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第11話 迫りくる危機

 それはガイヤとその手下の剣士だった。その無礼にウエンズ伯爵が咎めるように言った。


「何事だ! ガイヤ! いきなりとは無礼だぞ!」

「伯爵様。申し訳ありませんがここで死んでいただきます。」

「なんだと!」


 ウエンズ伯爵は立ち上がった。ガイヤたちは剣を抜いて伯爵の方に向けていた。


「あなたはここで若殿に殺されたことにいたします。若殿はヘイズ様とオルガが亡き者にするでしょう。お二人が死んで幼いジョン様が後を継ぐ。それでこの伯爵家は我らのもの。ふっふっふ。」


 その言葉にハークレイ法師はキッとガイヤをにらみつけて声を上げた。


「ようやく尻尾を出しよったか! 悪党どもめ! このまま思い通りにはならぬぞ!」

「何を! 剣を持たぬお前たちに何ができる! やれ!」


 ガイヤの合図に後ろにいた彼の配下の剣士が向かってきた。その前に横で控えていたゲンブが立ちはだかった。振り下ろされた剣を左手の鋼鉄の手甲で受け、その剣士の腕をつかむと壁に投げ飛ばした。そしてもう一人の剣士も体をつかんで投げ飛ばした。その強い衝撃に2人ともそこで気を失っていた。


「おのれ!」


 ガイヤも剣を振りかぶって襲ってきたが、ゲンブが右手をねじり上げてしっかりと捕まえた。そうなるとガイヤはもうどうすることもできなかった。


「くそ! だがこんなことをしても無駄だ! 今頃、若殿は剣を向けられているだろう。もうことは進んでいるのだ!」


 ガイヤの言葉にウエンズ伯爵は青ざめてよろめいて机に手をついた。


「しっかりするのじゃ。まだ間に合うかもしれぬ。」


 ハークレイ法師はそう声をかけると、すぐに呪文を唱えた。するとそこに赤い服を着た男が出現し、彼の前に片膝をついて頭を下げた。


「キリン! エバンスの部屋へ行け! 悪党から救うのだ!」

「はっ!」


 キリンはすぐに走り去った。そうしてハークレイ法師はウエンズ伯爵に声をかけた。


「伯爵。しっかりなされよ。あなたがエバンスを救うのですぞ!」

「わかりました。 この私めがきっと反逆者を成敗いたします。」


 やっと落ち着きを取り戻した伯爵は廊下に出て、


「誰かおらぬか! 兵を集めよ! 反逆者を討つぞ!」


 と大声で叫んだ。


 ◇


 エバンスは身の回りの物をカバンに詰めて部屋を出た。もはやここに未練はない。王都でもどこかに行って一人で生きていこうと考えていた。

 するとその廊下でカーラ夫人と出くわした。カーラ夫人はエバンスが抱えている大きな荷物を見て、彼が今すぐここから出て行こうとしているのがはっきりわかった。彼女は行かせまいとエバンスのそばに来た。


「どこに行くのです?」

「どこでもいいではありませんか。私はここでは邪魔者なんですから。」


 エバンスはカーラ夫人と目を合わせようともしなかった。


「行ってはなりません。私はあなたが邪魔だと思ったことは一度もないのですよ。あなたは私の大事な息子なのだから。」

「ふん。口では何とでもいえる。私がいなくなればジョンが後を継ぐ。親子3人で仲良く暮らしたらいい。私にはもう関係がない!」


 エバンスは吐き捨てるように言った。その言葉を聞いてカーラ夫人はこらえていたものがあふれ出し、思わず右手でエバンスの頬を「パーン!」と叩いた。


「なんと情けないことを言うのです! あなたはこの伯爵家の跡取りなのですよ。あなたは伯爵様と偉大な王家の一族だったローズ様の血を引いているのですよ。」


 カーラ夫人は目に涙をためて言った。今まで彼女はエバンスに手を上げてことはなかった。彼女はそれほど必死に彼に訴えたかったのだ。


「あなたがそんなことでどうします! 私はあなたが立派になって伯爵を継いでくれることを心から願っているのです!」


 そのカーラ夫人の訴えにエバンスは何も言えなかった。彼は彼女の母としての深い愛情に心を打たれたのだ。

 エバンスはうつむいた顔を上げてカーラ夫人に何か言いかけようした。するとその時、ヘイズたちが配下の剣士を連れて近づいてくるのが見えた。その物々しさは尋常ではない。


「いかがしたのだ?」


 エバンスが声をかけたが、ヘイズは不気味な笑いを浮かべていた。その雰囲気に邪悪なものを感じたカーラ夫人がヘイズたちに命じた。


「下がりなさい! 兵を連れて戻るのです!」


 だがヘイズはその場を動かず、平然として言った。


「私はもう飽き飽きしました。あなた方に仕えるのが。これからは我らが好きなようにさせていただく。」

「なにっ! 反逆しようというのか!」


 エバンスが大声を上げた。ヘイズはそうだと言わんばかりににやりと笑った。


「反逆ではございません。乱心した若殿が伯爵様と奥様を殺め、そしてさらに暴れられたところを仕方なく我々がお止めした。しかしそのはずみで若殿は命を落とされた・・・ということです。」

「何を! お前たちの好きにはさせん!」


 そう言ったものの、エバンスは手元に剣を持っていなかった。丸腰では戦うどころか、ここから逃げ出すのも難しい・・・。


「では御覚悟召されい!」


 ヘイズの横にいたオルガが剣を抜いた。その剣でエバンスとカーラ夫人を亡き者にしようというのだ。

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