王の資格を持つもの
フワラリアを探す道中、レイ達はまたジャルグーンマン他数体の植物型の魔物に遭遇し、襲われていた。
レイはすかさず観察眼を使用し、対策を練る。
襲ってきた魔物は全部で18体。
そのうち2種類の魔物の詳細は以下の通りである。
『ジャルグーンウルフ
元々はただの狼であったが、ジャルグーン樹海に迷い混んでしまい、ジャルグーン樹海特有の強い魔力磁場の影響で辺りの草木に寄生され、魔物と化した動物。
狼本来の移動速度は植物型の魔物となってしまったが為に落ちているが、その代わりに背中に生えた幹から堅い木の実を発射する遠距離攻撃を獲得。
発射された木の実に殺傷性はないが、被弾してしまうとそこから木の実が芽を吹き、体に根をはりそこから栄養を吸いとられ死んでしまう。
木の実の発射以外にも牙、爪による攻撃も健在』
『ジャルグーンバード
元々はただの鳥であったが、ジャルグーン樹海に迷い混んでしまい、ジャルグーン樹海特有の強い魔力磁場の影響で辺りの草木に寄生され、魔物と化した動物。
鳥としての飛行能力が向上し、それを活かした単騎特攻の攻撃を得意とする。
ジャルグーンバードの爪には麻痺性の毒を有する植物が生えており、それに触れるとしばらくの間動けなくなってしまう。
また、クチバシは非常に堅い樹で覆われており、下手な鎧であれば簡単に貫通する威力を持つ』
「ティルファさん!」
「任せて!悪しき者の立ち入りを禁じ、邪なる者を滅する。我が言の葉に耳を傾けたまえ。拒盾!」
『『『ギシシシシシ!!?』』』
しかし、同じ過ちは繰り返さないと決めたティルファのサポートは完璧で、レイの攻撃を邪魔させないようにしっかりと敵の攻撃を防いでいた。
ティルファの使った魔法、拒盾は前方に光の結界を展開し、人間以外の侵入を拒み、それに触れた者を消滅させる攻守に優れた上級魔法だ。
難点として展開時間が短いというのがあるが、レイはその間に呪文の詠唱を終え魔法を発動する。
「炎の海から産まれゆるは飛竜の子。その力は脆弱なり。されども決して意識を違えるな。より脆弱なるは人の子なり。愚かな考えを持つ者を灰塵に帰せ。飛炎!」
『『『ギギギギギシ!???』』』
レイの放った異世界魔法、飛炎は竜のような形となり、魔物の群れを焼き尽くす。
飛炎の発動時間が切れ、炎が晴れた時には魔物の群れもろとも樹海の一部を焼き払って出来た焼け野原が広がっていた。
「………さっきの戦闘で分かっていたつもりだったけど、レイ君のその魔法は正にチートと呼ぶに相応しい気がするよ。職業が魔法に適性のない剣士なのに上級以上の力を発揮できる魔法を使えるって………凄い頼もしいんだけど、頼もしいんだけど!んーー!」
「たまたま運が良かっただけですよ。いくら強力な魔法を使えるといっても前みたいに魔法無力化の能力を使われればまるで役に立ちませんし、もしもそんな敵に遭遇した時にアンチの能力を持つティルファさんが居なければピンチに陥るのは間違いないので。気にしない方がいいんじゃないですか?」
「そう、なのかな?」
悶々としているティルファにフォローの言葉をレイはかける。
その言葉は嘘でなく、レイの本心だ。
確かにレイは強いが、今のその強さは魔法を使うことに依存したものである。
異世界魔法にしろ、未知の侵略者にしろ、魔法無力化を喰らえば今のレイに出来ることは少ない。
反射壁・型式能力はあるが、まだ使用したことが無いのでどこまで有効なのかが分からない。
故に、それを防ぐ術を持つティルファのことを頼もしいと心から感じている。
なにより本来なら個人の戦闘能力はティルファの方が上なのだなら。
「そうですよ。だから気にしないで進みましょう。ティルファさんの防御が無ければまだ複数の敵を相手にすることは出来ませんし。お互いに助け合って行きましょう!」
「………うん。そうだね」
それから道中何度も魔物の群れに襲われ、その度に戦闘を繰り返していたがティルファが攻撃を防ぎ、レイがその隙に攻撃をするスタイルに穴は無く、なんの苦戦も強いられずに次々と魔物を倒していった。
しかし、魔物を倒していく度に徐々に戦闘に余裕が無くなって来ているのをレイ達は感じ始める。
疲れで体が鈍ったわけではない。
何が原因なのかと考えていると、これまで何度も襲ってきた3種類の魔物とはまた違う種類に加え、更に数多くの魔物がレイ達の前に立ち塞がるっていた。
しかし、その新たに増えた魔物は明らかに他の魔物に比べると威圧感がある。
ジャルグーンマンなどと同じように全身を植物で覆われているが、その姿は例えるなら熊。
体も4~5m程あり、2人は他の魔物はなど意に介さず、その魔物に釘付けになる。
