70、三つの切り札と王都
王都グランギールより半日程南下した地点
レオン達を含めたランギール一行は、王都まで間近に迫った場所、国道とも言える道より少し外れた林の中で、丸一日の休息を取っていた
「パパ、ごはんなの~!」
『食事の用意が出来た様です、如何なさいました?』
ソフィアがシアを連れ、一行から少し離れた場所で、ストレージを確認していた俺に声を掛けてくる
「今後に備え、アイテムの確認をしていただけだ、直ぐに行く」
確認していたのは、俺に残された切り札の数と用途だ
ラスト一個の神の涙、確かにこれも切り札と言えば切り札だが、本当の意味での切り札、隔絶した効果を持つアイテム、拠点作成をした創世の像と同クラスの物だ
俺に残された真の切り札は三つだ
一つは、対人戦の報酬だった物、創世の像とセットで使用つもりだった消費アイテム
二つ目は、サブデュー戦記をプレイした者ならば、誰でも開始時に初期ブーストとして配布された内の一つの消費アイテム
最後は、運営が俺の為だけに作成したとも言える消費アイテム
一つ目は、創世の像と組み合わせる事で、反則的な効果があったが、像が無くなった今でも、敵に対して十分な効果が期待出来る
二つ目は、限定された状況でしか役に立たないが、未来、近いか遠いか分からんが、使用する時は必ず来るだろう
最後の一つ、今やこれを使用する機会が来るかは正直分からない、水龍での戦いの時に使用するか迷ったが止めた物だ
敵のボス、俺達同様に、この世界に来た戦神が強ければ、使用する事になるだろうが、本音を言えば、是非とも使いたい、使用しなければ、俺は元の世界に帰れない、そんな予感がする
「パパ~! はやくするの!」
離れた位置から、シアに再び催促され、俺はストレージを閉じ、シアの元へ向かうことにした
「それで、何時までここにいるつもりだ?」
「予定では昨日から明日の夜の辺りで、迎えが来る予定なのだが」
「王都に乗り込み、強行突破で頭を叩くと思っていたが、何か仕込んでいたのか」
「無論だ、力の上がった我々に、レオン殿に助力して頂ければ強行突破も容易いだろう、しかしそれではどれ程の被害が出るか、討伐軍にて民を盾代わりにする様な相手なのだ、派手に追い詰めれば、何をしだすか分からん」
「確かにな」
『レオン様、弱い反応が20程』
すると林を抜けた先から、光が点滅するのが見える
「来たか」
ランギールが、共の騎士に合図を送り、騎士の一人がライトの魔法を点滅させると
点滅した光が徐々にこちらへ向けて近付き、その姿を現す
20名弱の傭兵達に、傭兵に挟まれる形で来た数人が前へ出る
壮年の男に、中年の女、若い男女が一人づつに、子供が一人、この場に不釣り合いな身なりの良さだ、その中で先頭の壮年の男には、見覚えがある
「以前、取引した王都の商人か」
「その通りだ、ここで彼等と入れ替わり、王都へ入る」
その後、話を進め彼等と入れ替わる、護衛役の傭兵の約半数と、ランギールの騎士達が入れ替わり
商人の連れて来た一般人は、中年の女性が商人の妻、後妻らしい、前妻との子供の男に、その妻と子供との事だ
商人は俺達と王都に入り、商人の妻の代わりにランギール、息子夫婦の代わりに、俺とソフィア、その子供にシアという感じで入れ替わった、こちらは向こうの用意した衣服や装備に着替え、馬車に荷馬車の二台に、その護衛の傭兵として王都へ向かう
終始、シアが母親役のランギールに容赦のない言葉を浴びせ、項垂れるランギールを、ニンマリとソフィアが見ているという惨劇を除けば、順調に進み、翌日の夕暮れ時に王都に到着をした
王都に到着したのだが、どうやら王都の入り口での検問にかかり、トラブルの様だ、外から護衛の傭兵と警備の騎士の間のやり取りが聞こえてくる
