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異世界盗賊は現代最強のトレジャーハンターになれますか?  作者: 須藤 蓮司


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84.~創世神話~ オルテックス事変⑦

『ハッハァッ!!ゴキゲンだなぁ墓荒らしっ!!俺の【ヘカトンケイル】相手にこれだけやり合えるとは…流石はオルテックス・インダストリー謹製の神話兵装だぜっ!!』


 ムチの様に唸る無数の百足…実際は触手か副腕みたいなモノなのかしら?

 …まぁ、とにかく薄気味悪いソレをいなし続ける。


 このままこの状況が続けば、ジリ貧。

 …攻勢を仕掛けるなら今しか無いっ!!


「カーリストラ、【反発結界】前面展開っ!!」


『OKっ!!』


 応える声と同時に、カーリストラの前方に半球状の【反発結界】が展開される。

 【ヘカトンケイル】の猛攻が結界によってはじき返される!

 

『…あっ?』


 腕が空いた、チャンスッ!!


「カーリストラッ!!」


 腕部側面に格納されていた「電極」が飛び出す。

 同時に左右の上腕から下腕に向かって、アーク放電の鮮烈な光が走った。


 …例えるならソレは、二対の巨大な糸鋸。


()()()()()()()()!!』


 乱暴に、薙ぎ払う様に振り抜かれたその攻撃は――


 【反発結界】に抑え込まれていた【ヘカトンケイル】ごと、ブラッドノートの身体を細切れに引き裂いた。



 アタシがアリババファミリーに正式加入した際、プシュパカさんは「お祝いに」とプレゼントをしてくれた。

 …今にして思えば、しっかり準備してあったあたり早い段階からアタシの加入は想定していたんだろう。


 アタシには【黒のチャクラ】…カーリストラとの繋がりを深める、指輪型アノマリー。

 …そして、アリババの所有する恒星間探査船「ヴィマナ」で整備を受けていたカーリストラにも。


 カーリストラは、プシュパカさん達の持つ異星のテクノロジーで強化・改造を施された。

 外見はほとんど変わっていないけれど、中身は全くの別物。それはもう、「カーリストラ Ver.2.0」と呼んでいい位に。


 …まぁ、未だエネルギー不足が課題として残っているのだけれどね。

 カーリストラの【サンサーラ・コア】は、中々に気難しいみたい。


 今しがた放った【プラズマカッター】は、アリババがメインウエポンとして使用している【プラズマカッター・デュロス】と同じ技術が使われているらしい。

 数千度のプラズマでどんな物質も切断する…強力な近接武器。

 だけれど…これもまたエネルギー消費の面で、あまり乱発は出来ない。


 それでも…制限はあるものの、効果は絶大だったわね。


『うわぁ…すっごいねマリー!あのキッモイのがコナゴナのバラバラだ!!』


「…本当に。まさかこれほどの威力だとはね…。」


 魔道兵装で造られたダリオ・ブラッドノートの身体は無数のパーツに切り分けられ、無残にも地面に転がっている。

 …頭部も中央から真っ二つ。

 これでは流石に、ブラッドノートの回復能力でもお手上げだろう。




『…オイオイオイオイ…何だ今のは?』




「…嘘…。」


 左右に分断された筈の、ブラッドノートの口が呟く。

 …眼球が、まるで別々の生き物の様に、ちぐはぐに動き回る。

 

『…AIの件といい…そいつはもう俺の知識にある「カーリストラ」とは別モンのようだな。』


「…アナタ、頭を二つに割られて…何で平気な顔してるのよ…。」


 バラバラだった体のパーツが…それこそ百足や蛇のようにウゾウゾとうねり、一か所に集まっていく。

 そして、破片の端が触れ合ったかと思うと…まるでジッパーが閉まる様に、傷が修復されていく。


『魔道兵装【ヘカトンケイル】は、小さな虫型人工筋繊維の集合体だ。姿形は自由自在…もちろん、それは「頭」も例外じゃあ無いんだぜ?俺が生身なのはもう「脳」だけ…もっとも、その位置は体内で自由自在に移動可能なんだがな。』


