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異世界盗賊は現代最強のトレジャーハンターになれますか?  作者: 須藤 蓮司


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78.~創世神話~ オルテックス事変①

『この星を――我々の支配下に置く。』



 レオン・オルテックスの宣言に、静まり返っていた会場内がにわかに騒めきだす。


 

『誇大妄想も甚だしい…レオン・オルテックスはヒトラーにでもなる気か?』


『いくら世界最大の大企業オルテックス・インダストリーとはいえ、たかだか一企業が世界征服とは。』


『正気じゃ無い、狂ってる。』


『…もう良いだろう?さっさと奴を捕えろ!』


 レオンを非難する罵詈雑言が会場を飛び交う。



 そんな中、一際大きな声が頭上から響いた。


『レオン・オルテックス…貴様がここまで愚かだったとは。少々買いかぶり過ぎたようだ。』


 上層、天幕の向こう…大きな人影がゆらりと揺れる。

 声の主は…カスヴァル共和国の支配者、ハリード・アル=カスヴァリだ。


『…貴様に何ができる?不死の兵を作った程度で、この世界を手に入れられると考えるとは…愚かにもほどが有ろう。』


『おやおや、これは手厳しいですな、ハリード閣下。』


 支配者相手に不躾な態度をとるレオン…その周りを、あっという間に警備が取り囲んだ。

 無数の銃口がレオンへと向けられる。


 それでも、レオンは様相を崩すことなく肩を竦めた。


『…これだから、頭の固い老害は。以前お話ししたでしょう?…手に入れたアノマリーをそのまま使っているような進歩の無い連中、私の脅威にはなり得ませんよ。』


『…もう良い、殺せ。』


 ハリードがそう言い終わると同時に、血柱が上がる。




 ドサッ。




 …ドサドサドサッ。




 首の無い、無数の兵士の死体が、舞台上に転がる。


『…無血革命とはいかないものだな。やれやれ、スーツを汚さないでくれよ?今日は記念すべき日なのだから…。』


 そう言うレオンの隣には、腕を振り抜いた姿で制止する一体の異形…【APOSTLESアポサルズ】。

 …あの一瞬で、それもたった一体で…警備を皆殺しかよ。


『貴方の時代は終わりですよ、ハリード閣下。大人しく現実を受け入れるべきだ。』


『レオン・オルテックス、貴様ぁぁぁぁぁぁっ!!!』


 激昂するハリードの声が、劇場内に響き渡る。


『…もう良い【APOSTLESアポサルズ】、現時点を持って会場を制圧、抵抗する者は始末しろ。「馬場有人」の確保を最優先事項とする。』


 八体の【APOSTLESアポサルズ】が動き出す。



 誰かが最初の叫び声を上げる前に、俺達は動き出していた。


 一直線に会場入口へと駆け出し、その扉を【ブースト】済みの馬鹿力で蹴破る湯取。

 俺へと迫る数体の【APOSTLESアポサルズ】、その眼前に突如として炎の壁が出現し動線と視界を遮る。

 一瞬の隙に追走していたbeeを抱え込み、湯取が開いた脱出口へと飛び込んだ。

 …スーツの下に【アヴァロン・レイヤー】を着込んでおいて正解だったぜ。



 会場から脱出した俺達だが、ゆっくり考えている時間は無い。

 劇場の出口方面へと走りながら皆に伝達する。


「時間が無いから手短に言うぞ!bee、オークションの商品が保管されてる場所って分かるか?」


「え…大体のアタリはつけてあるけれど、アナタまさか――」


「…なに、手ぶらで帰るのも癪だからな。たっぷりお土産を頂いていこうと思って。」


 そう言う俺の表情は、たぶん相当に悪い顔だっただろう。

 …対する三人の反応は、正に三者三様だった。


「ヒューッ!流石アリババ先輩っ!盗賊の鑑っ!!」


 器用に走りながらも子供のように飛び上がり、無邪気に喜ぶ湯取。

 

 …こんな気が抜けたようなヤツなのに、さっきも事態が動いた瞬間、真っ先に皆の道を切り開いた。

 咄嗟に仲間の為に動けるヤツなんだよな、コイツ。

 頼もしいもんだ。


「アナタねぇ…一応、名指しで狙われてる本人なんだけど、自覚ある?」


 呆れた表情のbeeが言う。


 そんな彼女は現在、畳んだままの日傘に、魔女が箒に腰掛けるように座った体勢で滑空している。

 これはbeeの【睡蓮の淑女の七つ道具(シャトレーヌ)】に収納されたアノマリーの一つ、【空飛ぶ日傘】という物らしい。…メリー・〇ピンズか?

 …いや、アレは開いた状態で飛ぶんだっけか?


 まだこんなアノマリーを隠し持ってるあたり、流石というかなんというか…。


『…フッ、この状況下でも得物を優先か?貴様もなかなかに肝が据わってきたじゃないか。』


 俺の隣を滑る様に移動しながら、心底愉快そうな顔のアグニ。


 最近分かってきた事だが、アグニは俺が甘く見られたり、舐められると不機嫌になる。

 …仮にも自分が仕える主、下に見られれば自分も下に見られる…とか考えているんだろう。

 逆に、俺が好戦的・挑発的だったりするとすこぶる機嫌が良い。

 これだから戦闘部族…じゃ無かった、古代兵器は…。


 …俺は、俺の素直な気持ちを三人に伝える。


「だってよぉ、あれだけ準備してきたオークションだってのに、落札した商品すら奪われちまうのはムカつくだろう?…レオンの野郎、最後に出てきて総取りなんて悪い冗談だぜ。」


「それは…確かに癪だけれど…。」


「…それに、俺は盗賊だ!他の事ならいざ知らず、狙った獲物を奪われるなんざぁプライドが許さねぇよ!」


 そう、これはもう沽券に係わる話だ。

 盗賊である俺から盗ろうなんざぁ…舐めた話だ。


「それに…beeだって、『狙った獲物は逃がさない』って言ってたろう?」


 俺がそう言って見つめると、beeは諦めた様にため息を吐いた。


「…ハァ…仕方が無いわね。アタシが保管庫まで先導するから、ついていらっしゃい。」




『…いや、その前に客のようだ。』


 アグニが言うと同時に、俺達に向かって飛来する大量の…氷の槍!?

