備前二日目のスタート 調査開始!
さて、俺はというと、いずみに抑えられたせいもあり、それほど酔ってもいないし疲れてもいない。時間はまだ22時前だ。俺は、いずみには悪いがお風呂に入ることにした。お風呂の営業時間を見ると夜は23時までになっていた。俺は少し急ぐことにした。
浴衣に着替えて、着替えの準備をして俺はそっと部屋を後にした。お風呂の場所は2階だった。お風呂は時間も遅いせいかかなり空いていた。展望浴場ということもあり、窓からは瀬戸内海が一望できた。これが、朝日や夕日の時間だったらとても綺麗なのだろうなと思った。身体を洗い、浴槽に浸かった。明日からのことを何となく考えながら、ぼんやりと海を眺めていた。しかし、風流なものに縁のない俺はさほど楽しむこともなく早々に上がった。着替えて髪を整え、浴場を出た。
のどが渇いていたので、自販機でジュースを買って部屋に戻った。いずみの分のスポーツドリンクも買っておいた。部屋に戻ると、いずみはスウスウと寝息を立てて熟睡していた。俺はいずみを起こさないように窓際のソファーに腰かけた。買ってきたオレンジの炭酸ジュースを飲みながら明日の予定を確認しておいた。明日は、朝の7時30分に朝食で、10時に先方様を伺う予定だ。
そういえば、先方様の名前をいずみに聞いていなかったなと思った。資料はいずみが持っているが、勝手にカバンの中を見るのも憚られるので、明日の朝に確認すればいいかと思った。そうこうしているうちに、俺も眠たくなってきたので寝ることにした。スマホのアラームを5時30分に合わせておいた。これなら、いずみもゆっくりお風呂に入れるだろうと思った。俺も、ベッドに横になり、しばらく起きているかなと思ったが、すぐに寝てしまっていたようだ。
翌朝、5時30分にスマホのアラームが鳴った。俺は、少し寝ぼけていて、「ここはどこだ?」と考えたが、すぐに理解できた。俺も、相当疲れていたのだなと思った。ぐっすり寝たおかげで頭はスッキリしていた。
「ううーん。あれ?ここは?何で私、お洋服のまま寝ているの?」
いずみが起きたようだ。状況がイマイチ把握できずにポカンとしている。
「おはよう。いずみ。大丈夫か?」
「おはよう、柊太。大丈夫って何よ?何で私はお洋服のまま寝ていたの?」
いずみが矢継ぎ早に聞いてきた。
俺は、昨日の夜のいずみの様子をそのまま伝えた。
「あら、そうなの。ごめんなさい。」
いずみにしては珍しくシュンとしていた。昨晩のことをあまり覚えていないのがショックだったようだ。
「それで、今、何時なの?」
「5時30分だよ。」
「えらく早いけど、外は明るいわね。お散歩でもするつもりなの?」
「違うよ。いずみがお風呂に入るかと思って早めにアラームを合わせていたんだよ。」
「お風呂って、私、昨日お風呂に入らずに寝ちゃったの?」
「そうだよ。あれだけ酔っていたら危ないからね。今日の朝、入るように昨日の夜に話をしたよ。」
「そうだったの。全然覚えてないわ。本当に、ごめんね。」
俺は冷蔵庫から昨日買っておいたスポーツドリンクをいずみに渡した。
「はい、これ。」
「あら、ありがと。気が利くわね。」
いずみは、のどが渇いていたのかゴクゴクと飲んでいた。
「お風呂は、朝は6時から営業開始みたいだから、少しゆっくりしてから行っておいで。朝食は7時30分だから、わりにゆっくり入れるんじゃない?」
「そうね。そうさせてもらうわ。柊太はどうするの?」
「俺は、昨日の夜にサクッと入ったからそれでいいよ。」
「そうね。そんなに楽しむタイプじゃないものね。」
いずみは納得して言った。
俺は、いずみから今日の資料を見せてもらうことにした。
「あら、ごめんね。私何も言っていなかったわね。私がお風呂に入っている時に、目を通しておいてね。では、行ってくるわね。」
お風呂の営業時間になったので、いずみはお風呂に向かった。その間に俺はこの資料を確認するとしよう。資料は、柏原施設長名の紹介状やピアノの持ち主のご遺族のご家族様のお名前やご住所等の連絡先だった。あの写真二枚と紙ももちろんある。あとは「調査費用」と書かれた茶封筒があった。
俺は、何となく気になったので、茶封筒の中身を確認してみた。中には10万円入ってあった。俺が四谷所長からいただいた額と同じだった。確かに、いずみの言う通り、これは真剣に頑張らなくてはいけないなと改めて思った。
さて、次は資料だ。俺は、ピアノの持ち主のご遺族さまのご家族様のお名前やご住所や連絡先の書かれた紙を開いた。そこには、ピアノの持ち主の次男様のお名前とご住所、連絡先が書かれてあった。その方の名前は「柴﨑篤二」とあった。そして、亡くなった持ち主の名前は、「柴﨑とき江」と記されていた。「柴﨑篤二」は19××年生まれとあるから、今年で58歳になられるようだ。「備前焼」の窯元として生計を立てられているようだ。住所は備前市××で、ご自宅の電話番号も記されていた。
住所を見ると、このホテルからはさほど遠くないところだった。そのあと、例の写真を見てみた。家族写真で男児が2人写っているうちの小さい方の方だろう。そうこうしているうちにいずみがお風呂から帰ってきた。
「あー、気持ちよかったわ。柊太も朝風呂すればよかったのに。窓から見える海がとても綺麗だったわ。」
いずみが満足げに言った。
「資料を確認したよ。ありがとう。」
「今日伺う方は、このホテルから近いわよね。9時30分前に出たら十分に間に合うと思うわ。」
それから、海の見えるソファーですこしゆっくりしてから、朝食に向かった。昨日の夕食と同じ1階のレストランだ。朝食はバイキング方式だった。俺といずみは、思い思いの料理をお皿に盛り付けて席に着いた。ちょうど、窓の横の席が空いていたのでその席にした。
「お料理も美味しそうだし、海も綺麗ね。」
俺といずみはゆっくりと朝食を楽しみ、食後のコーヒーを飲んで部屋に戻った。まだ出発まで、1時間弱あるのでしばらくゆっくりとすることにした。そろそろ出発の時間が迫ってきたので、俺といずみはフロントに鍵を預けて駐車場に向かった。ナビに住所を設定して車を発進させた。