数多くいる魔物の中で、たった一体だけのその魔物が発するオーラに当てられて体が鈍っているのだと2人は気づく。
「こいつは………」
「この辺のボス、かな?」
「観察……」
『グォォォォォォォ!!!』
レイが観察眼を使うよりも先に、その魔物は大きな雄叫びをあげ、それに合わせて一緒に居たジャルグーンウルフとジャルグーンバードが攻撃を仕掛けてくる。
二人はなんとか攻撃をかわすも、今までとは段違いに激しい攻撃に防戦一方となってしまう。
「くっ………!ティルファさん!これまでの防御魔法より強い魔法を張ることは出来ますか!?」
「出来る、けど、キャッ!?これだけ激しいと展開しても簡単に突破される!!!」
ジャルグーンウルフが四方八方から木の実の弾丸を撃ちだし、ジャルグーンバードが全方位から高速の突撃をする。
そしてジャルグーンマンはレイたちの動きを止めようとその長い触手で妨害をし、胞子を放つ。
それぞれの攻撃全てに連携がとれており、これまでのように適当な攻撃は何一つとしてない。
「……!レイ君!一度撤退をしよう!このままじゃやられるのも時間の問題だよ!?」
「分かりました!なら、ティルファさん!僕の体を担いで移動することは出来ますか!?」
「身体強化の魔法を使えばいけると思、くっ!でもどうして!?」
「未知の侵略者で魔物を吹っ飛ばして隙を作ります!でも、これを使うと魔力全消費による疲労で動けなくなるんです!」
「前にレイ君が使ってたあれだね!なら、身体強化の魔法を完成させるまで時間を稼いで!」
「はい!」
ティルファが魔法の発動の為に攻撃を止める。
その分更にレイへの攻撃の負担が増える。
「恐れよ。地の神を。敬え。樹の神を。讃えよ。獣の神を。我は彼らの眷族なり」
『ギシギシギシギシ!』
『ギィィィィィ!』
「こんのっ!水壁!風壁!砂壁!火壁!」
しかし、レイは防御系の魔法をいくつも展開し、なんとか凌ぐ。
が、初級魔法故に一撃一撃を防ぐのが精一杯で、全ての攻撃をいなすまでには至らない。
魔物達の猛攻は衰えるところを知らず、展開した壁を破壊されてはまた展開してを繰り返すことを強いられる。
「耳を傾けたまえ。地の神よ。我は汝の体を駆ける者」
『ギギギギギシ!!!』
「中速移動!誘惑笛!」
このままでいずれ猛攻に耐えきれず、攻撃をもろに喰らってしまうと判断し、誘惑笛というその音色を聴いた者を惑わせ使用者に向かってくる魔法で魔物達を寄せ付けて全力で樹海の中を走り、時間稼ぎをする。
「耳を傾けたまえ。樹の神よ。我は汝と共存する者」
そうして逃げているとレイはあることに気づく。
僕達を襲ってきた魔物の中で僕の事を追いかけてきていないのはあの熊のような容姿をした魔物だけではないか?
と。
レイが気付いた通り、魔物を引き寄せる魔法・誘惑笛により、襲ってきた魔物は全てレイのことを追いかけていた。
しかし、誘惑笛は初級魔法。
引き寄せることの出来る魔物には限度がある。
この魔法は自分より弱い魔物程効きやすく、強い魔物程効きにくい。
そのことから、あの熊のような容姿をした魔物は自分と同等か、それ以上の力を持つことが分かる。
(こいつと出会った時にティルファさんが呟いていたことは間違いじゃないかも知れないな)
何よりもその熊のような容姿をした魔物は雄叫びを上げて以来1歩も動いていない。
ただ、その代わりに度々指示を出すように吠えてはいた。
レイは敵から逃げる最中に隙を見つけ観察眼を使う。
「!やっぱりか!」
ティルファの予想は的中していたと表示された詳細を見て納得する。
そして、先程のレイ達の疑問も同時に晴れることになる。
戦闘に少しずつ余裕が無くなってきていたのはこいつが指示を出してまとめていたからなのだと。
『ジャルグーンベアー
ジャルグーン樹海の環境の中で自然に誕生した魔物の1体であり、ジャルグーン樹海の王となる資格を持つ1体。
樹海の中にある複数の大樹に傷をつけて、その傷をつけた範囲を縄張りとする習性がある。
ジャルグーン樹海に棲息する魔物の中でも上位の存在に位置し、その縄張りと決めた範囲の中の魔物はジャルグーンベアーの意のままに行動する兵隊となる。
基本的に指揮官のような働きを持つジャルグーンベアーであるが、その戦闘能力は折り紙つきで、その巨体から放たれる本気の一撃はカマイタチを巻き起こし、本体から放たれる胞子は吸った者を眠らせる力を持つ。
単純な物理攻撃も強力であり、鋼の鎧でさえも無力である
他の魔物の血肉を喰らうことで自身の肉体を強化することもある』
始めはジャルグーンベアーも少しは強い人間が来たなと思って大して気にかけていなかった。
が、次々とやられる手下の姿を見て、自らが指示を出さないと無駄死にになると考え遠距離から雄叫びにより指示を出していた。