 振り払ったアグニの腕から吹き出た炎のヴェールが、その大半を相殺する。


「!!…この攻撃っ…!?」


 湯取が急停止し、辺りを警戒するように構えた。

 鋭い双眸が、氷の槍が飛来した方向を睨みつける。


『クククッ…そうだ、流石は俺を倒した奴等…そう簡単には死なれても困る。』


 この声、聞き覚えがある。

 …いや、でもあの姿は――


「…ようオッサン、元気そうっスね?…なんか前よりも若返ったっスか?」


 軽口を叩く湯取の前に、()()()()()()()()()()男が立ち塞がった。


『…皮肉のつもりか?…フン、貴様にやられた後、自らの甘えを捨てる為に全身をサイボーグ化したからな。…全ては貴様をこの手で始末する為よ、小僧っ!!』


 …やっぱり。

 アイツ、『双蛇の霊廟』で殺り合った…A.R.K.制圧部隊隊長、グラウス・ヘルマーだ。


 以前遭った時は左腕に特徴的な魔道兵装を装着していたハズだが…今の姿はだいぶ様変わりしている。


 鈍色に輝く()()()…いや、先程【鑑定】越しに見た情報では、どうやらオッサン…人間を辞めちまったらしいな。


【グラウス・ヘルマー】40歳

 A.R.K.制圧部隊 隊長

 脳以外の肉体を、魔術回路を内蔵した鎧型魔道兵装『デウス・エクス・レクス(DEUS EX LEX)』に換装している。

 E:鎧型魔道兵装デウス・エクス・レクス(ランク:A)


 ランクAアノマリー…!

 つまり、今のオッサンは…「意志を持って襲ってくるアノマリー」ってコトかよ。


 …つーか、オッサン――


「…なんかベ〇セルクの〇ッツみたいだな。…全身コスプレ?」


「あ!ソレ俺も思ったっス!」


 あ、やっぱり湯取も思ってたみたいだ。

 コレたぶん、A.R.K.の技術者の中に濃ゆいオタクが居る予感がするな…。

 …どうせやるなら、身の丈を超えるような大剣も装備してほしい所だ。


『…?ベ〇セルク?…ああ、そうだ。今の俺は正にバーサーカー…お前を殺すために蘇った、狂戦士よ…!!』


 あ、なんかオッサン勘違いしてる。


 まぁ普通はこんな状況下でマンガの話なんてしないもんな。

 オッサンに非は無い。

 …あるとすれば、悪ノリしたA.R.K.の技術者だ。


 そんなヘルマーのオッサンと対峙する湯取が、耳に着けたピアス型アノマリー【憤怒のピアス】を巨大な十字架型戦槌【断罪の十字架】に変化させ、両腕で構える。


「アリババ先輩…どうやらオッサン、俺にご執心みたいなんで。…ここは、『俺に任せて先に行ってください!』…って場面っスね…!」


「湯取…いや、普通にみんなで一緒に戦うって手もあるぞ?」


『有人…貴様、空気が読めん男だな…。』


 …いや、アグニはそう言うけど、実際全員でタコ殴りにした方が安全じゃね?

 それに、俺の【鑑定】が言うには中々に厄介なアノマリーみたいだし…。



【SM-101《デウス・エクス・レクス(DEUS EX LEX)》】ランク:A

 分類:鎧型魔道兵装

 全身に魔術回路を張り巡らせることで、魔力循環により継戦能力が格段に向上している。

 使用者グラウス・ヘルマーは体内に合成魔石「マギクリスタル」を持つ為、実質無制限に魔法を発動できる。

 火・雷・氷に加え、闇の高威力属性魔法を事前詠唱無しで発動可能。

 また、副次効果であった自動防衛機能【反発結界】は改良の末【反発空間】となり、ヘルマーの半径10mでは能力発動不可となった。



「…湯取、ヘルマーのオッサン、かなりパワーアップしてるみたいだぞ?継戦能力が上がってる上、半径10m内は能力が使えないみたいだ。」


「…前のコイツも、【反発結界】っていう厄介な能力を持ってたっス。確かアレ、生半可な威力だと反射されるんスよね。でも俺ってば、パワーだけなら誰にも負けない自信があるんで…ここは任せてくれませんか?」


 …う~ん、【反発結界】…今回の【反発空間】もパワー押しでイケるのか?

 …ヤツからすれば前回の敗因なワケだし、たぶん対策されてるんじゃないか?


「…アリババ、『仲間を信頼する』のも、リーダーの役目よ…?」


 bee…。


 …。


「…ったく。先に行って、保管庫のアノマリー搔っ攫っておくから、お前もさっさと来いよ!」


「ウス!すぐに追っかけるっス!」


 …なんだか、マジで『双蛇の霊廟』の時のやり直しみたいだな。

 …信じてるからな、湯取!


「…湯取君、本当に危なくなったら逃げるのよ?」


「大丈夫っス!再生怪人は弱いって、相場が決まってるんスよ!」


 …。


 …。


 …お前それ、仮面〇イダーの話だろ…?

 …本当に大丈夫かなぁ…。

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