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銀の弾丸《シルバーバレット》  作者: オーコ
1章プロローグ『episode:dreamer』

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7/10

1-5 『臆病な刀、不器用な大剣』

垂れ耳イヌ系獣人いいですよねぇ。好青年系総受けだとより推せる。

「そういった奴らとは何度も死闘をしたんだ。これくらいで止まっていられないんだよ」


 刀の柄に手を添えるように持つ。右手を前に、少し間を空けて左手を後ろに。そのまま刃を上にする形で頭の横まで持ってくることで構えが完成する。


 その構えをこの場で知っているのは零と老人のみ。更に言うなら、この構えの意味を知っているのは後者のみ。


「その構え……ッハハ」


 彼は嗤う。皮肉るように嗤う。その姿、その構え、既視感。彼はある者を想起させるには十分すぎる材料だった。


()()()()()()。お前さんにはその覚悟と力があるというのかい?」





「そこっっ!!」


 振り抜いた刀は、突き出された虎の獣人の腕を正確に切り裂く……はずだった。


「グッ……どうしたぁ!?それくらいでへこたれるとでも思ってんのか!?」


「さっきからずっと効いてない……確かに切っているはずなのに……」


 感覚的に当たってはいるのだ、当たってはいる……だが、切れてはいない。刀を扱ってこんな感覚は初めてだ、端的に言って気持ちが悪い。単純な硬さや技術とは違う、何かがある。

 何が問題だ?斬撃を無効化する能力でもあるのか、それともこの刀が問題なのか?なんというか、攻撃が無効化されているのではなく、攻撃したとしてもダメージが0になっているのか……。


 待って、今一瞬引っかかった。

 最初から確認しよう。まず斬撃無効化は違う。無効化というのは起きた事実を捻じ曲げるようなもの。今回なら『切られた』という事実を無かったことにする必要がある。原理上ほぼ不可能だ。

 次にこの刀では切れない可能性。これは暫定的だが無いと感じる。持っただけで分かる重心バランスの良さと攻撃の余波で切れている物が証明している。これは相当な業物だと、ありえない。


「つまりダメージを食らっていない……?」


「何呆けてるんだぁ?はぁあっ!!」


 蹴りをいなしつつ一度離れる。足蹴りの瞬間に押し出された空気の圧は、頬をかすめて冷や汗をかかせる。さっきからギリギリで回避してはいるが、正直言ってなぜ対応できているのかは自分でも分からない。いつもだったらここまでの攻防はできていなかったのに。


「ここに来てから調子がいいような……?」

 

 しかし、状況は一向に悪い。なんとか拮抗を演じられているが決定打がないのだ。これ以上戦いが長引けば負ける。つまり、この場で最適な答えを叩き込む必要がある。

 刀以外で打開できそうなもの、見回しても武器になりそうなものはない。机、論外  皿、フォーク、スプーン、まだ刀のほうがマシ  あとは椅子……いや、これなら。


「見逃させてくれないか……なぁ!!」


 刀を納刀、椅子を足ですくい上げ、そのまま開けた右手に持ち最速で顔面に投げつける。意表は突けたとしても、それは一瞬だけでましてやダメージにもならないだろう。だが一瞬だけ、少しでも注意がこちらに向かなければいい。


「こんなものでなんとかなるとでも……何?どこに逃げやがった?」


 逃げたのではない、僕は……


「後ろだッ!」


「んなっ」


 瞬間、抜刀









 「取った」そう思っていた。

 完璧に不意を突き、投擲で視界を潰しつつ勢いを利用し背後に移動。逃げたと思わせるために言葉で誘導し、変に暴れられる事や不確定要素を潰すためにわざと直前で場所を知らせることでもう一度怯ませ対応不可な一閃で決める。

 自分で言うのもだが、完璧に等しい攻撃だったと、防げるものではないと考えていた。


「こんな安っぽい一撃で傷つくとでも思ってんのか?」


「掴みッーー!!片手で!?」


 反応で来たとしても、太刀筋を読めるはずがない……山勘で対応したのか!?


