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異世界盗賊は現代最強のトレジャーハンターになれますか?  作者: 須藤 蓮司


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87/89

87.~創世神話~ オルテックス事変⑩

本日二話更新予定です(1/2)

二話目投下は19:00予定

『やっ…やめろっ!!お前…こっちに来るなっ!!』


『オイオイオイオイ…さっきまでの威勢はどうしたんだよ?逃げないんじゃなかったのか?』


 すっかり腰が引けたマリアが、俺から逃げつつも手に持ったナイフを振り回す。

 まるで届かない距離だが、直線状は危険なのでしっかり避ける。

 …なにせ奴の斬撃には、距離の概念が無いからな。

 なんというか…「切りつけたという事象のみを、別の場所に移動させている」って感じなんだよ。

 …きっとこの攻撃のタネも、マリアの「別次元」に移動する能力と関係があるんだろうな。


 引きつった表情のマリアの視線は、俺の手元を注視したまま。

 …正確には、見えない【虚鉱(ホロウナイト)のジャンビーヤ】の存在を恐れているのだろう。

 …いや、アイツには見えているのか?

 マリアの本体と、消失した【虚鉱(ホロウナイト)のジャンビーヤ】は…恐らく同じ次元に存在しているんだからな。


 肌を切り裂かれる、初めての「痛み」…今まで体験したことの無いソレに、マリアは完全にパニックを起こしているようだった。


 …傍から見ると、俺が少女をイジメてるみたいに見えるかもしれないが、それは大きな間違いだ。

 俺の着ている強化服【アヴァロン・レイヤー】は、人体の能力を最大16倍にする。

 そんな強化状態の俺に、マリアの奴は生身で張り合ってるからな。

 流石、造られた人間(デザインヒューマン)ってトコか。


 身体性能はほぼ互角…だけど、パニックを起こした奴の攻撃は大振りで精細さに欠けていた。

 一方俺の攻撃は、深手にはなっていないが確実にマリアの身体を切り裂き、傷を付けていく。

 その小さな傷が与える未知の感覚、「痛み」…そして「恐怖」が、マリアを更に追い込んでいく。


『痛い…痛い…!!…ふざけてる…!こんなの、おかしい…!!』


『…違うな、傷付くってのは本来痛いもんなんだよ。…傷付かなかった今までの方がおかしかったんだ。』


 俺がそう言うと、マリアはキッとこちらを睨みつけて叫んだ。


『…お前ぇっ!調子に乗るなよアリババッ!!私が魔道兵装【チャリオット】を持ち込めていれば、そもそもこんな事にはなっていなかった!!』


『それは…そっちの都合だろ。そもそも俺の事を格下だと舐めていたお前が悪い。』


 激昂したマリアがナイフを振るう。

 俺はその攻撃を横に飛んで避け…そのままマリアの死角へと回り込んだ。

 急接近した俺に気付いたマリアが、ハッと我に返るが…もう遅い。


 見えない【虚鉱(ホロウナイト)のジャンビーヤ】が、マリアの左腕…ナイフを握った腕を切りつける。


『ひっ…!!』


 今までよりも深く、肉を切り裂いた感触。

 …カランカランと音をたて、マリアのナイフが床に転がり落ちる。


『…もう諦めて撤退しろよ?今退くなら、命までは盗らねぇよ。…俺は「盗賊」だからな。』


『くそっ…クソクソクソクソッ…!!!』


 あらら…キャラ崩壊しちゃってるよ。

 お前、口数の少ないクール系キャラじゃ無かったっけ?


 …そんな事を考えていると、マリアの表情が突然スッと消えた。



『アリババ…お前、自分が有利になったとでも思っているのか?…フフッ、それは大きな勘違いだ。』


 今度はうっすらと笑みを浮かべている…お前、結構忙しい奴だな。


『…どうせもう遅い。この劇場は三万体の【APOSTLESアポサルズ】に包囲されている。…既に内部に侵入を始め、制圧を開始している…お前等に、もう逃げ場は無い。』


『さ…三万体っ!?』


 マリアの言葉に思わずギョッとしてしまった。

 そして…思い出した。

 以前、湯取の魔眼に操られたエリシア・フロストレインが漏らしていた。


(…マリアが運用試験中の「クローンサイボーグ兵」が、現在約2万体…なおも増産中…。)


 …アレって【APOSTLESアポサルズ】のコトだったのか…()()()()()()()()サイボーグ兵…か。

 …しかもしっかり増産されてやがるし。


『お前のそのナイフは、確かに私に傷をつけた。【APOSTLESアポサルズ】にも通用するだろう。…けれど、数は力。そのナイフ一本で、三万体の【APOSTLESアポサルズ】を相手にするのは不可能…フフフッ…。』


 不気味に笑うマリアの身体が、空間に溶けるようにスゥッ…と消えて行く。


『この勝負は…私の負け。けれど…「オルテックス」の勝ち。』


 …その勝ち誇るような言葉を最後に、マリアの気配が完全に消失した。


 逃げた…か。


 マリア・ニェチェリナ…造られた人間(デザインヒューマン)、か。

 …俺らしくも無いが、アイツには少し同情してしまった。

 

 アイツはオルテックスによって、造られた人間…。

 そして…アグニの話が真実なら、俺も異世界で何者かの干渉を受けていた――

 ある意味、「造られた人間」だからな。


 …マリアの話を聞いた後、妙な気分になっちまって…命のやり取りをする気にならなくなっちまったのが本音だ。

 もっとも、アイツはその運命に疑問も持たず受け入れ…俺は抗う道を選んだんだがな。


 …ガラじゃあ無いな、やめやめ。



 さてと…とりあえず、これで一段落ついた…のか?

 まぁ、なんか敵に包囲されてるらしいが…まずは【ポーション】でも飲んで落ち着こう。

 さっきから【アヴァロン・レイヤー】の高速移動に、身体が悲鳴を上げっぱなしだ。

 

 …とはいえ、あまりゆっくりもしていられないがな。


 俺は【ポーション】を飲み干すと、目の前に立ちふさがるアノマリー保管庫の重厚な金属扉を【鑑定】で見分する。


 …電子ロック、指紋認証に網膜認証…。

 扉や壁はタングステンが主成分の超硬合金…こりゃあすごいな、1m厚もあるぞ。


 …流石の俺も、このレベルの扉に【解錠】を使った経験は無いが…ま、最悪【プラズマカッター】で焼き切ろう。


 俺は右手で扉に触れ、スキルを使用する。


『…【解錠】!』


 ビー!…という聞き慣れない電子音、そして数秒遅れて「ガコン」という重い音が鳴り響く。

 …どうやら問題無く開いたみたいだな。


 流石レベル99の盗賊スキル…いや、マジでどうなってるんだろう。使ってる俺でも理解不能だわ。


 保管庫内部へと入ると、そこは壁と天井、床の六方を金属壁で囲まれた…正に巨大金庫。

 中央には大小の鍵付き扉が幾つも付けられた、巨大なセーフティボックス。

 …扉に書かれた数字は、オークションのロットナンバーか?


 へっへっへっ…良いね良いね!正にお宝の山…!!

 テンション上がって来たぜ…!!


 …よし、さっさと回収作業といきますか…!

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