親友だから
7人で結託したその次の日。麗奈は普通に学校に登校した。
何人もの人から労いの声をかけられた。そのつど麗奈は苦笑いを浮かべながら返答をした。
そして教室に入ると、やはり真っ先に清乃が駆け寄ってきた。
「麗奈!!」
「おはよう清乃」
「おはよ…。もう、大丈夫なの?」
「うん。大丈夫だよ。ほんとにごめん。心配かけてごめんね」
清乃に対しては多大な迷惑をかけてしまった。深く侘びを申すと、清乃は慌てて両手を振った。
「そんな!謝らないでよ、麗奈。親友でしょ?」
「…うん!ありがとう」
柔らかな笑みを浮かべると清乃もほっとしたように笑う。
しかし、すぐに顔を引き締めた。
「麗奈、ちょっといいかな?」
「…うん」
清乃は少しだけ声を潜めていった。
「すごい…いいにくいことなんだけど…」
「うん。何?」
「……昨日も、来たの。あいつ」
その言葉に、少しだけドキッとした。清乃の物言いといい、誰を指しているのかはすぐにわかった。
「麗奈がいないってわかったらすぐ帰っちゃったけど…この分なら多分、しばらくは頻繁に来るよ、あいつ」
「…うん。そうだろうと思ってた」
「今日は幸い、移動教室がないからいいけど…どうするの?これから。あいつにあたしから何か言ってあげようか?」
清乃の申し出はこの上ないほど嬉しいものだった。
しかし、麗奈はやんわりと首を横に振った。
「大丈夫よ」
「でも…」
「こうなることは、粗方予想してた。近々…あいつを追っ払おうと思うんだ」
「……でもあいつ、噂ではすごいしつこいらしい、よ…?」
清乃も小さな噂は聞いていたのだろう。すごく心配そうな顔をしていた。
(ごめんね、清乃。ずっとこんな顔させて…)
麗奈はそっと手を伸ばし、清乃の両頬を両手で包んだ。
「え…?」
「ありがとう、清乃。ずっとずっと心配してくれてありがとう。でも…今回は大丈夫。協力者がいるから」
「協力者…?」
「うん…。ちょっとね、1人で考えすぎだって、この前怒られちゃって…みんなで解決しようって話になって。あいつを追っ払う方法、一緒に考えてくれたの」
―――もっと早く周りを頼りなさい!
澪に言われた一言が、頭の中で木霊した。
「今までさ、清乃にも何も相談せずに、自分だけで終わらせようとしたこと、多かった。だから…これからはもう、なるべく隠さないから。清乃にも、ちゃんと話す」
「麗奈…」
「でも、今回。今回だけは、見逃して。これは清乃を巻き込んじゃいけない話だから」
麗奈はそっと微笑みを漏らした。
「清乃が私のこと、すごい心配してくれて嬉しいよ。清乃はやっぱり親友だよ。大好きだよ。だから…これにだけは、首を突っ込んじゃダメ。これは、私の問題だから。私が頑張らなきゃいけない。私自身が、強くならなきゃいけないから」
麗奈の言葉を、清乃はずっと黙って聞いていた。
しかし、そこまで麗奈が話し終わった途端、麗奈と同じように、清乃も両手で麗奈の頬を包んだ。
「清乃…?」
「麗奈のばーか」
「へ…?」
「…首は、絶対突っ込む」
その言葉に、麗奈は少しだけ目を見開いた。でも、清乃はすごく、晴れ晴れしい笑顔を浮かべていた。
「麗奈の親友だからね。どんなことにでも巻き込まれてやるよ!それでこそ、あたしと麗奈でしょ!」
「清乃…」
「…今回のことに、麗奈が関与してほしくないって言うんだったら、仕方がない。これには関与しない。でも、絶対忘れないで。何かあって、もうダメだと思ったとき、あんたにはあたしがいるんだからね!!」
清乃は麗奈の頬から手を離し、その手を麗奈の両肩に付いた。
「忘れないで!私はいつでも麗奈の味方!これからは、隠し事無しだからね?今回は特別だから!わかったね!」
「……うんっ!」
麗奈と清乃はそうして、同時に微笑を漏らした。
(ありがとうね、清乃)
心の中でもう一度礼を言う。
あとは、自分次第、だ。
昼休みになり、清乃と一緒にお弁当を食べている最中のことだった。
「ねぇ、麗奈ちゃん」
突然背後から声をかけられる。振り返ると、クラスメイトの上原さんが立っていた。
「あれ?どうしたの?」
「あのさ、私の下駄箱にこんなの入ってたんだけど」
そう言って彼女が差し出してきたのは、手紙のようなものだった。それを受け取り、裏を確認すると、そこには『漆崎麗奈へ』と書かれていた。
「あれ?これ…私宛?」
「うん。多分、下駄箱1つ間違えたんじゃないかな?」
漆崎と上原。出席番号は前後だ。
「そっか…ありがとう」
「うん。全然いいよ~」
上原さんはにこっと笑ってさって行った。
麗奈はその手紙に視線を落とす。差出人は書いていないようだった。
「……誰だ」
「開けてみれば?」
清乃の提案に賛同し、手紙を開ける。
そして、中身に目を通した麗奈は――――――――。
「……は?」
思わず声を上げた。
「どうしたの?」
「……清乃、ちょっといいかな」
麗奈はそう言って立ちあがる。
「これ、見て」
麗奈はさっき開けた手紙を清乃に見せる。
清乃はしばし手紙に見入って……。ほぼ麗奈と同じ反応をした。
「これって…」
清乃が驚くのも無理はないと思っていた。だからこそ、今すぐに。
「確かめなきゃ…」
「…そうだね」
清乃はそう賛同すると、立ち上がった。
麗奈と清乃は顔を見合わせて同時に教室を出て行った。




