信じるよ
小柄な体が目の前にある。
少しだけ怒ったように曲げられた口。
さっきまで寝ていたために乱れた、肩口まで伸びた黒髪。
いや。何よりもそれ以前に----。
明らかに、おかしいだろう。
「君が......プロデューサーっ!?」
「はい。何かご不満でも?」
「いや、不満っていうか......信じられないと言うか......」
雅が率直に言うと、女の子----麗奈は途端にしょんぼりした。
「やっぱそーですよねー。信じてもらえないですよねー。えーわかってますとも」
「え、ちょっ...」
しょんぼり...と言うか、すねた。
さっきよりも口を尖らせる麗奈に、どう接していいかわからなくなった5人はただおろおろする。
すると、麗奈の方に陽智が手を置いた。
「麗奈、メンテナンスは?」
「え?終わってるけど......」
「メンテナンスしたついでに、やってみたらどうだろう?」
それは思わぬ提案だった。
「みんなも折角来てくれたんだ。歌っていかないかい?」
「歌いたいのは山々ですけど......」
5人はまだ現実を受け入れることができていなかった。もうこれは納得するしない、以前の問題であった。ただ単にまだ信じられないのだ。
よく、経験がものを言うと言う。
だがどうみても、中学生と言うのは経験が少なくはないだろうか。中学生と高校卒業生では、明らかに違うはずだ。
----そんなこに、果たして自分達の未来を預けていいものなのだろうか......。
「......あの」
すると、少しおずおずと言った形だが、麗奈が話を切り出した。
「私からも、お願いできませんか?」
「え?」
「信じてくれとは言いません。ただ私は1人のプロデューサーとして、新たに命を吹き込まれた音楽を、多くの人に届けたい。ただその一心なんです!お願いします!私にやらせてください!!」
そう言う麗奈は、すごく熱心な瞳をしていた。
(なんだろう......)
なんだか、惹かれるものを感じた。
そして、麗奈の言ったことは----何よりも、歌い手と言う立場の人間が思うことだ。
曲と言う1つのものは、手の加えようによればなにんでもなれる。
人を元気付けることもできれば、感動させることだってできるのだ。それは、新たな命を吹き込むも同然の話。
麗奈の持っている心は、何よりも歌い手の心に近い
それは、歌い手と共にあろうと思った者が持つ心である。
だとしたら--------。
雅は全員を振り替える。きっと同じことを思っていたのだろう。みな微笑んでいた。
雅は小さくうなずく。
「えっと...麗奈、さん?」
「あ、いえ麗奈でいいです。年下なんで......」
「じゃあ麗奈!」
突然名を呼ばれて、少しだけ驚く麗奈を差し置いて、雅たちはそっと、頭を下げた。
「え..........」
『よろしくお願いします』
きっと、心に届くのは早いだろう。
麗奈はしばらくきょとんとしていたが...やがて、ぱっと顔を輝かせた。
「い、いいんですかっ!?」
「そこまで言われちゃーね。麗奈の熱心さに負けた。あたちは麗奈を信じるよ。頼んだよ、プロデューサー!」
澪の言葉に、麗奈はぐっと目頭が熱くなるのをこらえた。そして、同じように頭を下げた。
「任せてください!!!」
麗奈の本当に嬉しそうな顔を見ると、自然と表情が綻んだ。
「んじゃ、早速だけど」
「はい。準備万端ですよ!」
「誰からいく?」
「手前だから雅」
「安易な決め方だなぁ」
雅はポリポリ頭を掻いた。が、異論はなかったらしい。
「んじゃ、よろしくお願いするよ。俺は雅。よろしく」
「はい!よろしくお願いします!」
雅が手を差し出すと、麗奈は躊躇なくその手を握った。
「----よぉし!やりますよー!!」




