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第39話 やべースキル

 次の日、おそらく朝だろう。朝日のような光が降り注いではいるが、所詮は発光体。本物の太陽とはくらぶべくもない。いまいち気分が上がらない状態で俺はクラスメイト達を解放軍本部にある訓練場に集めた。ユーヴェンスから許可を取ってこの施設は使用している。彼自身、スキルという概念に興味を示していたので、入口付近に立ってこちらを見ている。

「じゃあ、スキルについてなんだけど、こっちの世界に来てすぐにちょろっと話したような気がする」


 俺が言うと、美浜が頷く。彼女はクラスメイト達で唯一スキルを使用したことがある。

「ステータスオープンって言うと、パネルが出てきたと思うんだけど───」


 俺の目の前にウィンドウが出現する。他のクラスメイト達も俺に倣ってステータスオープンしていく。

「メガネに聞かなかったのか?あいつもスキルを使ってたけど」

「聞く前に裏切っちゃったもん」


 美浜が肩をすくめる。

「ああ、そうか───いま説明が出てると思うけど、念じるだけで使えるようになるんだけど」


 俺が言った瞬間、訓練場が凍り付いた。言葉通り、キンッキンである。

「ごめん、加減わかんなくて」


 神崎が気まずそうに謝る。彼の右手が凍り付いている。彼から漂う冷気に身震いが止まらない。

「それ、どういうスキルなんだ?」

「え、零度って書いてあったけど」


 零度、絶対零度のことだろ?さっきのを人に向けて発動してたらやばいことになるんじゃないか?

「他は?」


 体を震わせながら他のクラスメイト達に訊ねるのだが、実のところ寒すぎてそれどころではない。

「俺は剣聖だとよ。刃物ならなんでもいいみたいだが、あいにく持ち合わせてないな」


 尾道が手持ち無沙汰のように腕をプラプラさせる。剣聖か、異世界転生小説の主人公みたいなスキルだな。普通にかっこいいんだが。

「美浜は探知だろ、他は?」

「私のは獄炎だって」

「絶対ここで使うなよ、友達を消し炭にしたくなかったらな」


 獄炎スキルを持っているのは君嶋きみしま則子のりこ、大人しめで眼鏡をかけた、いかにも優等生といった風貌の子だ。ギャップ萌えというかギャップ燃えか。やべースキルが出てきたな。


 他にも衝撃波であったり、投擲、シールドなど、多種多様なスキルが出てきた。戦闘向きなものが多かったが、それ以外も応用次第では強力なスキルに変わるだろう。俺の浮遊スキルだってそうだ。浮くだけだと思っていたけど、今は強力なスキルへと成長している。自分より何倍も大きな敵を打ち倒すほどに。

「このスキルを駆使していけば、危ない目にあっても何とかなるんだ」

「へえ、式守は何とかしてきたって訳か」

「まあね」


 しばしの沈黙ののち、ユーヴェンスが天井を指さしながら言った。

「これ、元に戻してね」

「あ、すいません」


 神崎が頭を下げる。全員を訓練場から出したあと、君嶋に氷を溶かしてもらおう。俺はそう思いながら腕をさすった。寒すぎる!





 その後、訓練場が消し炭になったりして大目玉を喰った後、俺は尾道と美浜と、バスの件を話し合っていた。

「俺の持ってたこの金貨、かなり貴重な奴らしくてさ。これを欲しがってる奴がスラム街にいるらしいんだ」

「それで?」

「そいつは収集家でな、珍しいものを集めてるらしくて、バスも持ってるんじゃないかって」

「なるほどね、こっちの世界じゃバスは珍しいだろうしね。その金貨で取引を持ち掛けるわけだ。いいんじゃない。問題はその収集家がバス持ってなかったときでしょ」

「心配ない。そいつ、スラム街の女王ってやつの側近というか、近しい立場にいるみたいで、人脈も広そうだから、それを駆使してバスをこちら側に持ってくることができるかも」


 俺の作戦に尾道と美浜が納得したように頷く。が、すぐに顔が曇る。

「そのスラム街にはどうやって行くの?それにその収集家がどんな奴かも分かってないんなら意味なくない?」

「ああ、確かに。でも、それなりの身なりはしてるだろ。貴重なアクセとかつけてそうだし」


 収集家が誰か分かりやすい格好をしていることを祈るよりほかないが、目下の問題はスラム街まで行く方法である。

「うーん、どうやって───」


 俺が腕を組んで考え始めたとき、誰かが俺の肩をガシッと抱き寄せた。

「シキモリ君、なに悩んでんの?」

「うわっ、シンシアさん!」


 シンシアは白い歯を覗かせてウインクして見せた。

「なんでも相談してごらん、なんてったって義姉なんだから」


 シンシアは俺とベスが結婚したという体で話しているのだろうか、なんとも気の早い女である。ただこれは絶好のチャンスである。

「シンシアさん、俺達をスラム街に連れてってくれませんか」


 シンシア、というかオテントなら解放軍とは関係ないし、面倒事が起きてもすぐに解決できるだろう。そう読んでいた俺はシンシアの予想外の一言に驚愕した。

「スラム街は絶っっ対にイヤ!」

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