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銀の弾丸《シルバーバレット》  作者: オーコ
1章プロローグ『episode:dreamer』

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1-7 『空白 空白 空白』

一章前編終了。


 アライグマの獣人は刀を直す作業に取り掛かり集中している。零はその前に言われた言葉が頭の中で反復する。


「これはなぁ……空っぽなんだ」


「空っぽ……空白ってことですか?」


「がらんどうとも言う。それを示すように、この刀には銘が無い」


 銘……刀の名前のことか。『刀の在り方』を示すもの、どういった理由でそれを作れたのかを明示するものが銘だ。それが無いということは、作られる理由がないということ。ならばなぜ作られたのだろうか。


「この刀を作ったのは...…えっと……」


「『作ったならば、目的があるはずだ』ってことだろ?……それすらも無いんだ。これは、いつの間にか作っていたものでな」


 ……ん?何か引っかかる。ただ一旦話を聞くことに。


「俺ぇは、相手に見合った武器を作ることを信条にしている。逆に言えば、作る相手がいなければ作らんと決めている。ただ……何でだろうな。コレだけは『作らないといけない』と感じてしまった」


「それって……」


「作る目的も、方法も、意味もない。意思というものが込められていない。だからこそ、この刀には何も無いんだ」






 回想はここで終わる。だが思考は終わらず続く。


 つまり? 『偶然』作った刀が、『偶然』異世界人にピッタリ合うもので、『偶然』あの食堂で出会ったと。いやいやそんな偶然あり得る訳が無い、まだ隕石に当たる確率の方が高く思える。


「結論、あの刀は僕のために作られたものってことだよな」


 フギンの裏にいるムギンと呼ばれる人物が助けたように、彼も何者かに誘導されているのだろう。そうしてグラシルまで誘導され、戦う力を持たせようとしている。もちろん、誘導を無視することもできたが、なければその時点で終わっていた可能性だってあった。


「神様気取って何がしたいんだ?お前は」


 裏にいる人物。それがあのときにいた狼の獣人だとするなら大体の事に説明がつく。さっき言った通り、何かをするならばその裏には目的があるものだ。そしてそれはおそらく。


「銀の弾丸」


 これに繋がる道筋ということなのだろう。





 明日香は思案していた。具体的には3つのことについてだ。

 1つ目に、突如として始まった異世界転移について。その目的として上げられたのは、『銀の弾丸』と呼ばれるものを手に入れること。だがそれ以外の情報が全くと言っていいほど無いのが現状である。

 2つ目に、零について。転移したときにはぐれてしまい、これもまた情報がない。しかし、零は独自で動いているだろうと断定し、そうすれば目撃情報などを統合すれば自ずと見つかる可能性があるため1つ目に比べれば希望はある。


そして最後に……


「……いやいやいやいやいやいや、実際に言われたとしても……信じられないわ」


 廊下でヴォルガードと明日香は会話を交わす。ヴォルガードはその白色の尻尾を少し揺らしつつ、不敵な笑みを浮かべ言葉を紡ぐ。


「だとしても、君がやるべき事に変わりはない。ここに住まう分、働くのが筋というものではないか?」


「よくあんたはその減らず口叩けるわね……はあ」


 明日香は自身の長髪を乱しながら答える。先ほど起きた事象に頭を抱えており、未だに理解と整理が追い付かない状況にあったのだ。

その手に持っているのは、大きく折れ曲がっている1つの紙。


「つまり、私はこれの阻止を目的に動けばいいのね?」


「……その通り。だが始めるのは明日からにしよう。必要な物は言ってくれればこちらで用意する。今日は休め」


「……ええ、わかった」


「部屋まで案内する。ついて来い」







 ギィ……と音がして木の扉が開く。


「ーーここがお前の部屋だ」


 中にあるのは、ベットにクローゼットや化粧台、他には木で作られた机や椅子といったものがある。質素な部屋となっているが、何とも言えない違和感が明日香の心にあった。例えるならホテルの一室に近いものを感じる。


「結構しっかり綺麗にしてるのね」


「……定期的に掃除しているからな。私は仕事を終わらせてくる。」






 ーー5秒、10秒、3分、8分、10分。もう何分経ったのだろうか。

 周りをもう一度見て、ベットを見つける。

 そうして、何も考えずにベットに残りの全力でダイブする。

 そして、言葉が漏れ出てくる。


「…………はぁ……………ねぇ……………どうしろって言うのよ」


 ぐちゃぐちゃした感情。突然始まった依頼。なぜヴォルガードが簡単に手を貸してくれたのか。その全てがこの一枚の紙で説明がついてしまう。

 彼女は、考えをまとめ自分に言い聞かせるように口に出す。


「ーーーー【神託】」


 【神託】それは世界の意思であり、予言であり、指令である。いつ、どこで、誰が、それら一切が不明。強いて言うなら、何らかの大きな事象があった時には裏に神託が関わっていることが多いらしい。

 それは天から来る声のように聞こえてくるらしい。「らしい」というのも、ヴォルガードですらその神託が下ったことは一度もないとのこと。それを言っていた時の彼、なんというか色々と思う所があるのかものすごい険悪な顔になっていたけど……あんな顔。二度と見たくない。


「らしい、らしい、らしい。ここまで信憑性のない事象は初めてよ。普通に考えたらそんな情報を信じるわけがない。でも、この世界では何よりも優先されるほどに大事なものになっている」


 その一端になっているのが、6年前に起きた「魔獣大戦(スタンピード)」と3年前に起きた「聖部隊消失事件」どちらの事件も世界を揺るがすほどの事件であり、グラシルが滅びる可能性もがあったほどの事であった。そしてこれらを解決に導いたのがその神託。だからこそ彼らは大きな信頼を寄せるという。


「そんな神託が私たちに下った訳だけど……色々と突っ込みたいことが多すぎる」


 手元にある紙を見て、ため息を吐く。その紙は神託の内容が書いてあり、ヴォルガードから渡されたものである。いわく、この紙自体も自身を巫女と呼ばれる者から渡されたとのこと。そしてその内容は、明日香の手には大きく余るものだった。


『純白の狼がグラシルを滅ぼすだろう』


白い狼?いったい誰のことを指して……


ここに来るまで相当飛ばし気味で作ってきたので、少しペースを落とします。その分描写やキャラ設定を魅せていくのでお楽しみに

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