 立ち上がったブラッドノートの頭部が、逆再生の様に閉じていく。


『…ああマリー、理解したよ。これが「キッモイ」なんだね。』


 普段は陽気なカーリストラの声に、あからさまに嫌悪の感情が乗ったのが分かった。



『…どうやらソイツは、カタログスペックから逸脱した存在みたいだな。舐めてかかると手間取りそうだ。』


 唐突に、ブラッドノートの身体が崩れるように歪んだ。


 人型の頭部は姿を消し、その全身が細く長く…巨大な百足の姿を模っていく。


「ちょっ…そんなのアリなワケ!?」


『言ったろ?姿形は自由自在だって。さ、惜しいがさっさと終わらせよう。』


 言い終わると同時に、巨蟲姿のブラッドノートが飛び掛かってくる…!


『もう一度切り刻んでやるっ!!』


 即座に構えたカーリストラがプラズマカッターで応戦しようと腕を突き出す!

 眩い閃光を放つアーク放電が巨蟲の頭部を引き裂こうと――


『おっと、ソレはもう喰らわないぜ。』


 ハラリと、ほどけるように枝分かれした蟲が、カーリストラの腕を避ける。

 …それどころか長い体を絡みつかせ、カーリストラの自由を奪う。


 まるでヒドラ…それか――


「…裂けるチーズ?」


『余裕ぶってられるのもココまでだぜ…!!』


 何十、何百という百足の頭が、カーリストラを食い破ろうと迫る!

 自動反応した【反発結界】がそれを防ぐけど――


『あわわ、不味いよマリー!このペースじゃすぐにエネルギーが枯渇するっ!!』


 カーリストラの焦りの声。

 【ヘカトンケイル】一つ一つのダメージは小さいようだけど、あの数を自動反応の【反発結界】で防ぐとなると…とてもじゃないけどエネルギーが持たない…!


 だったら、もう――


「…()()をやるしか無いわね。」


『アレって…マジっ!?成功しても失敗してもボク、動けなくなっちゃうんだけど…!?』


 アタシの言葉に、何をするのか察したカーリストラは途端に尻込みしてしまった。

 言い聞かせるように目の前のモニターに言葉をかけて、勇気づける。


「…どっちにしろ、このままじゃ詰みよ!女は度胸、腹を括るっ!」


 カーリストラにとっては覚悟がいる選択だけれど…アナタなら出来る。

 …アタシは、そう信じている。


『うぅ…わ、分ったよぉ!でも、動きの速い相手に当てられるかなぁ…?』


「それは…大丈夫。…私が何とかするわ。」


 カーリストラに無理をさせるのだもの、アタシだけ高みの見物なんてするつもりは無い。

 覚悟を決めたアタシは、腰元に備え付けられたレバーを引いた。


 …カーリストラの背部装甲が開き、アタシは背面飛びの様に外へと射出される…!

 床に直撃する寸前で回転し、なんとか膝立ちで着地する。


『!?…生身で外にっ!?死んじゃうよマリーっ!!』


「大丈夫、アタシ運だけは良いのよ!少しだけ耐えて頂戴っ!!」


 そう言って、アタシはカーリストラとブラッドノートから距離を取った。

 そして大回りに、ブラッドノートの背後へと――


『…()()()()()墓荒らし。…この期に及んで何をする気だ?まさか…カーリストラを置いて逃げる腹積もりか?』


『よそ見するなんて余裕じゃん、レディーに失礼だよ!キッモイ人!!』


 受けに回っていたカーリストラが、【三連砲(トリシューラ)】の連打で挑発する。

 

