1-3 『文化交流に飯は最適』
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たまに「コレは夢だ」と自覚して見る夢がある。意識がはっきりしているのか、それともそういう設定なのかは分からない。しかし、今回に限っては夢と理解できていて良かったと、そう感じてる。
【私は小さな苗木を埋め、土を被せることを延々と繰り返す。そんな行為を誰かに褒められることも、貶されることもない。孤独は心を蝕み、卑屈にする。だが私は立ち続ける。雨だろうと、風だろうと、全てはーーーー】
「そろそろ起きての!」
「ーー!!」
底まで沈んでいた意識が引き戻された。さっきまで、なにか別の意志のようなものに引きづられていた気がする。一時しか寝ていなかったが、その夢はまるで何千年もそこで生きていたような⋯⋯狂気に近しい意思で動かされていた。
まだ夢を見てるんじゃないのか?今まで起こったことすべてただの幻想じゃないのか?例え夢だとわかっていたとしても、その数瞬は年単位で圧縮された結果あたかも現実のようになっていた。しかし、どれだけ頬をつねったとしても(現在進行形でフギンにつねられている)夢から覚めることはない。つまりこれは現実であり、やらなければならないことはあるのだ。問題が解決しない以上は、また足掻くしか解決することはないんだ。
「おーい。起きてるの?大丈夫?」
「⋯⋯ちょっと夢見心地が悪かっただけだから大丈夫。しっかりとしたベットが欲しいよ」
「あと少しの辛抱だから頑張って!」
目の前にあるのは高くそびえ立つ城壁。それが街を囲うようにそびえ立っており、中が完全に見えないようになっている。零とフギンの2人は現在、検問前の列に並んでその時を待っている。零たちの前にいる人々が荷台を率いていたので、厚意に甘えて日陰で休んでいたのだった。
「いや、まだ中に入ってないからよく分からないけど。だとしても本当に広いね……って、そういえば検問はどう突破するの?僕は部外者だし、よく分からない奴だよ?」
「まあまあフギン様を信じなさい!」
「お、お~~」
乗っかかった船は豪華客船か泥船か。今それが試されている。
「次の方!こちらまで来てください」
10分ほどで通ることが出来た。グラシルの住人同伴なら簡単に出入りできるのはなかなかに凄い……日本なら厳重な手荷物検査やらパスポートが必要だから、それと比べれば本当に軽い感じで街へと入れる。こういうのを拍子抜けというのだろうか?ともかく、容易に入ることができた。
「グラシルは外から入ってきた人が多いからそういうのに優しいの!ーーさぁ、そろそろ街に入るよ!」
少しづつ巨大な扉が開いていく。まるで待ってましたとでも言うように少しづつ開く速度は速まっていく。その速さは人の手で開けているにしてはとても早いからだ。そしてーー
「わあ……」
「グラシルへようこそ!ここでは誰もを歓迎するの」
目の前に広がるのは石造りの家にところどころで巨大な建物が並び、道に装飾などが合わさっていかにもファンタジーらしい雰囲気が広がる。町の人々の話し声や音楽がどこからか聞こえ、人の営みが活気となる。そうした活力が「生きている」という実感になり、地に足がつく。
[感無量]という言葉はこの気持ちを表現するためにあるのだろう。
「ここが⋯⋯グラシル⋯⋯」
虚構が真実となった時、または夢見た場所が現実になった時に人はある種の達成感を感じるという。それと零は同じような状況になった。零にとってグラシルは、夢のように見ていた自由に生きれる場所そのものであり、そうしてたどり着いた世界に憧れを抱くのは当然の行為だ。
「ーーーーーーーー」
息が詰まる。いや、言葉が出ないという方が正しいだろう。しかし、そう錯覚してしまうほどに見とれていた。
「ーーまだ帰らなくても大丈夫だし⋯⋯ちょっと遊ぼうなの!」
フギンから強く手を引っ張られながら走っていく。自然と、口角が上がっていた。
