「そうか…イーサン…お前の父は知っているのか?」
「わかりません。知っていても僕に興味はないので…」
閣下は、僕の答えを聞くと信じられないと頭を抱え大きなため息をついた。
「わかった。なるべくお前が大きくなるまではここで匿う。だが、エメラルドから返せと言われれば従うしかない。それはわかっているな?だから、それまでになるべく強くなれ。自分を守る強さをここで磨け。俺がお前を鍛えてやる。」
真剣な眼差しでそう言われたが、僕はちっとも嬉しいと思わない。
だって絶対キツイ特訓だとわかるからだ。
閣下の筋肉がそう物語っている。
「いやっ、あ〜…えへへ、お手柔らかによろしくお願いします…」
顔面の圧に気圧されて僕は承諾してしまったが、先が思いやられる。
「ところでお前魔法はどこで学んだ?あの剣術バカが剣より先に魔法を教えるなんて到底思えんのだが」
「いえ、学んでないです。」
「なに?!独学か?」
「…独学…と言うより今日初めて自分に魔法が使えるって知りました。」
「はっ?!」
閣下は机に手をついて立ち上がった。
「どう言うことだ?お前は魔獣に向かって飛び出したと聞いていたが?」
「まぁ…一か八かで…?」
「一か八かって、もし使えなかったらどうしていたんだ?死んでいたのかもしれないんだぞ!」
閣下は凄い剣幕で声を上げる。
思いの外の声量に僕はビクリと体を震わせてしまった。
「ああ、悪い…怒ってるわけじゃないんだ…」
僕の様子を見て、はっとした閣下はそう言って息を整えた。
ルイーザさんの時もそうだが、ここの家の人は皆僕に親切で僕はたった1日でここの家の人を好きになってしまった。
「いえ、大丈夫です。そうですね。使えなかったら死んでたと思います。けど、どうしても子供を助けたかったんです。あそこで見て見ぬふりをすれば僕は一生僕を許せないし好きになれなかった。絶対後悔するって思ったので。」
僕の話を最後までちゃんと聞いて下さった閣下は、そうか、と言って僕の肩に手をつき目線を合わせるために膝跨いだ。
「やはり、お前は俺がめちゃくちゃに鍛えてやる。覚悟しとけ」
(いやそこは、偉いとかなんか褒め言葉じゃないんですかい?閣下ぁ〜〜〜!!!)
始まってすらいない特訓を考えると胃がキリキリした。
夕食時、他の家族を紹介してもらった。
ルイーザさんの二つ上のお姉さんのアイリスさんは王国騎士団に所属しているため王都で暮らしている。
シグルスさんの奥さんソフィア様は桃色の髪の毛に紫色の瞳で童顔だった。
20代と言われても気づかないだろう。
そして、ルイーザさんの妹のマルティナちゃんは僕より二つ下で6歳だ。
母譲りの桃色の髪の毛で目がくりっとしている。
(この子は… 天使すぎないか… 前世の推し。プリプリプリンセス 天使エルちゃんとそっくりだ…)
かつての推しの生き写しのような少女は母の裾にしがみついて「よろしくおねがいします」と小さく頭を下げた。
(かっ…かっ…かっわいぃぃぃぃ!!あ、ちなみに僕はロリコンではないからな!天使エルちゃんは16歳だったし!)
僕は聞かれてもいないのに勝手に心の中で否定してから少女に「こちらこそよろしくお願いします。」と緩み切った顔で挨拶をした。




