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FRY~時を駆けた愛の歌~  作者: 桃井雪
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ココロの奥に

それからは、とにかく話が早かった。



準備のためにといろいろごちゃごちゃしていたものを片付け、機械を操作し準備万端。

指定の場所に雅を誘導し、曲をセット。

そして、雅の歌が始まった。

最近動画番組で新しく放送された曲だ。

雅が歌っている間、麗奈は時々機械を弄っていた。

その時の表情は、さっきまでとは別人。

真剣な表情で、雅の歌を聞き、機械を操作する。

1度歌いきった雅は、納得できないところがあったらしく、麗奈に再度歌う許可を求めようとしたときは

「あー。わかってますよ。2番の第3フレーズのところですよね?外れたのわかりました」

などと言われて、心底驚いた。澪たちでさえも、「あ、どこか納得できなかったんだな」と思うだけで、どこかまではわからない。

だが、麗奈は一発でフレーズまで指摘してしまった。

「ここ、転調厳しかったら編集でなんとかなりますけど、どうします?」

「フレーズ前の息継ぎ目立ってましたよ。前の間空いてるところでしっかり吸ってください」

「一ヶ所音声入らなかったぁぁぁ!ごめんなさい!ごめんなさい!!」

などなど、多々色んな声があったが、結果的には30分で終了。

思った以上に、早かった。

帰ってきた雅も、心なしか表情が晴れ晴れとしている。

「お帰り、雅」

「.........やべぇ」

ただその一言らしい。目が輝いていた。

「俺からしたらなにやってるかわからねぇが、とにかくすげぇことはわかる」

「人を信じるって大切ね」

唯夏がぼそっと言った。

すると、ずっとこちらに背を向けていた麗奈がこちらを向いた。

「録音した雅さんの歌に編集ほどこしたらもう動画としてアップできますから」

「は、はえぇ......」

「これが仕事です。わかってもらえました?」

イタズラっぽく笑う麗奈。

そんな麗奈の頭を、陽智はわしわしと撫でた。

「信じてよかっただろう!麗奈は天才だからな!」

「ちょっ、やめてお父さん...!」

「ははっ。親バカか」

「まぁ、そんなところですねー」

「何度でも言ってくれ!麗奈は僕たちの宝物だからね!」

麗奈が少しだけ遠い目をして言い、陽智があまりにも自信満々に言うものだから、堪えていた笑いが溢れてきた。

みんなして、お腹を抱えて笑った。

全く、本当にこの家族は突飛だな。

目雅はそう思いながら、再度視線を移して---。



(............ん?)



ふと、ある違和感を覚えた。

その原因は、麗奈だった。

陽智に頭をなで続けられ、少しだけまたくしゃっとなってしまった頭を整える麗奈。陽智の視線がそれたまさにその瞬間----。


一瞬、すごく寂しげな顔をした気がした。


(......麗奈?)

しかし、瞬きをする間にまた表情は晴れやかな笑顔になっていた。

(見、間違い...?いや...)

あんな顔を、見間違うことがあるだろうか。

何か不満でもあったのだろうか。いや、でもあれは

不満 ......と言うよりは----。

「雅君、どうかしたのかい?」

「え......?」

突然名を呼ばれた。

雅かはっとすると、みんなの視線がこちらに向いていた。

「あ、いや......」

「......あ、そーだ」

自分の考えに浸っていた雅が、何かしらの言い訳を考えようとしていたまさにその時、ジャストタイミングで麗奈が声をあげた。

「雅さん、歌ったからお腹をすいたんじゃありません?」

「へ?」

「あー、そういうこと」

陽智もなぜか納得する。

......が、好都合だ。

そう思った雅は、けろっとした笑いを見せた。

「いやぁ、俺歌ったらお腹をすくんですよねー」

「あっはっは!!わかるわー!」

「だったら、うちで食べていってくださいよ、折角ですから」

思わぬ麗奈の提案だったが、雅を除いた4人は乗り気だ。麗奈も陽智も嬉しそうな表情をする。


こうして、雅たち5人は麗奈の家で夕飯をいただくこととなった。


麗奈は少しだけでも加工を進めておくからといい、このまましばらく地下に残るそうだ。

雅たちは陽智に連れられて、1度1階に戻る。


地下のドアが閉まる前に、雅はそっと背後を伺った。そのときの麗奈は、また機械に夢中になとていて、こちらには気がついていないようだった。

(............)

雅は、複雑な想いを描きながら、背後のドアが閉まるのを見ていた----。

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