『あぁ…?…ちっ、白けるぜ…!』


 【三連砲(トリシューラ)】をいなす様に、分断した蟲で応対するブラッドノート。

 …その時だった。 


『…!?』


 目に見えて急速に弱まる蟲達の勢い。

 ブラッドノートの力が抜けていく――


『なん…だ、コリャァ!?お前等、俺に何をしやがったっ!?』


 ヤツは無数の蟲頭を振り乱し、突如発生したこの異常事態の原因を探そうとする。

 …そして、それはすぐに見つかった。


 自分の身体…細分化した【ヘカトンケイル】の一部に、見慣れぬ「枷」が取り付けられている。


 それはアタシが例の騒ぎの中、どさくさに紛れて拝借した――

 ――【APOSTLESアポサルズ】に付けられていた拘束具、【タルタロスの手枷】。


『封印系のアノマリーか…!?こんなモン、すぐに――』


「すぐに外すでしょうね、アナタなら。…でも、カーリストラにも注意されたでしょう?――よそ見してて大丈夫かしら?」


 

 …バキバキバキッ…!!



 異様な音に、ブラッドノートが振り返る。



 そこで目にしたのは――




 四本の腕で自らの胸部装甲を無理矢理に開き、剥き出しになったカーリストラの【サンサーラ・コア】――




『なん…!?一体何を――』




『さっすがマリー、止まってる相手になら百発百中で当てられるね!』


 脈打つ様に赤熱していた【サンサーラ・コア】が一瞬停止したかと思うと、瞼のような膜が覆う。

 そして再び膜が開くと…そこには、青白い光を纏った【サンサーラ・コア】の姿。



『脳みそごと、全部消えちゃえ!【シャンカラの瞳(分子崩壊砲)】ッ!!』


 断末魔の叫びにも似た甲高い破裂音が響き渡り、青白い閃光が辺り一面を埋め尽くす。


 その閃光は一瞬で、対象を【分子崩壊】させる「滅びの光」。







 …数秒、いや数十秒が経っただろうか。

 光りが治まった後、そこには――



 幾つもの壁と天井を貫く、丸い穴。

 その穴は最終的に劇場の屋根を貫き通し…そこには、雲一つ無い青空が覗いていた。


 …ブラッドノートの姿は、塵一つ残っていない。

 

 これが…【シャンカラの瞳】の威力…分子崩壊って、こんな風になるの…?



 …ガシャンッ、という音に我に返る。

 そこには力無く膝をついたカーリストラの姿が。


「カーリストラ!!大丈夫!?」


『…マリー…なんとか無事だけど…腕部大破、おまけにエネルギーが空っぽだよ…。』


 【シャンカラの瞳】の余波を受けたカーリストラの腕は、四本とも前腕部が綺麗に消失していた。


「ああ…カーリストラ…ごめんなさい!無理をさせてしまって…!!」


『良いんだよマリー、結果的に二人共無事だったんだし!…でも、ちょっと僕、限界かも…。』


 カーリストラの【サンサーラ・コア】は元の赤色に戻っていたが、光が弱々しい。

 …エネルギーが枯渇寸前、緊急停止一歩手前の状態だ。


『…悪いんだけど僕、ヴィマナに戻って良い?プシュパカに直してもらわないと…。』


「…もちろんよカーリストラ、お疲れ様。…本当に、ありがとうね。」


 カーリストラの三眼が不規則にチカチカと点滅した。

 プシュパカさんに回収依頼の連絡を送ったのだろう。

 …すると、カーリストラの背後に空間の断裂が発生…こっちに現れた時と同じだ。

 プシュパカさんの側から強制コード(マントラ)を使った…のかな?


『マリー…気を付けてね!』


 そう言いながら大破した手を振り、カーリストラは断裂へと消えて行った。


 …アタシは、誰も居なくなった周囲を一人見回す。


 …ダリオ・ブラッドノート…。


 …。


 今は、アリババとの合流を急ごう。

 …懺悔するのは、後で良い。

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