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最も相応しい人材

 ~ペガサス支部~



「ふぅ……ようやくこれで一息つけますね」

「だね。ちょっとだけアイシャの所に行こう。一応依頼の達成の報告をしに」

「あ、そうですね」



 レイとティルファは三日ぶりにアイシャの居る資料室を訪れる。

 前と変わらず扉を開けるとズザザザザと資料が雪崩のように流れて来るが、レイも二度目ともなると慣れたもので、流れてきた資料をサッと避けるとそのまま室内に入りアイシャを探す。



『誰か来たの~~?』



 またも資料の下から聞こえる声にレイは、熱源探知(サーモサーチ)特定隆起(ピックアップ)を使いアイシャを助け出す。



「あ!ティルファとキリサトさん!無事だったんだね!おかえりなさい!……ということはもしかして依頼の方も無事達成したの?」



 はい、とレイは自分達が受けた依頼を達成したことをアイシャに伝える。



「流石だね!新人の勇者だからどうなのかな~とは少しだけ考えたけど、やっぱり勇者なだけあって活きて帰って来れたね。二人ともお疲れ様!」



 アイシャの明るい口調と態度に、これまでずっと神経を張りつめて二人の心からそれが消えて、少しだけ楽になる。



「アイシャさんもお疲れ様です。今日も変わらずお仕事頑張ってらしてるみたいですね」

「そうなんだよ~!ローグさんが居ないからその仕事もしながら、こっちの資料も解析しないといけないから本当大変!ローグさんいつ頃こっちに戻って来れそうとか聞いてないかな?」



 レイは本部で聞いた話をアイシャに話す。



「ん、了解。それならもう少しの辛抱だね。ギリギリなんとか回らない仕事量じゃないし、問題は無いかな。ありがとね」

「いえ、こちらこそ」



 アイシャはそう言うと、またすぐ手元にあった資料に目を通し始め、ノートのような物に記帳をする。

 それも両手を使い、一度も何冊も。



「凄い……」

「アイシャは複数才能(マルチセンス)固有能力(ユニークスキル)の持ち主だからね。あの程度のことは簡単にやってのけるよ」

複数才能(マルチセンス)?」

「そう。簡単に言えば、色んな人が持ってる長所や特技を全てひっくるめて集約したような能力(スキル)かな?」



 複数才能(マルチセンス)というのはティルファの言う通り、人が持つ全ての長所や特技を集約した能力(スキル)である。


 暗記が得意、計算が早い、手先が器用、武器や魔法を扱うのが上手いなどのような様々な分野に精通しているある意味万能な能力(スキル)であると言える。

 基本的に他の人が出来ることはアイシャにも出来るし、逆に言えばアイシャに出来ることはどこかの誰かは必ず出来る。


 一見すると完璧な能力(スキル)にも思えるが、これにも欠点はある。

 それが、長所や特技の域を出ないということ。


 暗記が得意とは言え、暗記が得意なだけで、完全に記憶出来る訳ではない。


 計算が早いのも電卓のようにパッと計算出来るのはある一定の計算式まで。それこそ三桁の掛け算ぐらいに。


 手先が器用なのもプロのマジシャン程では無いし、武器や魔法もフェルグランのように免許皆伝まで到達出来る程のものは無いし、レイのように様々な魔法を使うことは出来ない。


 長所や特技はあくまでも長所や特技であって、勇者のようにずば抜けた才能を持つ人間には敵わない。

 それがこの能力(スキル)の欠点。


 最も、欠点とは言え、普通の人間と比べるとアイシャがとんでもなく優秀な人材であることには変わりない。

 事実アイシャ一人で職員十数人分の仕事をしているのだ。

 もし、アイシャが居なければギルドマスターが不在となっているペガサス支部が受け持つ仕事は全て他の職員に回され、相当な忙しさになっていた筈だ。


 そうなっていないのはアイシャがその仕事を全て一人で受け持ち、消化しているからである。

 恐らくアイシャ以上に副ギルドマスターの座が適任な人材はそうは居ないだろう。



「この量を一人でこなすのはかなり酷かと思いましたが……」

「アイシャに限ってはそうでも無いかな」

「ちょっと!これでも結構大変なんだからねー!」



 しかし、そう言うアイシャの言葉にはまだ余裕が感じられた。



「まぁでも……それならお世話になったことですし、少し僕の方からお礼をさせて下さい」

「ん~?」

「何をするつもりなの?」

「ちょっと異世界魔法をアイシャさんに」



 レイはす~、と深呼吸をすると、詠唱を開始する。



「天より反響せし天使の歌声は我が傷を癒す奇跡なり。大地より呼応する自然の囁きは我が疲労を癒す奇跡なり。幾千の死闘を繰り広げ、虐殺を続けた我に与えられる奇跡に我は感謝しよう。次はこの身を救済の為に使うとここに我は誓おう。神癒光(エーテリングライフ)



 レイが詠唱を終えるとアイシャの体を強く優しい光が包み込む。

 と、同時にレイはその場に膝を付く。



「ん~?お~~~!嘘!凄いよこれ!」

「大丈夫レイ君!?」

「はぁ……はぁ……ふぅ、と。大丈夫です。ちょっと魔力消費が酷い魔法みたいですね」

「これって、どんな魔法なの?」

「多分、完全治癒魔法で合ってると思います。どの程度の怪我まで治癒できるのかは分かりませんが、これだけ魔力を消費するのなら大抵の傷は治せるでしょう。勿論疲労も」



 この神癒光(エーテリングライフ)という魔法はたった一人だけを対象とし、その対象者が死んでさえ居なければどんな怪我や疲労でも治すというもの。

 ただし、治すことが出来るのは怪我と疲労のみで、病気や呪いと言った状態異常は治すことは出来ない。



「キリサトさんありがとう!ここ二~三日程寝ずに働いていたから大分楽になったよ!これなら間違いなくローグさんが帰ってくるまで滞りなく働くことが出来るよ!」



 あはは、とレイはアイシャの言葉に苦笑するが、それでもアイシャは喜んでいるみたいだったのでよしとすることにした。



「僕に出来ることはこれぐらいなので。……それじゃそろそろ僕達は出ていきますね。これだけの資料だと立っているだけでも邪魔になりそうですし」

「ううん。ありがとう!それじゃまたね!ティルファもわざわざありがとう!」

「また何かあれば言ってね。レイ君みたいにはいかないけど、必要な道具とかサンプルの収集なら手伝うから」

「ありがとう!助かるよ!」

「アイシャも頑張ってね!」

「うん!」



 二人はアイシャにお礼を言うと、外に流れ出てしまった資料を室内に戻し、アイシャの居る部屋を後にした。


また投稿が凄い遅れてしまった上に文字数が少ないこと……

本当に申し訳ありません!

もう少し効率良く執筆できるよう頑張ればいいのですが中々その時間が無く……(泣)



次回の投稿は一応次の土曜日を予定しておりますが、作者の都合で日曜日になってしまうかもしれません。

少しグダッて来ているこの作品ですが、途中放棄するつもりは毛頭ありませんのでこれからもどうぞよろしくお願いいたします。

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