夕立受山での異変!
さて、こちらは柊太といずみである。「夕立受山」に行く前の準備と対策のために一旦ホテルに戻ってきたのであった。
「ああ、落ち着くわね。涼しいし、もう出たくなくなっちゃうわね。」
いずみがソファーに腰かけて言った。
「ホントにそうだね。このままお風呂に入ってビールを飲みたい気分だよ。」
俺も激しく同意して言った。
「ダメ!ビールはもう一仕事済んでからね。さて、あの地図を見てみましょう。」
いずみはそう言ってカバンから古びた紙を取り出しテーブルの上に置いて広げた。
「地図なのだけど、何かの在りかを示していると思うのよね。」
「俺もそう思うよ。あの写真がヒントになっていて、照らし合わせば分かるような気がするけどね。」
「エライぞ柊太!いつの間にそんなに賢くなったの?」
久々にいずみの重量級の毒舌が炸裂した。
「この地図には、海が描いてあって、細い道と山のマークが描かれているわ。あと、「上」という漢字と「50」という数字も描かれているわね。」
いずみが確認するように言った。
「この海っていうのは瀬戸内海のことだと思うの。そして、描かれている山は「夕立受山」のことで、頂上付近のことだと思うの。この山が描かれているところに漢字で「上」って書かれているものね。」
いずみが地図とにらめっこしながら言った。確かにその通りだなと思った。
「あと、この「50」という数字だけど、この「夕立受山」の頂上付近から50歩もしくは50m移動せよということを表していると思うの。私は50歩だと思うけどね。」
「それは何故だい?」
「この写真はずいぶん昔のものでしょ。50mきっちり測る器具なんて簡単には手に入らなかったと思うのよ。」
「でも、歩数だったら、歩幅なんかも違うし分かりにくいんじゃないかな?」
俺はふと思った疑問を口にした。
「だから、夕方見に行った時に、その辺りの確認をしたいのよ。簡単に50歩入れるような地形になっているのかどうかをね。」
「そういうことか。それでは、探索は明日ということになるのかな。」
「そうね。夕方見に行って、必要な物や装備を確認して揃えないといけないからね。おそらくは地中に埋められていると思うから、スコップやシャベル的なものがいると思うの。」
「分かったよ。あと、軍手なんかも必要になってくるね。」
「そうなるわね。今のうちにどこにホームセンターがあって、営業時間が何時からか調べておきましょう。」
俺はスマホでこの辺りのホームセンターを調べた。そしたら、朝9時から空いている大手チェーンのホームセンターがそんなに遠くないところにあるのが分かった。
「そこでいいんじゃない。少し休憩したら出発しましょう。」
一息ついた俺といずみは再びホテルを後にした。ナビに「夕立受山」をセットして車を発進させた。今度はいずみが運転だ。ホテルから「夕立受山」までは割と近い距離だった。
30分も走らせないで、俺といずみは「夕立受山」の駐車場に到着した。暑いせいもあるのか他に車は停まっていなかった。車を停めて登山口の方へ行こうとしたとき、いずみが立ち止まった。
「柊太見て!あそこのバイク!」
いずみが駐車場の端の方を指さして言った。確かにそこには赤いバイクが停められてあった。
「あのバイクがそうなの?」
俺は心なしか小声になって言った。
「遠目だから分からないわ。でも、同じバイクと思って行動した方が良さそうよね。」
確かに、偶然と考えるには間が良すぎる。でも、相手が何者であるかはもちろんのこと、その目的とするところも全く見当がつかない。
「どうする?やめておく?」
俺はいずみに聞いた。
「少し気味が悪いけど、このまま行きましょう。相手はおそらく一人だし大丈夫でしょう。何か言ってきたらその時はその時よ。」
いずみがさっきとは打って変わって強気になって言った。
「あまり、無茶はするなよ。」
「どういうこと?」
「いや、別に。」
いずみちゃん、キミは時々ボロクソに言うときがあるからね。たまに、相手に同情してしまうときがあるんだよ。今日は頼むよ。俺は事が穏やかに済むように祈った。
俺といずみは「夕立受山」の登山道に入って行った。少し傾きかけた太陽に照らされながら、15分ほど歩くと山頂付近に到着した。ほどよく整備された道だった。山頂付近には「夕立受山」の説明看板と、木製の小さな展望台があった。俺といずみはひとまず、説明看板を見てみた。
そこには、「その昔、長い日照りで農作物の被害に苦しんだ農民たちが、降雨の祈りを込めて山頂で雨乞いの儀式を行った。すると、にわかに大きな夕立が起こったと言い伝えられている。そのため、このような珍しい名前が付いた。」といったようなことが書かれてあった。
看板を読んだ後、俺といずみは展望台に昇ってみた。片上大橋をはじめ、眼下に東瀬戸内海の島々がひろがり、とても美しかった。俺といずみは展望台を降りた。
「さて、写真の場所はここで間違いないと思うから、明るいうちに下調べをしておきましょう。」
いずみが写真と地図を交互に眺めながら言った。
「そうだね。」
俺といずみはこの時、バイクのことをすっかり忘れていた。
その時であった。突然、目の前に火の玉が現れた。
それも、一つや二つではない、数十個の火の玉が目の前に現れゆらゆらと揺らめいていた。
「何!何なの?」
いずみが驚いて言った。俺も驚きすぎて言葉が出ないほどだった。




