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高校で念願の彼女ができたが、断れない子だった。  作者: 遼魔


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08.祥真なら助けてくれるはず(Side:結愛 )

Side:徳山結愛(とくやまゆあ)


中沢祥真(なかざわしょうま)君は取り立てて目立つところはないけれど、身長は平均より少し上。顔はイケメンってほどじゃないけど、そこそこいい。勉強も運動もそこそこできる。温和な性格で、話しやすくて気遣いもできる。

一年から同じクラスだった子によると、特に悪いところ無しで平均70点くらいのいい人。つまり、彼氏にするには物足りないけれど、男友達なら歓迎ということらしい。


私にとっては、中沢君が隣で良かったと思っていた。彼の穏やかな声が安心できるというのかな。

それに、彼はさりげない程度に私のことを見ていて、ちょっとした変化にも気づいて褒めてくれる。だからと言って無闇にこっちのパーソナルスペースには入ってこない慎重さもある。困っていることがあると、すぐに気づいて助けてくれる。そういうのって、女の子は嬉しいんだよね。


二年のクラスの中で仲良くなったのは一年の時にストーカーから助けてくれた松田彩乃(まつだあやの)。

中学で仲良くしてて、高校では初めて同じクラスになった水上心春(みずかみこはる)。二人とも次第に中沢君の評価が高まっているようだった。


中沢君と特に親しくなったきっかけ。それは彼の家で飼っている猫・シマジローの写真を見せてくれた時かな。シマジローは私のハートを撃ち抜くほど可愛くて。勢いのまま中沢君と連絡先を交換しちゃった。


私は子供の頃から猫派で、そのきっかけは祖父母の家で飼っていたキジトラの猫。残念ながらうちはペット不可で飼えなかったけど、祖父母の家に帰省する度に可愛がっていたから。


うちで飼えない代わり、たまに市内の猫カフェに行って猫と戯れていた。中沢君とメッセージを送り合うようになって、いろんなことを会話したけど、猫カフェのことを話題にしたら食いついてきた。


中沢君なら一緒に行ってもいいかな。もう友達だもんね。そう思って、二人でのお出かけが決まった。

初めて出かけたのは7月下旬。彼は紳士的で、暑い中で私を気遣ってくれて、心地よい時間を過ごせた。恋人とまでいかない男友達。そんな関係は初めてで新鮮だった。同じものが好き同士だと、話題が尽きなくて楽しかった。

だから8月に入ってからも約束して出かけた。


8月に入って二回目の猫カフェデートの日だった。私の方が待ち合わせ場所に先に着いてしまった。中沢君とのお出かけが楽しみになってきて、つい早起きしちゃったからね。


一人で待っていた私は30代くらいの男の人に声をかけられた。「モデル」「アイドル」といった単語が聞こえたので芸能事務所のスカウトだったのかもしれない。ただ、名刺は出してこなかった。

でも、こっちが答える暇も与えずにぺらぺらとよく喋る。スカウトというよりセールスマンといった感じ。


話に興味は惹かれなかったし、なんとなく胡散臭くて嫌な印象だったけど、怖くて強く断れなかった。かといってその場を離れたら、中沢君と待ち合わせできなくなる。

どうすればいいのか困ってしまった私の手をいきなり男が掴んできて、身が竦みそうになった。


その時、馴染みのある声が聞こえた。男の手を払い、私を庇うように体を入れてきた。中沢君だった。見上げた大きな背中が頼もしかった。教室で見るより、すぐそばで見上げる後ろ姿が格好良くて、不意にときめいてしまった。


男は中沢君としばらく言い合いしていたけど、諦めて去っていった。私は彼のシャツをずっと掴んでいた。

振り向いた中沢君はシャツを掴んでいた私の手を優しく握ってくれた。そして目線を合わせるように少し屈んできて言った。


「もう大丈夫だよ。遅れて怖い想いをさせてしまってごめんね。今度からは俺が先に来るようにするから」


中沢君の優しい眼差しを目にしていたら、胸の奥が軋んだような気がして。狼狽えた私は目を伏せてしまった。それで彼は勘違いしちゃったみたい。


「ごめん! 手を握ったままで、嫌だったよね」


手を離されたのが、むしろ心細かった。


「ち、違うの! 手、握ってて?」


おずおずと右手を差し出すと、中沢君は顔を赤らめながら握ってくれた。この時、私の中で彼を友達じゃなくて、異性として意識するようになったのだと思う。

そう。私が男の人に迫られて、断れなくても彼が守ってくれる。そう思うようになったきっかけだった。


2学期が始まって席は離れたけど、私からも話しかけるようになった。つい彼の姿を目で追ってしまう。家にいても、祥真君は何しているかなって考えてる時間が増えた。用がなくてもメッセージを送ってしまう。祥真君はこまめに返事返してくれるのが嬉しくて。祥真君が私を褒めてくれた時なんて、メッセージを読み返しながらベッドで足をばたつかせて悶えていた。きっと、これが本当の恋なんだって思った。


