土曜日 ~ こんなのってないよ ~
あの後、華金を謳歌させに行く山田先輩を出来うる限りの冷たい視線で見送った。
あのメンバーで一番のリアル充実者は、葉向さんだと思っていたが、とんだ伏兵が
いたものである。あれには流石の俺も「げぇえ!か○う!?」そんな事を口ばしって
しまうだろう。
各務唯しかり山田先輩しかり一体どれほどのダークホースを抱えているのかと、思う本当に恐ろしい団体だ。
しかし、水木金と非常に疲れる3日間であった。
魚の時は、ガ○トの店員に誤解され
唯さんの時は脅され、やはりガ○トの店員に誤解される。
最後に山田先輩の壮絶な惚気劇場を見せられる。
なんなんだコレ、誰かわかりやすく簡潔にまとめてみたが、こいつらただただ
嫌がらせをしに来ただけじゃないか、とそう思うのだ。
インターホンが鳴る。
そういえば今日は両親共にいなかった事を思い出した。
面倒だが、でざるえないか・・・と、インターホンごしの相手をのぞ
津崎健次郎と、斎場妹、つまり斎場彗だった。
人類には素敵な言葉がある、居留守だ。
居るのに留守。
これは矛盾でもなんでもない、れっきとした技である。
つまり、見てるのにスルーという現代で言う所の、既読スルーに近いカテゴリだろ
う。
俺は確かに見た。来客を。
だが、それを招くかどうかは家の人が決める事だろう。
ここは俺の家であり、決定は全て俺にある。
このまま居留守を決め込も・・・・ん?
彗が津崎に何か言われたようで、なにかしらおどおどしながら彼女の可愛い
つむじが顔をみせ、
「わしゃわsy」
「今開けるからそれはやめるんだ彗っ!!!」
「いやー、まさか居るとは思わなかったからさー。
来た事わかってもらう為に彗にお願いして、メッセージをねーって痛ぁっ!?
ローはダメだろ!ローは!?ッ痛っぁ!?こいつ内モモをてきかくにっ!?」
「ふざけてるよね?お前こんな人の家であれを発動した日には何処かで噴煙でも
あがったのかしら?ってなるよね?掃除するの俺・だ・よ・ねぇええええ!!!」
あのまま内モモを打ち抜いた俺は、
「こ、これから・・・デートいってくるんだぜ・・・へへ」
とかいう一言を放った津崎に衝撃を受けた。
こいつが・・・デート・・・だと。
という訳ではない。どうせ魚に買い物の荷物持ちがてら付き合わされるのだろう
と予想できたからだ。
なんだかんだで魚が、ぼっちと言う悲しい真実を見てしまった手前むしろ言ってやれと、暖かく見送ってやりたい。
が、しかしである。
斎場彗を何故ここに置いて行くのか。
それに衝撃を覚えた。
こいつ自分から連れてきて、見知った程度でしかない男子高校生の家へ
女子中学生を招き入れるとはどういう事だろうか。
そこで、フラッシュバックした。
なるほど、そういう事か、なんだかんだで俺が追い返すその瞬間。
家から出る斎場彗を激写する事で、恐怖!?女子中学生を襲う高校生!!
