第七十三話船の外の様子
糸縁たちが、船の上で戦闘を繰り広げているころ、ミラとジェームの二人は結構重大なことになっている船に合流するため、車から乗り換えてミラがこんなこともあろうかと用意していた突撃兼移動用のヘリを飛ばしていた。
ちなみに運転しているのはもちろんジェームだ。理由としては上空で落下しようものなら今度こそ住民に死傷者が出てしまう可能性が極めて高いからである。
「ジェーム?辛かったら私にチェンジしてもいいからね」
「ああ、それはありがたいな。お前がノルトラ発動のために酒をガブ飲みしてなかったら、ぜひやってほしかったところだ」
「全くジェームは真面目ね。そこまで警戒しなくても、私はプロなんだから前みたいな失敗はしないように対策しているっていうのに」
「前科アリよりのありどころではないやつに言われたくねえな」
「これだから過去しか見ない頭でっかちは」
「その発言からお前の年齢が垣間見えるから、やめたほうがいいと思うぜ、その発現から連想される年齢が事実じゃなくてもな」
「何言っているのかしら、私はこう見えても結構ピチピチ系よ?まだ囚われられる演技で対象を騙すことも可能ではある年齢なのだけども?」
「そうだな。肉体年齢だけだったらそうなんだろうな。まあ、こんな話は前置きでしかない上に面倒くさいからもういいが。それにしても、愉快なことに糸縁の方だけに毎回やばいやつが固まっているのは何なんだろうな?全く持って大人である俺達の面目が立たない」
「それに関してはもう運命的なものを感じるけど、まあ、私達には私達なりのやり方があるしこれから突入すればいいだけの話だから」
「それもそうだが。ところでこのヘリ、俺達が降りた後どうするつもりだ?糸縁たちが乗っている船にはヘリポートに該当するものはなかったはずだ」
「スカイダイビングみたいにパラシュートでこっそり降りるわよ。安心しなさい、防御面は私の分裂体で防御するから、相当な数のスナイパーがいない限り死ぬことはないと思うわ。操縦面でも私が今から作る分裂体に操縦を移譲して、いつでも突撃できるような場所に置いておくわよ?」
「了解。そこまで準備が万全だったら分裂体で今回の敵の情報も掴んでいるのか?」
「ええ、問題ないわ。今回のは情報戦をサボタージュしている情報セキュリティーの観点が点でだめな奴らだったから大体の情報は掴めているわ。名前としては犯罪組織アペプ、そのボスの名前はアポフィス。大柄でなにか目立つ見た目をしているけど、写真で見た限り奇跡的なバランスで背景に溶け込む才能があるみたいだから、思ったよりは見つけにくいかしらね。それと現在は内乱状態にもなっているみたいね」
「そうか。流石に常時酒気帯びをしているアル中状態で作った多い分裂体を動かしたら俺よりも情報は多く得られるか」
「ええ、なんといっても酵母菌は最高だから、ありとあらゆることができるのよ。何なら私一人でも戦争ができるわ」
「それを今の俺に言うってことは、落ちたいみたいだな。何なら今から紐無しバンジーの案内でもしておこうか?」
「私の分裂体だったら是非試してみたいものね。まあ、今はその時ではないから、あなたには大人しくしてほしいところなんだけど」
「うーん、やっぱり本体を落とすことでしか得られない栄養素だってあると思うんだ。だから、いっぺん落ちてみないか?」
「頑なに紐無しバンジーにこだわるわね!そんなに思い入れが!?…………まあ、こんな話をしていても状況は好転しないし、本題について考えましょう」
「了解。取り敢えず、なにか嫌な予感もするが内乱が起こっているのは都合がいい。今の組織としての結束力が低下している状態なら、楽に叩くことができるだろうな」
「そうね。楽観手に見たら前の任務よりも簡単そうに見えるけど、今回はそう簡単にはいかないかもしれない。だって、こんな状況、都合が良すぎるんだから」
「まあ、そうだな。と言っても、俺は今回あんまり情報収集に時間を割けていないから、よくわからないが」
「今回の保護対象のクヌムだけど、分裂体越し見ても大分見た目から怪しいわね。なんだか、現代社会には早々いなそうなまるで現代から隔離されているとでも言わんばかりの服装をしているし、糸縁は特段何も言っていなかったけど、納豆バカだから、最近のエジプトでナウいだけのファッションかなにかだとでも思っているんでしょうけど」
「そうか、格好から怪しいのか」
「ここで私は酒を追加して、分裂体を追加して現在であんな格好をしている民族を探してみたけど、一つだけ見つかったわ」
「それは?」
「ウシルって言う名前の、過去のエジプトの王族を復活させる部族のようね。正直言って胡散臭いとしか言えないけど」
「確かに、古今東西天地がひっくり返ってもありえないことをやっている部族なんて怪しさの塊でしかないな」
「それでも、クヌム……というか今回の保護対象はそんな感じじゃなさそうだから、まあ、祭り上げ系の人間だとは思うけど、それを考えても保護が必要ね。それと糸縁達からクヌムが怪しい組織に狙われているって話も聞いたけど、これはアペプが狙っている気がするわね。死神狩りはこの件については管轄外だろうし、あんまり絡んでこないと思う」
「俺もだいたい同じことを考えていたが、そうなった場合、大分面倒くさいことになりそうんだな。もうクヌムのノルトラに関してNLから吐かせているのか?」
「いえ、NLは知らぬ存ぜぬで通そうとしているから、無理ね。けど、糸縁が話してくれた情報から推測したら、ある程度の距離のミイラを作る能力だとは思うわね」
「ミイラ、か。それはただ単に古代エジプトで行われていた葬式の準備のミイラのことじゃなくて、近年の創作物でよく見かける、信仰通りに動くタイプのやつだよな?」
「ええ、そんな感じのやつね」
「それなら、単純に死者を蘇らせて国家転覆が目的か」
「いや、それなら内部分裂が起こったとしても全員で狙ってくるはずだから、一部の勢力が狙って内部抗争を制しようとしていると言ったところが妥当じゃないかしら?」
「仮にそうだった場合………………おっ、ついたぞ」
ジェームは己の言葉を中止して、ヘリが目的地の上までついたことを伝える。
二人は扉を開けて、
「その派閥を見つけ出して、なにか起こす前に徹底的に潰す」
と長年の付き合いから声をシンクロさせながら、降りていった。




