火曜日 ~ なん・・・だと・・・ ~
昨日の葉向さんの言葉からすると、今日は津崎が俺の所にくるという。
正直だからなんだ。というのが俺の本音だ。
そもそも基本的に朝教室に入ると大体くだらない話をもちかけられるのだ。
今日もいつも通りだろう。
というわけでなんの気負いもなく、教室に入る。
結論から言おう。
津崎健次郎は欠席していた。
津崎健次郎の家は裕福である。
あいつ実は、ボンボンなのだ。
この都会になりきれない、やや田舎町の一角にある高級マンションの一室が奴の家だ。
一体何に使うのかわからないくらい無駄なスペースが1階にあり、やたら電飾がキラキラしている。
そこで部屋の番号を入れ、呼び出すタイプのアレである。
中から出てくる住人は、オーラをまとっているのか何処か違う人種という気がしてならない。
あまりこの空間に長居もしたくなかったので、さっさと部屋の番号を押し、呼び出す事にした。
「合言葉を言え」
絶対奴である。
無駄に声を野太くしているが、どう聞いても奴である。
このカメラ越しに俺を見るなり、調子に乗っているのだろう。
やはり仮病か。
知っていたが。
さてどうしてやろうか・・・・とりあえずスマホ弄り、
「合言葉だ。合言葉を言わねば許可を出さぬ」
「あいことば」
「ふん、貴様の知能は小学生か。いや、近頃の小学生ですらそのような低次元
にはないぞ」
「魚一美」
「浅はか!浅はかなりっ!そのようなもので私がこの扉を開くとでも思うてかっ!!」
「今ままでの録音してるからな、色々な部分編集切り張りして改悪した物をして
魚に送りつけてやるわ」
「ご容赦をっ!今開けるからご容赦をっっ!」
やっとの事で中に入る扉が開いたので、エレベーターに乗り、目的の部屋前に辿りついた。
入り口に備え付けられたインターホンを押す。
どうでもいいけど、なんでここにもインターホンがついているのか。
普通、1階であんなやりとりするんだったら扉前で待っておけばいいものを、ここでもまた、
相手を待たすようなこの設計ほんとゲスの匠。
そんな事を考えていると、扉が開かれ、
「よ!やっぱり来てくれると思ったぜ!流石俺のマブダチ!!」
めちゃくちゃムカツク笑顔でサムズアップする津崎がいた。
どうやら母親は外出しているらしい。残念である。あの絶品な唐揚げのレシピを教えて貰おうと思っていたのに。
ちなみにこいつの父親は海外で仕事をしているらしく、母親との二人暮らしだ。
リビングや、それまでの通路の内装もやたら凄い。
派手さはないが、味があるというかなんだろうか、これは。スタイリッシュ?
自分の語彙のなさに辟易するが、とにかく凄いのだ。
「なんだかんだで2回目?だっけか家にくるの!」
「そうだな、こんなけったいな場所あまりよりつきたくない」
「人の家きてボロクソ言うなや!見てみこのオシャレな椅子!ハンギングチェアだ!
座ってみろ!!スゲーゆったりできるぜ!!」
「なにお前、生まれる前に戻りたい願望でもあるの?」
「卵型というだけでこの仕打ち!?せめて哺乳類に分類してください!」
とりあえず、手土産にコンビニで買ってきた物を袋ごと渡した。
個人的にこの中にあるプレミアム肉まんに惹かれた為、衝動買いしてしまったという事もあるが、
流石に手ぶらはまずいということで、お茶とこいつようの通常肉まんも中に入っている。
先に部屋に行って良いと言われたのでうろ覚えながら津崎の部屋へと辿り付き待機中である。
小奇麗に整頓された部屋は、津崎らしさをあまり感じない。
だが、机の上に魚の写真があるあたりやはり津崎の部屋だ。
許可を得られている訳が無い写真だろう。だって、視線こっち向いてないもの。
正直、気持ち悪い。
来るのは2回目だが、やはりこいつの家は慣れない。
いくら津崎の家とはいえ、ボンボンである。家の雰囲気に落ち着く訳もなく・・・・、
何か悪戯してやろう。
とりあえず魚の写真の頭部分に、ハリセンボンの絵を書いておいた。
これで、某魚博士とお揃いである。ん?あれハコフグだったっけ・・・まぁどうでもいいな。
「さて、お茶も入った事だし本題といこうか」
「これ俺が買ってきたお茶だよな?それを急須にいれてきただけだよなお前」
「ただでさえ7人が選ぶ程に凄い!もはやこのやり方だと10人が選んでしまうな!」
「うるせさいよ!もう疲れる!学校で何もなかった分余計に疲れる!」
「肉まんうめぇ」
「おま・・!!俺のプレミアム肉まんをっ!!お前はこの通常の肉まんつっただろうが!!」