フギン「その服装じゃ浮いちゃう⋯⋯服屋さん!この人に合う服装お願い!」
服屋「あいよ!料金はどうするんだい?」
フギン「後で払うの!」
フギン「パパっとお金を稼ぐならやっぱり依頼達成!さぁ準備はいいの!?」
零「服屋のツケと今日の宿代稼がないといけないから拒否権がない」
フギン「いよぉし!やったるぞー!」
零「ちょっっ、早すぎ⋯⋯」
フギン「そっち来るよ!」
零「刀があればなぁっ!!」
こちらに向かってくるイノシシの様な魔物に対し、その背を台と見極め片手を突きつつ宙返りをする。その先にあるのは即席トラップの落とし穴。とっさに止まれなかった魔物はそのまま穴にダイレクトインする。
フギン「捕獲任務達成!」
依頼者「ありがとうございます。こちらがお礼です」
零・フギン「「おお~~!!!」」
そうして今、僕たちは食堂でご飯にありついている。
「よく食べるねぇ~~!これ、私からのおまけだよ!」
目の前に大量の元イノシシの肉が置かれる。2人はフォークに肉を刺し、口の中に運び、咀嚼する。
「……おいしい」
想像を超える味ではなかった。確かに、日本の肉と比べればレベルは低いだろう。調味料やら調理法などで超えられるものはない。ーーしかし、
「えっ涙!?大丈夫!?あの時ケガをしたの!?」
自分の力で勝ち取った物は、何事にも代えがたい達成感と幸福感をもたらしてくれた。
「いやっ、そうじゃ、っっなくて。肉がおいしかったから」
「あんな大物、最近じゃ取れる事が少ないしねぇ。ーーまぁ、そう言ってくれると私ゃうれしいよ!」
全部食べようと早く、しかし一つ一つ味わいながら食べていった。
「……あっフギンの分の肉まで食べられてる!これは私の物ー!」
「はぁー。食べた食べた」
いつもなら小食だが、今回だけは倍は食べられた気がする。一口の満足感も倍なので4倍楽しめたということだろう。一食で一日より上の満足感、文字通りやみつきになるものだった。
フギンはというと、完全に寝ている。今日だけで遺跡の往復やら町の探索やら依頼の達成と……まぁ、色々なことを手伝ってくれたからより楽しめたんだ。
「さて、ムニンさんの所に…………………………」
ここで一度整理しよう。
フギンからの証言により、ムニンという人物は零の転移を見抜いていた。場所、人物、状況、ここまで揃えば転移について……つまり同じく転移した明日香を知っている可能性は高い。だから、ムニンの所在を知っているフギンが案内役となっている。
それでは、現在のフギンの様子は?
「……ZZZ……ZZZ」
「完っっ全に寝てるなぁ……」
よくこの喧騒の中で寝れるもんだ。なんというか、アレだ。昼の五時くらいにファミレス行って時間潰していたら、いつの間にか家族連れが来て騒がしくなってる時の感覚に似てるのだ。何とも言えない疎外感を肌で感じる。
僕も、眠いかと言われたら眠くないわけではない。瞼が重く、頭がはっきりとしない感覚がある。
「……ん?」
だからだろうか。それに気づけたのは。
「……ツノ??」
白く少し光が灯っている、例えるならシカやトナカイに近いツノが、フギンの頭に見えた。幻覚が見えているのだろうか?そう思い、そのツノを触ろうとする。
しかし、眠気のほうが勝ってしまいそのまま倒れるように机に伏してしまった。
「……おい……おい!」
「……ん?なんでしょうか?」
未だぼやけた視界に映るのは、ギリギリ輪郭だけが見える虎の獣人。
「人の店で寝るとは随分高く止まっているようだな」
どの口が言っているのか……うわっ酒臭っ!?どんだけ飲んでるのこの人!?
「気に食わねぇ、その我が物顔してるところが気に入らねぇ!!」
振り上げられた拳は、そのまま零の顔面へ当たろうとしていた。
獣人と魔獣の一番の違いは理性の有無です。さらに獣人を襲うので基本討伐が推奨されている。
今日の小ネタ:零の夢は警察官だった。昔、1人で迷子になっていたところを警察官に保護されてそれから目指すようになる。