そして文化祭の後夜祭。彩乃と心春の手引きで空き教室で祥真君と二人きりになって、告白を受けた。


男子からの告白自体は数えきれないほどされた。でも、一番嬉しくて、胸がじーんと熱くなって、涙が出そうになったのは祥真君だけ。まるで熱に浮かされたような気分。私が受け入れた途端に祥真君はその場で座り込んじゃって。ほっとしたあまりに腰が抜けちゃったんだって。可愛い。


思わず手を伸ばしたら、そのまま引っ張られて抱きしめられた。祥真君の腕の中で抱えられるのは、心がぽかぽかするというか、とても安心できた。身を任せられるのはこの人だけ。ようやく私は本気で男子を好きになれた。この恋を手放しちゃいけないって思った。


高校に入って、初めての恋人宣言。周りから祝福されて、誇らしいような、照れるような。でも、これで他の男子から言い寄られることは無くなるよね。困ることはないよねって思ったんだけど、そうは問屋が卸さなかった。

同時に私は変な癖に目覚めてしまった。


祥真は期待通りに私を守ってくれる。暴力をふるうことなく、落ち着いているけど、決して引かない態度。辛抱強く言葉で相手を退ける。

その大きな背中が頼もしい。庇ってくれる祥真のシャツを大事なもののようにぎゅっと掴む。その後ろ姿を間近で見上げていると胸がきゅんとする。


二人きりになった途端、私は彼の胸に飛び込む。祥真は私を優しく抱きしめながら言う。


「ちゃんと断らないとだめじゃないか」

「ごめん。ごめんね。ずっと好きだったって言われちゃうと、どうしても断りづらくて」

「でも、俺という彼氏がいるんだから、はっきり言ってくれないとね」

「そうだね。私、祥真じゃないとだめなのわかってるんだけど……」


祥真の口調は決して咎めることなく優しい。

本当は私がきっぱりと断らないといけない。祥真を煩わして申し訳ない気持ちはある。

でも、祥真に守ってもらって抱きしめられると胸がかーっと熱くなって、お腹の下あたりが疼いちゃう。これが癖になっちゃってる。


硬い胸の感触を堪能しながら見上げる。すぐそばに祥真の優しい眼差し。罪悪感と同時に「好き」って気持ちが膨れ上がる。


「私ね、本当に祥真だけが好きなの。信じて?」

「あぁ。結愛を疑ってないよ。ただ、結愛がモテすぎて困っちゃうのはわかってよ」

「うん。わかってる。ただ、いざ声をかけられると、うまく言葉が出てこなくて……心配させてごめん。私には祥真しかいないのに……ねぇ、この後うちに来て。しよ? 祥真と、したいのぉ」


私はわざとらしく胸と下腹部を押し付けながら誘う。はしたない女だと自分でも思う。でもやめられない。

その後のセックスは燃え上る。深いキスを交わしているだけで濡れてくる。頭から足まで、祥真の手に触れられたところ、全部が感度上がっているみたいで気持ちいい。普通は出さないような、恥ずかしい声が出ちゃう。祥真の腕に包まれながら、熱くて硬いのを受け入れると、あまりの快感に意識が飛びかける。

祥真とのセックスで私は性的絶頂(オーガズム)を知った。私は祥真に溺れてる。もう、祥真から離れられない。





高坂高で同じ中学の親しかった子が4月から北海道に引っ越しすると聞いて、集まることになった。それも私や心春含む女子だけ十名。送別会を兼ねた女子会ね。祥真に言った通り、何の心配は無かった。


よく行く駅前のファミレスに集まってご飯食べて、長々とお喋りして楽しいひとときを過ごした。いっぱい写真を撮って、餞別のプレゼントを渡してから解散。そこまでは何の問題も無かった。


