四つの謎に挑む!
「やっぱり思った通りだったわ。さっきの男性は、「黒祈仙術」一派の関係者よ。」
いずみが妙に納得した表情で言った。
「いったい誰なんだい?」
俺は状況が飲み込めずにいるのでまずは聞いた。
「あの人は、はっきりとは覚えてないけど萌黄原さんじゃないかと思うの。」
いずみは言った。
「萌黄原さんって言ったら、豊原の事件の時に由美さんを助けに行ってくれた人だね。」
俺は記憶を辿りながら言った。暗かったし、追い込まれた状況だったので顔はあまり覚えていなかった。
「私も、そう思います。一度、父に連れられてお会いしたことがあります。何となく面影が似ています。」
あずさちゃんもそう言った。
「では何でそうと分かっていたのに、缶の中身を見せたりしたんだ?」
俺は不思議に思って聞いた。
「それはね、確信が持てなかったのと、あそこでゴネたりされたら嫌だったからよ。さっきの段階では、お兄さんの状況や「黒祈仙術」一派の動きがはっきりしていなかったからね。」
いずみがそう説明してくれた。
「でも、相手にも同じ情報がいったじゃないか?それは大丈夫なの?」
「ここからは、お互いの知恵比べね。今のところ、実物を持っている私たちが有利よ。まずは、この謎を解きましょう。」
いずみは、「5」と書かれた木の札と鈴のキーホルダー、紙切れ二枚を取り出した。
「みんなは、これが何か分かるかな?」
いずみが俺とあずさちゃんを見て言った。
「ごめん。俺は、紙切れの1枚が温泉を表しているとは思うが、もう1枚の紙と木の札とキーホルダーについては、全く分からないよ。」
「私も同感です。お役に立てず申し訳ありません。」
俺とあずさちゃんが声をそろえるように言った。
「いいのよ。私も分からないから。でも、ある程度の推測はついているの。聞いてくれるかしら?」
いずみが俺とあずさちゃんを見て言った。俺とあずさちゃんは先を促すように頷いた。
「この紙切れの1枚、温泉を表しているのはその通りだと思うわ。この「5」と書かれた木の札だけど、これは質札だと思うの。もう1枚の紙に書かれているマークは、どこかの会社の社章かどこかの市町村の市章的なものだと思うの。それと、この鈴のキーホルダーだけは見当がつかないわ。」
いずみが言った。なるほど、もの凄い説得力だ。あずさちゃんは目を見開いて聞いていた。
「それでね、この4つを写真に撮って、問い合わせてみようと思うの。」
「問い合わせるって、どこにするんだい?」
俺はそんな都合のいいところはあるのかなと思って聞いた。
「一つだけ可能性があるところがあるのよ。」
「それは、どこだい?」
「由美さんよ。」
いずみが真剣に言った。
「由美さん?何故かな?」
由美さんは呪術的な研究をされているが、こういったことには関係ないのになと思った。
「由美さんがお勤めされているのは出版社でしょ。いろいろな分野に詳しい人がたくさんいると思うの。ものは試しでやってみましょう。」
いずみはそう言って木の札とキーホルダー、2枚の紙切れを写真に撮り、由美さんにメッセージを添えて送った。
「では、いつまでもここにいるわけにはいけないから少し移動しましょう。昨日の喫茶店に行って休憩がてら返事を待ちましょう。」
今ハンドルを握っているのは俺だ。俺は、車を昨日の喫茶店に向けて出発させた。さほど時間はかからずに、目的の喫茶店に到着した。
「いらっしゃいませ。」
店内に入った途端のクーラーがとても気持ちが良かった。
「これは、あずさちゃん、いらっしゃい。」
マスターがあずさちゃんを見て言った。
「マスター、どこでもいいの?」
「ああ、いいよ。今は空いているからね。」
俺たち三人は奥のテーブルに腰かけた。俺といずみが並んで座り、向かいにあずさちゃんが座るという構図だ。
「何にする?」
いずみがメニューを見ながら言った。
「俺は、アイスコーヒーにするよ。」
「私はレモンスカッシュにしようかしら。あずさちゃんはどうする?」
「私もレモンスカッシュにします。」
店員さんがお水を持ってきてくれたので、その時にオーダーを言った。
「かしこまりました。少々お待ちください。」
店員さんが下がっていった。いずみがスマホを取り出した。
「あら?もう返信が来てるわ。確認してみましょう。」
いずみがスマホを開いた。
「やっぱりおおよそは私の思った通りだったみたいだわ。「5」と書かれた木の札は質札で間違いないでしょうということで、あの謎のマークは美作市の市章だそうね。それに温泉のマークは温泉を表していて、美作市にある湯郷温泉のことじゃないかと由美さんは言っているわ。
あと、鈴のキーホルダーは身分証みたいなもので、これを持っていないと質物と交換できないようになっているのではないかと考えているようね。」
凄いなと俺は思った。由美さんに目をつけたいずみも流石だと思ったが、この謎を一瞬で解いた由美さんもさすがだと思った。
「そうと決まれば次の行き先は湯郷温泉ね。湯郷温泉付近の質屋を探しましょう。」
そこにちょうどドリンクが来たので、ひとまずは一息入れることにした。
「ふー。やっと人心地ついたわ。いきなりの展開だったものね。」
いずみがレモンスカッシュを飲みながら言った。
「いずみお姉さんはどこであの男の人が怪しいと思ったのですか?」
あずさちゃんが聞いた。
「それは、駐車場に1台車が停まっていた時からよ。「これは、ひょっとして何かあるかも」って疑っていたの。そしたら、あずさちゃんあの男の人が話をしていたでしょ。タイミング的に地元の人ではないなと思ったのよ。」
いずみがリラックスした感じで言った。
「湯郷温泉付近の質屋を調べてみたけど、めぼしいところで2件かな。このどっちかだと思うけど。」
俺はスマホの画面を二人に見えるように向けた。
「これは、今の段階では分からないわね。1件ずつ行ってみましょう。」
いずみが言った。地図で調べたところここから湯郷温泉までは1時間半ぐらいだ。今の時間は10時半過ぎなので、ちょうどお昼過ぎに向こうに到着するだろうと思われた。暑い中、外にいたので、しばらくドリンクを飲みながら体を休めていた。
「さて、行きましょうか。あまり時間はないものね。」
いずみが伝票を持って立ち上がった。
「あずさちゃんの分も払っておくから気にしないでね。」
いずみが言った。
「ありがとうございます。ごちそうさまです。」
あずさちゃんが礼を言った。




