73.カスヴァル共和国主催『闇オークション』③
遂に始まったカスヴァル共和国「闇オークション」。
最初の商品は【長命】の加護がついたアノマリー【魚石】。
俺はそんなに興味無かったんだけど、仲間に煽られて競り合いに参加した。
…その結果。
『ほ…他にございませんか!?それでは…ロットナンバー001番【魚石】は、108番様がなんとっ!!300億カダールで落札でございますっ!おめでとうございますっ!!』
ザワッ…ザワザワッ…。
なんだ?なんか会場がざわついてるけど…。
…もしかして俺、何かやっちゃいましたかね?
…なーんちゃって、ハハハ…。
「せ…先輩、しょっぱなから全力っスねぇ…流石っス!!」
「アリババ、アナタ…いきなり大幅に金額を吊り上げるのはマナー違反よ?…それに、いきなり300億カダール…30億円も使っちゃって大丈夫なの!?」
あ、コレ本当に俺のせいでザワついてるみたいだわ。
…マジか、悪目立ちしちまったな。
「あ~っと…金の方は大丈夫、まったく心配いらん。…と言うか、正直小手調べのつもりだったんで落札が決まっちまって俺も戸惑ってる。」
「30億円が小手調べって…アナタねぇ…。」
「金銭感覚狂ってるアリババ先輩マジでカッケー!!」
beeはなんだか呆れ、湯取には不名誉な方向で尊敬されている気がする。
…いかん、やはり俺の金銭感覚は狂ってきてるのか?
オークションの資金として【換金】で流れ作業のように金作ってたから、ちょっとおかしくなってるのかもしれんな…。
そんな事を考えていたら、舞台上のしん…Mr.ペンタゴンが俺に近付き、直接話しかけてきた。
「自分ら…日本人やんな?ごっつ豪快な金の使い方するやんか、見てて爽快やったで。」
お…関西弁。
…今はマイクを通してないからか、会場内に声は響いていない。
この感じだと仮面の効果も切っているようだ。
「いやぁ…オークションって初めてなもんで。俺のやったことが定石破りだったら申し訳ない。」
「かまへんかまへん!裏社会の大物共が呆気に取られてる顔なんて、めったに見られへんからな。…それにしたって一発300億て。兄ちゃん、初参加でそれはアクセル踏みすぎやで。ハハハハッ!」
そう言って、マスク越しでも分かるほど悪い顔で笑うMr.ペンタゴン。
「同じ日本人が大暴れしてくれるのは、なんや気分ええわ。…今日はこっちも楽しませてもらうで。」
言いたいことを言いきったのか、Mr.ペンタゴンは楽しそうに舞台中央へと戻って行った。
う~ん、テレビで見てた時より気さくな感じだ。
うっかり良い人なんじゃないかと勘違いしてしまいそうだ。
『…さあさあ、一発目からとんでもない金額が飛び出しましたが、この調子でドンドン行きましょう!』
再び銅鑼の音が鳴ると、次の商品がバニーガールによって運ばれてくる。
今度の品は2メーター程の高さがあり、台車を押すのも二人がかりで大変そうだった。
『さぁ次の商品は、信心深い皆様には少し刺激が強いかもしれません。…おっと、これは余計な心配でしたね。それではオープン・ザ・アノマリー!!』
目隠しの布が捲られる。
現れたのは…石碑?
…また石か…。
【降魔の石板】ランク:B
未知の言語が刻まれた古い石板。乾いた黒い染みがこびりついている。
生者を生贄に捧げることで悪魔を召喚することができる。
召喚される悪魔のランクは生贄の数や質によって変化する。
生贄って…こりゃまた物騒だな。
『…こちらは某国で発見された未知の遺跡群より発掘された石板で、発見時に偶然起こった落盤事故により意図せず悪魔が召喚され、一時は遺跡ごと封印処置がなされていた逸話を持つ品です。近年になり悪魔は制圧され、その際にこちらの石板も回収されました。後の研究・鑑定により、生物を生贄に捧げることで悪魔を召喚する力があるアノマリーだと判明いたしました。』
ざわ…ざわざわ…
「怖っ、悪魔ですってよアリババ先輩…。」
「…魔人のお前が悪魔を怖がるか?」
「えっ、俺って悪魔と同列なんスか?心外っス!」
「心外どころか人外なんだよなぁ…。」
悪魔ねぇ…。
うん、流石にコレはスル―かな。
『ロットナンバー002番【降魔の石板】…呼び出した悪魔を手勢にするも良し、はたまた強大な悪魔を召喚し願いを叶えてもらうも良し。最低落札価格は100億カダールからとなっております。それでは…入札スタート!!』
『101億』『102億』『104億!』『105億!』
「景気がいいっスねぇ…一千万円単位でボンボン金額が上がっていきますよ。」
目の色を変えて入札していく参加者達を見て、呆れたように言う湯取。
「悪魔なんて召喚して何に使うつもりなんだかな。」
「…悪魔を呼んででも、叶えたい願いでもあるんじゃない?」
俺達の会話に、仏頂面のアグニが口を挟んだ。
『ふん…何が悪魔だ。生贄なんてもんが必要な時点で、どうせロクなものじゃあ無いだろう。』
生贄…生贄か。
あのアノマリーを使うには、生贄が必要…。
…じゃあ、アレが落札されたら、「誰かが生贄にされて死ぬ」ってコトか。
…何人死ぬんだ?
いや、悪党が何人死のうが、俺の知ったこっちゃあ無いが…。
こういう時に犠牲になるのって、大概が「無辜の民」って相場が決まってるんだよなぁ…。
…ちっ、損な性格だな俺も!
『…270億!』『271億だ!!』『ぐっ…272億っ!』
『…500億だクソがっ!!』
『『『『っ!!』』』』
『馬鹿なっ…』『またアイツか!?』『なんなんだアイツはっ!!』
『ハッハーッ!!108番様がまたしてもブッ飛んだ金額を出したぁー!!…いやぁホンマ景気ええなぁ!!』
うっわぁ…悪目立ちしまくってるよ…まぁそりゃそうだよなぁ…。
「ちょっ、ちょっとアリババ!!アナタ何してるのっ!?」
「アリババ先輩、あんなモン落札して何に使うつもりなんスか!?」
「あぁ?…封印だよ封印。俺の【錬金術師の驚異の部屋】ん中に永久に封印してやるわ、あんなモン!!」
『ぐっ…505億っ!!』
『おぉっと!更に上の金額が出ました!これは流石に――』
『600億!』
『バカげてるっ!!』『ふざけるなっ!!』『本当に払えるんだろうなぁ!?』
『ろっ…600億っ!600億が出ましたっ!!他にいらっしゃいますかっ!?』
『…チッ!やってられるかっ!!』
『決まりましたっ!それでは…ロットナンバー002番【降魔の石板】も、108番様が600億カダールで落札なさいましたっ!Congratulations!!』
…あ~あ、やっちまった。
使いもしないアノマリーに60億円…ホント、どうかしてるわ。
『フフッ…馬鹿だ、馬鹿がいるぞお前等!』
「先輩…何やってるんスか…。」
「…呆れた。」
「…うるせぇ!俺も自分に呆れてるよ!」
…バルコニー席の奴等まで、身を乗り出してコッチを見てやがる。
畜生っ!もうどうにでもなれだ!
『…イッヒッヒ!!まだまだ序の口やで皆さん!……ゴホンッ、オークションの目玉商品はまだ幾つもご用意しております!後半は特に「面白い商品」が…おっと――』
『…お楽しみはこれからや。』