会計の二人を残して店を出た時、中学の時の見知った顔の男子が何人か待ち構えていることに気付いた。

その中から背の高い一人がずいっと私の前に出てきた。なぜか坊主頭になった大坪君だった。

確か近くに入れる高校は無くて、東京の多摩の方。それも全寮制の厳しい高校に入れられたって聞いた。だから、卒業以来会うことも無かったのに。


「待ってたぜ。行こう」

「えっ、えっ、ちょっと」

「いいから。いいから」


有無を言わせない強引さで手を掴まれて引っ張られた。周りの子たちはその迫力に押されたのか、止める間もなかった。私は抵抗もできず、ぐいぐいと引っ張られていく。

少し経って一緒にいた女の子たちが騒ぎ始めた。すると、大坪君以外の男子が間に入ってきたようで。


「結愛! 結愛をどこ連れてくのよ!?」

「そんなことより、一緒に二次会行こうぜ」

「そうそう。せっかく会えたんだから」

「はぁ? なに言ってんの!?」

「どいってってば!」


揉めている声を背にしながら私は大坪君に引っ張られて、どんどん遠ざかっていく。


「ねぇ、ちょっと! 止まってってば!」


何度も呼びかけて、ようやく大坪君は足を止めてくれた。駅前からだいぶ離れちゃって、辺りは暗い。

大坪君は振り返って真正面から迫ってきた。思わず後ろずさったけど、すぐに背中が当たってしまった。逃げ場を無くすように壁に手をつく。いわゆる壁ドンされた。


「結愛、中学の時も可愛かったが、すげえきれいになったな」


大坪君の大きな手が無造作に私の髪に触れてくる。長らく祥真以外の男の手に触れられなかったから、思わず身が縮こまってしまう。


「中学の時によ、お前を引き止めなくて、ずっと後悔してた」

「え……」

「やっぱ、好きだったんだ」

「そんなこと、今さら言われたって」

「うち、男子高でよ。すげー厳しいんだ。女と付き合うなんてもってのほか。寮の部屋で一人悶々としてて思い出すのはさ、結愛だけだった。中学で何人か付き合ったけど、お前が一番だったよ」


今じゃなんとも思ってない。むしろ付き合ったこと自体黒歴史として消し去りたい相手。

ただ、精悍な顔した彼から真剣な表情で言われてしまうと、嬉しく思える気持ちはなくはない。

でも、今の私にとって、一番は祥真だから。


「気持ちは嬉しいけど、今は付き合ってる彼氏がいるの」

「そうか。やっぱりな。まぁ、どうせ今の俺じゃ付き合えねえ。その代わりに一回だけ思い出をくれないか? 一回だけでいい。誰にも言わないからよ」

「そ、それは……」

「頼むよ」


いきなり肩を抱かれてしまった。彼は昔から強引で、初めての時、私は断り切れずに流されてしまった。でも今は昔とは違う。浮気するつもりはないから、ちゃんと断るべき。咄嗟にそう思った。


でも、はっきり断ると、牧田みたいに逆ギレされるかも。大柄で筋骨隆々の彼を怒らせたくない。とりあえず従ったふりをしよう。いざという時は祥真に助けを呼べばいい。きっと、祥真なら助けてくれるはず。


大坪君に抱かれたまま私は歩き出した。行き先を照らしているのはラブホテルのネオン。従うふりをして、私は片手でスマホを操作する。あれ? おかしいな。画面が暗いままなのはなぜ?


電池切れで電源が入っていないことに気付いたのは、ラブホテルの目立たない入口から入った後だった。ファミレスにいる時に電池マークが赤くなっていたことを思い出す。モバイルバッテリーは通学鞄の中。今日のポシェットには入れてない。

さーっと冷たい汗が背中を流れた。これじゃ、祥真に助けを呼べない。


「やっぱりやだっ! 帰る!」

「なーに言ってんだよ。ここまで来て帰るはねーだろ。ほれ、やることはやるぞ!」

「いやぁ!」


引きずられるようにして部屋に連れ込まれた時点でもう詰んでいた。

抵抗虚しく、私は大坪に犯された。一度ならず何度も。途中で写真も撮られた。


翌朝になっても解放されることはなかった。寮で禁欲生活を送っていたから溜まっていたとか言って、飽きることなく私を犯した。まるで獣みたいだった。


「ゴールデンウイークになったら呼び出すから、またやろうな。拒否ったら、写真ばらまくんでよろしく」


今でも好きだとか、思い出のために一回だけなんて、嘘だったんだ。私は性欲のはけ口として利用されただけ。そして、この呪縛はまだ続くのだと知って絶望した。



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