「一様馬車内を確認させて貰う」
「通行書に不備はない筈だが? こちらは急ぎなのだが」
「すまんな、こちらも仕事だ、上から例え不備は無くとも、確認を怠るなとの通達があってな」
さて、どうするか、ここから強行するか? とランギールに目を向けると、商人が一人馬車の外へと出る
「警備御苦労様です、マルク商会のマルクでございます、何かありましたかな?」
「不備は無いが、馬車の中を確認させて貰う、いいな?」
「馬車の中には、我が妻と息子夫婦、それに孫しかおりませんが、妻が旅の疲れから体調が優れず、荷も早急に届けなければならないのですが」
警備の騎士は少し考え間をあけると
「分かった、一様の確認をした後、直ぐに通す」
警備の騎士が、馬車の扉を開け、俺とソフィアは軽く会釈をする、大きめスカーフを顔に被るランギールも俯きながら頭を下げる
「失礼だが、そこの御夫人、顔の確認を取らせて頂けるか?」
俺達の顔など警備の騎士が認知している筈は無いが、ランギールの顔を知らんと言うことはまず有り得ない、強行突破に切り替えか、、
「何をしている!」
諦めかけた瞬間、声が掛かる、警護の騎士は声の方向に振り向くと、直ぐに敬礼をする
「ハッ、マルク商会の者達の確認を」
「マルク商会の荷は、ブリュッセル侯爵閣下が頼まれた事と知っての足止めか?」
「侯爵閣下の!? とんでも御座いません! しかしこちらも上から確認を怠るなとの命があり、、」
「分かった、私が確認をする、侯爵閣下を始め、マルク商会とは、御家族で親交も深い、失礼があってはならんしな、それで良いな?」
「ハッ、お任せします」
警護の騎士が脇へ退き、身なりの良い騎士が馬車の中へ確認を取る
「マルク夫人、失礼ですが、お顔を上げて頂けますか?」
馬車内に緊張が走り、ランギールがゆっくりと、顔を上げると
「御手間を取らせて申し訳ないマルク夫人、顔色が優れませんな、しかし戦地に向かった侯爵閣下に代わり、マリエール様が、邸宅にて御待ちです、邸宅で御休み頂くことも出来ますので、今暫くご辛抱を」
騎士は、マルクを馬車の中へ入れると、扉を閉め
「確認は取った、間違いなくマルク夫人始め御一家だ、後は此方で警護を兼ねて、侯爵邸までお連れするが良いな?」
「ハッ、御苦労様です」
こうして王都入り口での検問を抜けたが、ブリュッセル侯爵、マリーの父親だったか、ランギールの予測では王国軍を率いるか、王都の警備に残るか半々とし、どちらにしても、最大の障害と見ていた筈だが
「これもお前の仕込みか、ランギール?」
ランギールは首を横に振ると
「想定外だ、わざわざ屋敷に連れる意図も分からんが、ここで強行突破するよりは良いだろう、このまま招待に与ろう」
「お前がそう決めたのならば好きにするが良い」
馬車は王都内を進み、貴族街に入る、以前来たランギールの別邸の更に奥へ進み、馬車が止まる
馬車を降りると、ランギールの別邸の数倍はあろうかとい邸宅だった、警戒するランギールにブリュッセル侯爵の騎士が
「御足労有り難う御座います、ランギール侯爵様、邸宅でブリュッセル侯爵夫人、マリエール様が御待ちです、御話はマリエール様から御聞き下さい」
と丁寧な対応で、邸宅内へと案内される
数人の騎士を連れ、豪華な内装の邸宅内を、使用人に案内され進むと、応接室に通される
中には一人の小柄な中年女性がおり、その顔にはマリーの面影がある
「お久し振りです、ランギール侯爵様」
「久し振りだなマリエール殿、マリーをブリュッセル侯爵から預かった時以来か」
夫人は丁寧に御辞儀すると
「はい、先ずは此方に、夫マキシムからの言伝てと御願いが御座います」
夫人に勧められ、俺達はソファーに腰を下ろし話が始まった