「おいおいこれくらいで驚かれても困るぞ」


 掴まれた刀に力が入り、離そうにも離れない。虎は掴んだ刀を持ち上げ、こちらの顔をまじまじと視る。その顔は、口角が上がり、瞳孔が強く開いている。そして、勝利を確信し、零へと言い放つ。


「もっと、遊ぼうじゃねぇか」


 このまま奪い取るつもりか!?まさか、このまま力を入れてーー


「クッ、マズっ」


「残念だが、刀はもう飽きたんだ」



ーーーーーーー折れ、

 その時だった。


「すまんが、そこまでだ」


「「!?」」


 目の前に突如大柄の獣人が現れ、突如衝撃が零と虎の獣人を分断する。理解が追いつかない。


「何が起きた?急に誰かがーーもしかして、刀の持ち主?」


 その声は、刀を借し出した者と同一だったのだ。


「持ち主。いやあ、違うな。その剣はお前を主に見定めた。ならばそうだな、『創り主』と言う方が合ってるだろうなぁ」


 横入りしてきた獣人は、手元にある刀を上から下まで眺め、鞘に納刀する。刀を手放したつもりはなかったが、いつの間に


「これ以上戦ったら折れてしまう。もう少し精進するんだな」


 ゆっくりで、特徴的な声。決して声量が大きいわけでは無いはずなのに、なぜか透き通って耳まで届くほどの存在感を感じさせる。その姿は笠を深く被り、目元が見えないがかろうじて見える口から胸元までの特徴、その胴長な体系と黒っぽい尻尾から見て。


「たぬーー」


「アライグマだ」


 突如怒気のこもった声で遮ってきた。


「えっ、あっ……すみませんでした」


「おいおい俺は他所ってかぁ!まだ勝負は、」






 おそらく、僕が未熟なのだからだろう。2人の動きについてこられなかったのは。


「ーー【安命】」


 鞘を左手に持ち、右手で刀を持つ。そして鞘から、いや、刀から鞘を抜く。刀は一切動かず、地面と平行に真横を向き、高さは肩の位置から一切動かない。そう、動いていないはずなのだ。

 だが、一瞬だけ感じることができた。


 これを食らったリベルは後にこう語る。

 零が放った一閃より、より重く、より早く、より洗練された一撃。そしてそれをーー両の指で数えきれないほどの回数、何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も切りつけられたのだと。


 しかし、零は後にこう語った。

 彼が放った攻撃はたった一撃。その技は究極にまで洗練されており、無駄や非効率を極限まで削ぎ、ただ一点に全てを込めた一撃。無駄がないから、一つの攻撃が2つ、3つ以上の力を持ち、食らったものはまるで何度も攻撃を食らったかのように錯覚する。

 ただ、その一撃はーー


「安心しな、死んではいない」


 リベルの戦意を喪失させるには十分なものだった。


 相手を生かし、意思を殺す。それこそが、「生かして殺す」本質。はるか先の技術に魅せられた零もまた、制されてしまった。


「女将さん!片付けは今伸びてるやつにやらせてやれ。代金は後で払う。

ーーさて、おめえさんなぁ。ここの者(グラシルの住人)じゃないだろ?」


「……はい。外から来ました」


 【外から来た】これは嘘でも偽でもない事実だ。ただ、住む世界が違う(別のセカイから来た)だけの事。


「この刀やらその戦い方やら。まぁ、聞きたいことがたくさんあるんでな。ちいとうちの工房まで来てくれないか?ーーそうだな、寝床くれぇは出してやる」


 渡りに船、というものだろう。明日どころか1時間先まで考えてなかった零にとって、その提案を否定する理由など一つも無かった。


フギン「私は?」


この後、出る直前で回収されました。


今日の一口小ネタ:獣人の種族によっては、食べられるものや食器などが違う。場合によっては命に関わる場合があるため、料理を提供する人たち全員、資格を持っている。(医師資格の一個下くらいの難易度)


?:【安命】の攻撃がよくわからん!無数の連撃か究極の一撃どちらが正解だよ!

A:どちらも正解


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