しかし、それでも中々敵対する人間を仕留めることが出来なかったので、こうしてジャルグーンベアーは直々にレイ達の目の前に姿を現したのだ。
「耳を傾けたまえ。獣の神よ。我は汝と勇む者」
ジャルグーンベアーは本能で自らを調べられてしまったと感じたのか、再び大きな雄叫びをあげる。
すると辺りの木々がザワザワと騒ぐと更に数多くの魔物が集まってくる。
どうやらジャルグーンベアーはレイ達をここでなんとしてでも抹消するつもりらしい。
流石にこれは不味いと感じたレイは急いでティルファの元へと急ぐ。
まだ呪文の詠唱は完了していない。
ティルファも周囲の状況に気づき、内心焦りつつも冷静に呪文の詠唱の完了を急ぐ。
「地を統べる3柱の神に願いを申す」
『『『『『ギギギギギシシシシシシシ!!!』』』』』
「ティルファさん!」
「我に汝らの力の一部を与えたもう」
前も、後ろも、右も、左も、上でさえも魔物に囲まれ、レイ達目掛けて突撃をしてくる。
このままではなぶり殺しにされるのは時間の問題だ。
「愛する者との約束を果たす為、我は力の限り、駆け抜ける」
これ以上待っていられないと辛抱を切らしたレイはティルファが立っている方向とは真逆の位置に未知の侵略者を放つ。
「未知の侵略者!」
魔物群れの4分の1が未知の侵略者の重力により樹海ごと消滅する。
しかし、残り4分の3は仲間がやられたのにそれをまるで気にした様子はなく、勢いを全く衰えることなく突撃を続ける。
(これで……終わりなのかっ………!?)
レイがそう死を覚悟するのと同時に、ティルファの魔法が完成した。
「身体之極化」
そして刹那の瞬間。
ティルファがそう呟くとレイとティルファはその場から忽然と姿を消した。
☆★☆★☆★☆★☆★
対象無き場所へと突撃を続ける魔物達。
あまりにも一瞬の出来事過ぎたが為に、レイ達がその場から消えてしまったことに気づけた魔物はほんの一部。
そしてそのほんの一部の魔物は何もない場所に攻撃を仕掛けてしまったせいでバランスを崩してしまう。
その魔物達がバランスを立て直そうと、体を捻った時には既に遅かった。
後続の魔物が次々と考えなしに突撃をし、それに巻き込まれ先頭の魔物は息絶えてしまう。
それが最後尾の魔物の突撃が終わるまで繰り返され、突撃が終わった頃にはレイにやられた魔物も含め、半分以上の魔物が息絶えていた。
『グヴヴヴヴヴヴ………グヴォォォォォォォォ!!!』
それを見たジャルグーンベアーは怒りをあらわにし、咆哮を上げる。
それはレイとティルファに向けたもの。
自分の縄張りを荒らされた上、手下の魔物の大多数が死んでしまった。
突撃で死んだ魔物はジャルグーンベアーの指揮管理が悪かったが故の事故なので、そのことに関してはレイ達に怒るのは筋違いというものなのだがジャルグーンベアーにとっては関係ない。
あいつらさえ来なければこんなことにならなかった。
そうとしか考えていないから。
ジャルグーンベアーは配下の魔物を1度解散させ死んだ魔物で出来た山へと歩みを進める。
ジャルグーンベアーにとって配下の魔物が死んでしまうことは実のところどうでもいい。
弱い者が死に、強い者が生きる。
それは自分が産まれてから今日まで嫌という程味わった自身の経験則だ。
なので死んだ魔物に対して悲しみの感情なんて持ち合わせていないし、同情するつもりもない。
だが、怒りはある。
縄張りを荒らされたのなら殺せばいい。
配下の魔物が殺されたのなら殺せばいい。
ジャルグーンベアーはこれまでも同じように人間の勇者を葬ってきた。
しかし、今回ジャルグーンベアーはそれが出来なかった。
何故なら殺すべき敵が逃げたから。
自身が闘って勝てなかったのならそれでいい。
それは自らの経験則が語っているのだから。
自身が勝てないと判断したのならそれでいい。
わざわざ無駄に命を捨てることはないのだから。
だからこそ、ジャルグーンベアーは怒る。
力もない雑魚がよくも縄張りを荒らし、配下の魔物を殺してくれたな。
闘う勇気さえもない卑怯者が。
と。
ジャルグーンベアーは誓う。
必ずこの手であいつらを殺してやると。
そう、決心したジャルグーンベアーは目の前に広がる魔物の死骸の山を片っ端から喰らっていった。
その眼に憤怒の色を宿して。
これからはなるべく不定期に更新するのではなく、決まった曜日に定期的更新出来るよう努めたいと思います。
次回の更新は次の金曜日を予定しております。
しかし、あくまでも目安で何かご意見がありましたらそれに応えられるよう頑張りますのでお願いいたします。
ここまで読んで下さりありがとうございます!
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