みたいな写真をまた激写するのだろう。
本当に卑劣な奴らである。どうせその辺に山田先輩や各務唯が待機しているのだ。
いや、先ほどの話から津崎すらこの件に関わっているのかもしれない。
大した事の無い日常を脅かす卑劣な我ら!に改名したらどうだ全く。
とりあえず、彗には母親が俺の為に残しておいたであろうプリンを渡しておいている。
後ほど津崎に請求しておこう。もっと高いのを。
さて、今はそれ所ではなかった。この現状をどう打開するかを考えようではないか。
まず、斎場彗がこの場から去るというのは前提条件だとして、それをいかに普通に
、なんの不思議もなく遂行するこれが今回のミッションだ。
一つ、別の脱出路をから出す。
却下である、むしろそこを抑えられたとしら余計に怪しく映るだろう。
完全にアウトの未来線しか見えない。
二つ、誰かを呼ぶ
これは良い線を言っているのではないだろうか。
とりあえず、
「彗さんや彗さんや」
「プリン美味しいです!」
「いや、そうじゃなくてね。ちょっとお兄さん呼んで欲しいんだけど」
「兄ですか?・・・すいません無理です」
「なぜに!?」
まさか、既にこの案は論破され、あの鬼畜共に断る事を強要されてるのだろうか、
なんて恐ろしい奴らだろうか、
「私、携帯持ってません。兄も持ってませんから・・・」
あぁ、ですよねーまだ中学生でしたねー。
今時だから持ってるとか思ってたけどまだまだ少数だよねー。
という訳で、兄案却下である。というか何故別々に来たんだぜお前ら。
2人で来いよ2人で。
2人・・?そうだこいつらは双子なのだ。
「なんかこう、双子パワーで片方を呼び寄せたりとかできないの?」
「あはは、無理ですよそんなの。それってエスパーじゃないですかー」
やだもうー、みたいな感じで笑われている。
なんだろう、確かにそうなんだけども凄く釈然としねぇ!!お前ら能力者
って設定はどこいった!?
兄を呼ぶという事がダメなのであれば、では誰がいるだろうか。
すぐに友達を思い浮かべたがこれも駄目だろう。
なんせ知っている友人は今頃ほぼ部活をしている時間帯であり、そもそも。
彼らが女子中学生を招き入れている俺を見てどう思うだろうか。
なんだろうか嫌な予感しかしない。
最終手段ではあるが、”あいつ”を呼ぼうか・・・。
いや、あいつはあいつで色々と面倒でこれまた酷い誤解を招きそうである。
一番知られてはいけないだろう。この現状を説明するのもまた骨だ・・・。
やっぱり、第2案も却下だろうか。
これならもういっそ・・・そう。
そうだ、いっそのこと!!!
[おはようございます。急な話で申し訳ないのですがお暇ではないですか?]
1分経たずに、
[いきなりどうした我が眷属よ、このような電子世界に我を呼び出すとはな(風が渦巻く) ]
なんだろう、自分の発言に対して、なにかしらの情景を文字にする人初めて見たな・・・すげぇ。
[おはようございます。どうかされましたか?]
[いや、お暇であれば今日俺の家に来ませんか?親も丁度いないですし、少し
お話をしましょう!!]
[両親が居ない男の人の家に行くなんて・・・私できません(テレテレ]
[せっかくの招待に対し、行きたいのは山々なのだが、我も忙しい身でな、これから
”零写の儀”を取り行わなければならぬのだ。すまぬ、またの機会よの(雷が轟いている) ]
[すみません、私も今日予定があって(汗 ”知り合いの方の記念撮影”頼まれて
るんです。いけそうもありません]sory の絵印
・・・・・・・。
[クソがふざけんな!お前ら絶対家の前いるだろ!入ってこいよ!鍵開いてるから 入ってこいよ!!]
ユイユイが退出しました。
大いなる風が退出しました。
もう・・・まぢむり。
クソ暇人共め・・・・近隣の住民から通報されればいいのに。
なんて呪いを外に送りつつ、次の手を考えていると、どうやらプリンを食べ終わった
と思われる斎場彗が、俺を呼んだ。
「あの・・・私。お兄ちゃんに入って欲しいと思っていますよ?」
あぁ、なるほどと、
なるほど、あいつらはこれを最大の武器としたのかと、悟った。
”お兄ちゃん”
なんと甘美な響きだろうか。
兄の方に呼ばれるのとは断じて違う響きだ。
俺は一人っ子である。妹などいない。
お兄ちゃんと呼ばれる事など・・・もうほぼ無いと言っていいだろう。
もうなんだろうお兄ちゃんなんでも許しちゃおうっかなー
なんでも彗に買ってやろうかな―
そんな気分になるの仕方のない事であり、
「よーし、じゃあもうお兄ちゃん彗の言うとおりに入っちゃうよー・・・・・・」
なんて口走ってしまうのは、一瞬の過ちであって、決して言葉通りの意味では、
「あ・・・あんた・・・何言ってるの・・・?」
いつのまにか帰ってきていた母親が、息子を信じられないという目で見、リビングに立っていた。
こんなのってないよ・・・あんまりだよ・・・・。