「このセレブな家に住む俺が庶民の肉まんなんか食えるかっ!!」
「コンビニの肉まんにセレブもくそもねぇよ!」
「角煮まんうめぇ」
「お前マジ、レッツパーリーするぞごるぁあああああ」
「くだらん事で体力を使ってしまったな・・・・さてさて本題だが。
俺達の仲m「いやだ」早くない!?返答早くない!?」
「るせぇっ!お前は俺を怒らせた・・・っっ!あやまれ!あやまれよっ!」
「まだ肉まんの事引きずってるの!?どんだけ器小さいんだよ!」
「そもそも入らんと言っただろ!いやだって!それなのに毎日毎日別々にきやがって
理由も全員が全員はぐらかすし、肝心な事は喋らない奴らをどう信用しろと!」
「だからこその俺の番なんだよなこれが!!お前に入ってもらいたい理由は――、」
「ただいま~」
どうやら、津崎の母親が帰ってきたようだ。
玄関の方から女性の声が聞こえた。
「丁度良かった、これでちゃんと理由が説明できるなちょっと母さんの所へ行こうか」
津崎はそう言いいながらニヤリとした。
「あら、いらっしゃい。玄関の靴で誰か来ているとは思っていたんだけど、貴方だったのね」
「はい、お邪魔しています」
津崎の母親は、買い物に行ってきたみたいだ。
買い物してきたであろう食品を、海外ドラマでしか見た事のない馬鹿デカイ冷蔵庫にいれている
最中だった。
「この子の友達なんて貴方しか見た事ないのだけどね、ほんと心配になっちゃうわ」
「実の子を前にして酷い仕打ち!いるよ!友達大勢いるから!」
「え?俺達友達だっけ?」
「あらら、1から0なっちゃったわね。そうだ、今日は晩御飯食べていかない?
唐揚げのタレに工夫をこらしてみたのよ」
「母さん!?重大な事件をさらっと流して晩御飯に誘わないで!?その発言
だと、他人を晩御飯に誘ってることになってるよ!!」
「はぁ・・・だったら他の友達や彼女の一人でも連れてきてみなさい・・・お母さん
本当に心配よ・・・」
やめてあげて!母親のリアルな心配に津崎のライフはもう0よっ!
そんなくだらない会話をとりとめもなくかわし続けていると、津崎の奴が何かを思い出したかのように、
「よし!とりあえずここにちゅーーーもーーーく!!何が”見える”でしょうかっ!?」
と叫びながら、右手を上に向け、人差し指を立てていた。
気でも狂ったかと思ったが、上に向けられた指し先には”火が灯っている”
おいおいちゃんとこれ親御さんに説明しているんだろうな。
まさかここで、初めてのカミングアウトなんて事はないよな?
「もういきなり叫んでビックリした。急になんなのあんたは・・・”天井には何も無いじゃない”」
晩御飯の誘いを丁重に断った俺は、私物を取りに津崎の部屋に戻った。
「な、これが一番の大きな理由だよ。俺達の能力は普通”見えない”んだ」
奴のこの言葉が忘れられない。
あの後、津崎の部屋で話した内容をリフレインしながら俺は帰宅していた。
奴の話では、彼らの能力は一般人には見えず、能力も人間相手には干渉する事が
出来ないという。
人間以外の物なら大抵なんでも干渉できるらしく、津崎は俺の目の前で紙を燃やしてみせた。
彼等は、能力者同士の存在をお互いに認識できるらしい、津崎が火を出した次の日に
魚一美が接触してきたのもその為だったらしい。全くもって人外である。
津崎健次郎は認識できた。
では、俺は?
彼等の中でそういう話になるのは、自然の流れだったそうだ。
魚一美は、一番最初に俺達に向けてその能力を使い、水をかけてきた。
その行動は当然、一般人である俺に干渉するはずがなく、俺が濡れるはずがない。
なので魚一美は、強行に津崎だけを連れて行き、場の収拾をつけなかったのだと言う。
トレイや、机が濡れて俺が店員に清掃をさせられたのは、あの店員には俺が盛大に水を
零したように見えていたのか。今ならそんな考えすら容易にできる。
能力者として認識できないが、津崎の能力が見えた男がいる。
どうするか。
どんな奴か見てみたい。
本当に能力が見えるのか、試してみたい。
それがあの日のガ○トであり、河川敷である。
能力が見える、干渉できる(主に砂)
でも、誘いを断られた。
なぜ?
何かあるかもしれない。
どうするか。
津崎と愁はそこで仲間に入れる事を押した。
じゃ、とりあえず一人ずつ探りを入れてみよう。
それがこの一週間である。
家に帰り、迎える母親に適当に返答をした。
今は何も考えたくない。
ベッドにダイブした。
ようやく、2章の最初に戻ります。




